【後継者不足問題】建設会社2代目はYouTuber!?父と絶縁しかけた僕が家業を継ぐ理由

特集

後継者不足が深刻な建設業

画像出典:帝国データバンク

建設業は、日本一後継者不足が深刻な業界。帝国データバンクの調査では、2022年の建設業の後継者不在率は63.4%であり、全業界でワースト一位の後継者不在率となっています。

若くして建設会社の2代目社長となる決意をした方にインタビューを行い、建設業の後継者の道を選んだ理由や、事業継承後の展望について伺いました。

インタビュー先プロフィール

インタビューに応じてくださった吉田さん

吉田さん:父の経営する電気工事会社で職人として活躍中の34歳。電気工事会社の息子として生まれ、紆余曲折を経て父の後継者となることを決意。個人としてはYouTube活動も行っており、電気工事をテーマにしたチャンネル「電気屋優tuber」はチャンネル登録者数2.9万人。

ワイディーエンジニアリング株式会社:昭和55年設立。一般電気設備工事、空調設備工事、省力化・自動化設備などを行う電気工事会社。大阪市鶴見区に本社を構える。現在は、吉田さんの父が経営者として会社を運営。

「建設業の後継者」のビジョンはなかった10代~20代半ば

現場の合間を縫ってWEB取材に応じていただきました

―(編集部)吉田さんのご経歴を教えてください。

―(吉田さん)工業高校を出て大学へ進学しました。工業高校に入ったのは家から近かったからで、家業を継ぐことや、電気工事士になること目指しての進学ではなかったです。周りは高校卒業後に就職する人が多かったですが、僕はいまいち踏ん切りがつかなくて、大学に進みました。でも結局大学も中退してしまって、しばらくフリーターをしたり、ふらふらとしていました。

親に心配されたこともあって、19歳で父の経営する電気工事会社に一度目の入社をしました。

父の会社を2度退社。建設業の3K問題や親子問題に直面

―(編集部)そこからは順調に跡継ぎの道を?

―(吉田さん)いえ。実は、父の会社を2度退社していて、今が3度目の入社なんです

19歳で最初に入社したときは、3ヶ月で父の会社を辞めてしまいました。理由は建設業の3K(きつい・危険・きたない)に直面したからですね。まだ若かったこともあって、きらびやかな世界へのあこがれもあり、退社後はバーテンダーの仕事をしていました。

23歳で父の会社に戻ることになって、2度目の入社をしたのですが、3年勤めたところで父と大きなケンカをしてしまいました。このころには後継者となる話も出てはいたのですが、結局ケンカが原因で辞めてしまい、父とはほぼ絶縁状態となりました。その後は独立して電気工事の仕事をしていたり、施工管理の会社で働いていた時期があります。

3度目の正直。絶縁した父のもとへ戻った理由

―(編集部)関係が悪くなってしまったお父様のもとへ戻るには勇気も必要だったと思います。3度目の入社を決意した理由は何でしょうか。

―(吉田さん)理由は大きく分けて3つあります。1つ目は、自分自身に残る後悔です。「電気工事士として一人前になるまで父の会社で頑張れなかった」という後悔や劣等感がふと頭によぎる瞬間があり、もう一度頑張りたいと思う理由になりました。

2つ目は、家業の安定性です。大人になってから昔の生活を振り返ると、お金持ちというわけではなかったものの不自由なく生活させてもらっていて、自分自身もお金に困らない生き方をしたいと思ったからです。

最後の理由は、父が会社にかける想いを知っていたからです。父は中卒で勉強はしてこなかったものの、家族を支えるため頑張って会社経営をしてきました。在職中に「この会社は残していきたい」「息子のお前が跡継ぎをやらなきゃアカンやろ」というような熱い話をすることもありました。

当時は20代半ばで、聞く耳持たずで辞めてしまいましたが、父が会社にかける思いはずっと心に残っていて、ふとした瞬間に思い出すんですよね。

何度かすれ違いはしてしまったけど、最終的には父の会社を残したい、不器用な父を支えたいという気持ちになって、もう一度頑張ってみようと思うことができました。

建設業が事業継承に抱える課題

大阪市鶴見区に本社を構えるワイディーエンジニアリング

―(編集部)ワイディーエンジニアリングの社歴と規模について教えてください。

―(吉田さん)会社は昭和55年(1980年)の設立で、今から43年前にできました。社員は現在5名です。代表の父と事務員さんが1人、残りは僕含め3人の職人です。

歴史の長い会社ですが、後を継ぐことに不安はありますか?

