賞与(ボーナス)査定に困る時期
毎年夏と冬の2回賞与(ボーナス)を支給するという企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
社員としては、賞与(ボーナス)の時期が近くなると「今年はどれくらいもらえるかな?」「夏のボーナスが入ったらアレを買おう!」などとあれこれ想像するもの。賞与(ボーナス)という制度は、社員の期待が大きい分、評価が適当でなければ不満にも繋がってしまいます。
なんとなく賞与(ボーナス)の金額を決めている…という企業様は、そろそろ評価制度を作ってみてはいかがでしょうか。評価制度を透明にすることで社員が不満に思うのを防ぐことができ、モチベーションアップにもつながります。
賞与(ボーナス)査定、社員は納得していますか
建設業をはじめ中小企業に多いのは、「賞与(ボーナス)の金額について一切の説明をせず明細だけを渡す」というパターンです。
もちろん、評価する社長や人事担当者は1人ひとりの業務量や貢献度を思い出しながら真剣に考えたことでしょう。
しかし明細のみ受け取った社員には、それは伝わりません。前回の支給時より金額が上がっていればまだしも、金額が下がっていると「なぜ頑張ったのにこれしかもらえないんだ!?」という不満に必ず繋がります。
賞与の計算を行うのは大変で忙しくもなりますが、できる限り社員と顔を合わせ「こういう基準で計算してこの金額になった」と話をするようにしましょう。
賞与(ボーナス)査定の基本となる基準
給与査定の基準はどうやって決めればいいのでしょうか。まずは3つ、忙しい中小企業の担当者でもすぐに導入できる明確な基準をあげていきます。
ベースは基本給
金額のベースにするのは社員1人ひとりの基本給としましょう。
元々決まっている給与を元に計算するのは最も簡単で、社員としても納得感のある基準です。
基本給に様々な加点要素・減点要素、または会社の業績などを数値化したものをかけて賞与(ボーナス)を算出するのがよくある方法です。
出勤率
出勤率はとてもわかりやすい基準です。
基本給をベースにした場合、100%出勤している社員には基本給×100%(1.0)、90%出勤している社員には90%(0.9)をかければ出勤率での評価ができます。
基準が明確ですので、出勤率を考慮することは社員の納得感にも繋がります。
なお有給休暇は社員の権利ですので、有給休暇を使って休んだ分を欠勤としてカウントするのは避けましょう。
会社業績
儲かっている年とそうでない年で支給できる賞与の金額は変わりますが、そのような会社業績も賞与査定の基準とすることができます。
業績によってパーセンテージを決め、「今年は業績がいいから110%」「今年は業績不調だから90%」というように、社員一律の基準として計算に入れましょう。
一律の基準ですから、例えすこし悪い数字だったとしても不公平感はありません。
査定シミュレーション
超シンプル査定:基本給×出勤率×会社業績で賞与を算出
例1:○○電気のAさんは、基本給25万円。7月~12月の出勤率は100%。会社は業績好調のため業績による指数は110%として計算。
基本給25万円×出勤率100%(1.0)×会社業績110%(1.1)=賞与27.5万円
例2:××電工のBさんは、基本給20万円で7月~12月の出勤率が90%。会社は業績不振により業績による基準は90%として計算。
基本給20万円× 出勤率90%(0.9)×会社業績90%(0.9)=賞与16.2万円
※ この評価方法はとても簡単で明確ですが、社員の業務評価や会社貢献度を加味していないため入社1年未満の新人向けと言えます。入社2年目以降の賞与査定を行う場合は以下の項目もご参照ください。
賞与(ボーナス)査定に会社貢献度を加味する
入社2年目以降の社員であれば、個人としての会社貢献度も加味して賞与(ボーナス)の査定を行いましょう。
会社貢献度を数字で評価するのは難しいところですが、多くの企業が実施しているのは職種ごと・役職ごとのチェックシートによる業務評価です。
求める能力をチェックシートにして1~5段階の評価を付け、評価に応じて50点以上であれば1.5、30点以上であれば1.2…というように掛け率を決めれば、あとは上でご紹介した超シンプル査定に会社貢献度の掛け率を組み込むだけで賞与査定が完了します。
能力による評価
例えば電気工事士であれば、「工事が一通りできる」「資格を取得している」「職長として現場をまとめることができる」…など、業務に必要となる能力を有しているかどうかが査定基準になります。
