新人職人をどう育成する?
新人の育成を任されたばかりの中堅職人や、現場リーダーの悩みごととしてよく挙がるのが、
「新人を立派に成長させるためにどのように指導をするべきか?」
という問題。
現場でやる気がないように見えたり、原因がわからないまま辞めてしまったり。
「新人育成」というのはとても難しいテーマです。
仕事の楽しさを知ってもらって、ゆくゆくは自分の仕事に誇りを持って活躍してほしい…という期待は、誰もが抱くはず。
今回は、新人に「やる気」や「職人としての誇り」を持ってもらうための育成方法について解説していきます。
ガンコ親父の時代はもう終わり
ほんの少し前の時代を振り返ってみれば、罵声が飛び交う現場というのは珍しくありませんでした。
新人職人はベテランの技を見て盗み、失敗は叱り飛ばして覚える…
これを読んでいる中堅~ベテラン職人さんの中にも、そのような環境で叩き上げられたという方はいるでしょう。
しかし、このような育て方は多くの新人をつぶす「終わった方法」です。
「見て覚えろ」が終わった教育方法な理由
◆ こなす作業で仕事に誇りは持てない
「見て覚えろ」と言われた新人は、「とりあえずどんな風に手を動かせばいいか」をつかむのに必死です。その結果、自分が行う作業の意味や、身につける技術がどんなことに役に立つかまでを理解できません。
ただ作業をこなすのでは、仕事に誇りを持つことができません。やりがいを求めて職人を目指した新人は、仕事の面白みを理解することができず、そのまま脱落してしまう者も出てきます。
◆ 指導者の怠慢を押し付ける不条理
多くの職人さんは「自身の技術力」には誇りを持っています。しかしその一方で、「他人を育てること」に誇りを持たないまま指導者の立場に回ってしまう方も少なくありません。
作業のコツや注意点を教えることなく新人に見て覚えさせるのは非効率的であり、教える立場を放棄しているといっても過言ではありません。
多くの新人職人はその不条理を受けて、仕事への意欲が低下します。
「自分の時代はそうだったから」という負の連鎖は断ち切りましょう。新人職人をやる気にさせる教育方法を模索することが現場の士気向上につながります。
誇りある職人の育成方法
新人の技術力を養成し、誇りある職人に成長させるには仕事を覚えたいという成長意欲を高めることが大切です。
では、新人の成長意欲を高めるための育成方法を紹介します。
いつまでも手元、いつまでも下っ端はNG
電気工事士を目指して入社してくれたからには、電気をあつかう仕事を早いうちに経験させるべきです。
最初は雑用や手元作業から初めるという教育方法は多くの電気工事会社が実践しているかと思います。それ自体が間違いではありませんが、見習いの段階で高度な作業を見学させたり、先輩立会いのもと実践させる機会をつくると電気工事士としての実感がわき、「早く仕事を覚えたい」という意欲の向上につながります。
できる作業が増えてきたら、どんどん新しいことを教えましょう。「いつまでも下っ端だ」という意識は成長を妨げる大きな敵です。新しい仕事にどんどん挑戦させることで成長実感を持てば「もっともっと成長したい」という気持ちにつながります。
指導者は安全に十分配慮して、新人の後ろで仕事をフォローします。そうすることで新人が安心して挑戦できる空気ができあがります。どんどん任せて、しっかり見守るのが良き指導者です。
部分ではなく、全体を把握させる
やりがいを持ってもらうためには工事の全体像を把握してもらうことも重要です。
目の前の作業が、他の職人が行っている作業と合わせて、全体でどんな意味を持つのかということは必ず伝えるようにしましょう。
例えば図面を見せながら「この建物をこうするために、この部分の改修工事を行う。そのために◎◎君にはこのエリアのこういった作業を行ってもらうよ」というように、工事全体の目的と作業に当たるエリアの工事目的を説明しておくと、自分のまかされた作業の大切さを実感することができます。
説明して、見せて、覚えてもらう
「見て覚えろ」がNGな理由の一つは、何のための作業かを理解する余裕がなく、結果こなすだけの作業になりやりがいを感じることができないからです。
そこで作業に当たってもらう前に以下の手順を踏むことをおススメします。
1.今から行う作業がどんな意味を持つのかを、口頭で説明
2.指導者が実際にやって見せ、コツや注意点を事前に伝える
3.新人職人に実践させ、安全や作業内容に問題がないか後ろで見守る。
4.作業ができたら褒め、できない場合はもう一度指導者が実践するところから教え、覚えるまで繰り返す。
この手順を踏めば、意図を理解したうえで作業ができるのでやりがいが生まれます。
また、指導者が実践してみせることでコツをつかみやすく、丁寧な指導は信頼関係にもつながります。
作業ができるようになったら、照れくさくてもきちんと褒めましょう。小さな成功体験の積み重ねが自信と誇りにつながります。
現場の連携感を感じさせる
複数名のチームで取り組む工事の場合、「チームの空気」も新人職人のやる気を左右する大きな要因になります。
新人の指導担当が決まっていても、他の職人さんが新人育成を他人ごとのように思っていては、チームに対する貢献意欲が生まれません。
みんなで育てるという姿勢をもって、現場の連携をとってください。
また、やる気は伝染するものです。
チーム全体の士気が低い状態では、新人の士気も下がってしまうので、現場にいる職人さんたちの姿勢にも注意しなければなりません。
まとめ
新人職人の育成のためにできることを解説しました。
指導者に当たる方は、ぜひ職人仕事と同じくらい新人育成にも熱量をもってほしいと思います。
一人前になるには長い時間がかかるこの道ですから、指導者の労力も並大抵のものではありません。ですが、自分が育てた新人が立派に活躍するようになったときの喜びはひとしお。協力して仕事ができるようになれば現場はさらに楽しくなるはずです。
悩みの尽きない新人教育。指導者として奮闘する方に少しでもお力になれればと思い、この記事を書かせていただきました。
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