「次たのむで」とは言われていますが具体的な事業継承の話ができていないというところが不安ですね。父も、僕にも事業継承の経験はないので、どのタイミングで何をすればいいんだろうと思いながら、なかなか社長業についての勉強ができていないのが実情です。

現在は、見積もりについて父にアドバイスをもらったり、自分が獲得した案件について相談したりと、日々の仕事の中で知識をもらっているところです。

小規模の会社だと、事業継承にかける時間は取りにくいですよね。

僕は普段現場に出ていますし、経営の勉強をする時間はなかなかないですね。父が元気なうちに交代するのが理想ですが、急に病気などのトラブルがある可能性もゼロとは言えません。準備不足のままだと大変なことになるかもしれないという不安はあります。

このような問題は、多くの小規模建設会社が抱えていそうです。

そうですね。父は70代ですがまだまだ現役で、たまに現場に出ることもあります。業務多忙によって事業継承に時間がさけないことと、事業継承のタイミングを見極める難しさは、多くの建設会社が抱えている悩みかと思います。

大体いつごろまでに事業継承を完了したいという計画はありますか?

今が34歳で、40歳ごろには引き継ぎを完了したいとは思っています。具体的な計画を進めていく必要がありますね。

建設業界の後継者不足はなぜ起こる?

ワイディーエンジニアリングの現代表

―(編集部)建設業界は後継者不在率ワースト1位の業界です。なぜ跡継ぎは少ないと思いますか?

―(吉田さん)僕自身が感じていたことですが、やはり旧来の3Kのイメージが強いのが原因になっていると思います。今はデジタル分野などの発展が活発ですし、若い方には、新しい技術が魅力的に映りやすいですよね。

それから、親子間で事業継承をする場合は建設業が不安定に見えていることも理由かもしれません。建設業では現場と現場の間のスケジュールが空いて休みができることがありますが、子どものころは不定期に休んだり働いたりしている父をみて、家業が安定していないように見えていました

事業継承を考えるのであれば、組織のクリーン化と、業界についての丁寧な説明が重要かもしれませんね。

事業継承後の展望

ワイディーエンジニアリング作業中の風景

―(編集部)後継者になるにあたって、今後の会社の展望はありますか?

―(吉田さん)できる工事を増やしていきたいですね。自分で案件を獲得する機会も増えているので、新しい分野へのチャレンジはしていきたいと思っています。

それから、会社規模も大きくしたいと思っていて、当面の目標は10人超えの会社にすることです。現在は5名の会社ですが、2名の入社が決まっています。このまま、順調に増やしていきたいですね!

規模が大きくなると、運営は大変そうですがやりがいも増えそうです。

そうですね。自分だけでなく、社員にもやりがいを持って働いてほしいと思っていて、社員が安心して成長できるように社内環境の整備も行っていきたいです。

資格の取得を支援したり、向上心のある人には勉強会の時間を作ることも検討しています。自分自身、入社したての頃なかなか教えてもらえずに苦しんだことがあるので、成長できる環境の整備は大切だと考えています。

Youtube×建設業!ネットを使った取り組みも視野

電気屋優tuberの動画。人気の動画は数十万回再生されることも。

―(編集部)吉田さんは現在YouTuberとしても活躍していますが、事業継承後もYouTube活動は続けていく予定ですか?

―(吉田さん)状況にもよりますが、続けていきたいと思っています!YouTubeで顔出ししていることが信用に繋がって仕事をもらえたこともあるので、いい影響はあると思います。

今は会社名を前面に出して活動をしているわけではないので、事業継承後は会社名を出して活動することも考えています。会社の様子を発信することで、案件獲得や採用活動にもいい効果が期待できるのではないかと思っています。自分の得意なことを取り入れつつ、父の会社を守っていけたらと思っています。

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ワイディーエンジニアリングは30代中心の会社。「みんなで毎日少しづつの成長」を目指しています。やる気のある人にはできることを増やし、やりがいのある会社でありたいと思っています。

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