社員のポジションや任せている業務に合った適切なチェックシートを作成しなければいけませんので、能力評価の内容が適切かどうかには注意しなければなりません。
チェックシートの評価項目を事前に公開しておけば何を頑張ればいいのかが明確になり社員のモチベーションアップにも繋がるので作成して損はないと言えます。
目標達成度による評価
査定期間よりも前に社員に目標を設定しておき、達成度によって評価を設けるのも一般的です。
目標は社員一人ひとりに設定をするか、社員のクラスごと(職人であれば見習い、中堅、職長クラスなど)に合った目標を設定し、査定前に社員と共有しておく必要があります。社員と話し合いつつ、自ら目標を設定してもらうのもいいでしょう。
査定シミュレーション
査定応用編:基本給×出勤率×会社業績×会社貢献度で賞与を算出
例3:△△電設工業のCさん(部長)は、基本給30万円。7月~12月の出勤率が100%。会社は業績好調のため業績による指数は110%、会社貢献度は管理職用チェックシートで評価したところ1.5の評価。これらを合わせて計算。
基本給30万円× 出勤率100%(1.0)×会社業績110%(1.1)×個人評価1.5 =賞与49.5万円
賞与(ボーナス)査定を始めるのはいつごろ?
賞与(ボーナス)の支給額を決める期間のこと査定期間といい、査定期間の社員の働きに応じて額を決定します。
査定期間は一般的に3ヶ月~5ヶ月程度であることが多いです。
例えば夏は7月、冬は12月に賞与(ボーナス)を支給する企業だと、夏のボーナス査定期間は前年の10月から3月まで。冬の査定期間は当年の4月から9月まで問うような形になり、空白の期間で支給額の計算を行います。
空白期間はない方が社員の活躍を見逃すことなく評価できますが、社員数の多い企業ほど賞与(ボーナス)の計算にも時間がかかるため、自社に合った査定期間を設定しましょう。
2021年の賞与(ボーナス)額平均は?
厚生労働省の調査によると、2021年の賞与(ボーナス)の平均は国内の企業全体で年間90.6万円。建設業単体では年間104.1万円でした。
【建設業と国内全業種の給与平均比較】
A.月給平均(万円) | B.年間賞与平均(万円) | C.平均年収(A×12ヶ月+B) | |
建設業* | 36.4 | 104.1 | 540.3 |
全業種平均* | 33.1 | 90.6 | 487.2 |
全業種との給与平均比較(万円) | +3.3 | +13.5 | +53.0 |
*建設業・全業種平均ともに従業員が10人以上のデータで比較。
こちらのデータの賞与(ボーナス)額は年間での金額のため、夏・冬2回支給している企業であれば1回あたり52万円程度が平均ということになります。
業界全体では国内の全業種の平均を上回る結果となっています。
参考:令和2年賃金構造基本統計調査◆ 会社規模別・都道府県別のデータが知りたい方はこちらもご覧ください!
試用期間中の社員にも賞与(ボーナス)を払うべき?
試用期間中の社員や見習い社員に賞与(ボーナス)を払うかどうか迷う方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、賞与(ボーナス)の支給は義務ではないため、試用期間中または見習いの社員に賞与(ボーナス)を支給しなくても問題ありません。ですが、支給した方が若手もモチベーションが上がると感じるのであれば支給するのも自由です。
大切なことは一律のルールを設けることで、例えば試用期間中の社員が3人いるのに1人だけ特例で賞与(ボーナス)を支給するようなことをすると不公平感につながってしまいます。「入社2年目から支給」「試用期間中は支給なし」など一律の基準を設定しておきましょう。
透明な賞与(ボーナス)査定がモチベーションに繋がる
社員は賞与(ボーナス)の金額自体も気にしますが「自分がどのように評価されているのか」ということも気になるものです。
大企業やゼネコンのように高額の賞与(ボーナス)は出せない…という企業であっても、「社員1人ひとりに向き合って評価を行った」という姿勢を社員に示していく事が大切です。
ぜひ、自社の評価は社員にとってわかりやすいか?ということを再考して頂き、不透明な部分が目立つ場合は透明化していってみてください。
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