新型コロナによる転職市場の変化
連日報道される新型コロナウイルスに関するニュース。
業績に打撃を受け、解雇や雇止めを行う企業も多く、国内の有効求人倍率*は毎月下降しています。
そんな中、新型コロナをきっかけに、異業種から転職し電気工事士を目指しているという人も出てくるようになってきました。
建設業をはじめとした転職市場の動向と、今、コロナ禍で電気工事士を目指す人々の声について知っておきましょう。
◆ 有効求人倍率とは…ハローワークで仕事を探している人の数に対して、ハローワークに掲載している求人がどれだけあるかの数字で、就職活動や採用活動の難しさの指標とされます。例えばハローワークに100人仕事を探している人がいたときに、ハローワークに求人を載せている企業が100社なら求人倍率は1.0倍。数字が高いほど企業にとっては人材確保が難しく、また数字が低いほど求職者にとって就職が難しくなります。
9カ月連続の求人倍率低下で就職難に
新型コロナの影響により、有効求人倍率は下降傾向にあります。
こちらは、ハローワークに掲載されている求人のうち、正社員に限定した求人の、人材獲得の難易度を示す倍率です。
最新である2020年9月のデータによると、有効求人倍率は0.94倍。
これは、転職者100人に対して応募可能な求人が94社であるという状況です。
1年前の9月の有効求人倍率は、1.42倍でした。
当時は、 転職者100人に対して応募可能な求人が142社あったということなので、現在に比べると、転職者にとっては就職先が多くあり、就職に困らなかった時代ということになります。
今の時代は、求職者に対して求人を出している会社が足りない状態なので、新型コロナによって就職難が起きているということになります。
採用活動が鈍くなるなか、異色の建設業
前項の通り、求人を出す企業は減っている状況にありますが、建設業に限ってはそうではありません。
こちらは、職業ごとの有効求人倍率を表したグラフです。
上から順に、土木工事(グラフ青)、電気工事(グラフ黄色)、飲食店などのサービス業(グラフ緑)、そして全業種の有効求人倍率(グラフ赤)の昨年度対比です。
色の濃いグラフが今年のデータ、色の薄いグラフが対比用の昨年のデータです。
◆ 【重要】建設業とその他の職業では動きにずれがある
このグラフからわかる重要なことがあります。
それは、全職種計で見たときと、サービス業は、昨年に比べあきらかに求人倍率が下がっているのに対して、土木工事・電気工事の建設業2職種は昨年よりも求人倍率が高くなっているということです。
求人倍率が上がるのには、① 求人が増える ② 求職者が減る の2つの理由がありますが、建設業の場合、その両方ともが起こっています。
① 求人が増えている:建設業はコロナ禍での影響を受けにくく、サービス業などのように「コロナで商売にならない」という会社が少ないため、もともと求人を出していた企業が求人を中止するということが少なく、さらに他業種での求人が減っていることから「今が人材獲得のチャンスである」と考える建設事業者も少なくなく、新規で求人を出す会社も増え、その結果求人が昨年よりも増加していることが考えられます。
②求職者が減っている:建設業の職人は高齢化問題が深刻です。建設業に入ってくる若手以上に、建設業を引退するベテラン層が多く、その結果建設業の求職者数が減り、求人倍率を上げる原因になっていることが考えられます。
つまり、電気工事士の採用は、他業種が求人を出さなくなっているコロナ禍であっても依然として厳しい状態が続いているということになります。
厳しい環境でも職人の採用を実現したい場合には、電気設備業界専門の求人サイトの利用もおすすめです。
サービス業から電工を新たに目指す人も
国内の動向から、今までの職業をやめて、新たに電気工事士の道を志す人もいます。
今回、コロナ禍で電気工事士への転職を目指している方2名の話をお聞きしてきました。
元職業と、電工になりたい理由
◆ 前職:百貨店のコスメカウンター勤務(30代・女性)
百貨店のコスメカウンターやネイルサロンで仕事をしていましたが、緊急事態宣言が出された際に店舗が休業となり、働けない期間がありました。現在も、人を少なくして営業をしていることから、以前よりもシフトに入ることができなくなってしまいました。そこで、コロナ禍においてもなくならない仕事をしたいと思い転職を決めました。学生時代、工業高校に通っており、第二種電気工事士の資格は取得しております。未経験かつ、女性ですが、持ち前の手先の器用さを生かし、一日でも早く仕事を覚え、手に職をつけたいと思い転職活動をしています。
◆ 前職:飲食店(40代・男性)
飲食店で働き10年目でしたが、新型コロナの影響で店舗が閉店となり、8月末に解雇となりました。現在は日雇いのアルバイトをしながら、第二種電気工事士の資格を目指して勉強しています。以前から、親せきが建設業に従事していたこともあり、職人仕事への興味がありました。この状況下をチャンスととらえ、これから電気工事士としてのキャリアを積み上げていけるよう、転職活動中です。
他業種からの転職者をどう自社でキャッチするか
現在の建設業は、他業種に勤めていて、解雇や将来の不安を抱えている転職希望者を迎え入れるチャンスとも言えるでしょう。
しかし、同じように今の時期をチャンスととらえている建設業事業者が数多くいるため、きちんと自社の特色をPRしないことには採用は成功しません。
他業種からの転職者をキャッチするためのコツとしては、
① 新型コロナや景気によって業績が左右されない安定性をPR
② 未経験者向けに、丁寧な指導をPR
③ 資格の取得支援などで、キャリアの積み上げを後押しすることをPR
④ 給与・休日・ボーナスなど、他の電気工事会社と比べて優れているところをPRして、他社と差別化する
⑤ 社員が笑顔で写っていいる写真を載せ「建設業は恐い」というイメージをなくす
以上のようなことが挙げられます。
コロナ禍でも厳しい建設業の採用競争を勝ち抜くために、「ほかの業種と比べた安定性」×「同業者と比べた際の自社ならではの魅力」をうまくPRして、良い人材を獲得しましょう!
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