会社の後継ぎ問題
中小企業が抱える問題のひとつ、後継ぎ問題。
建設業でも、「会社を興してここまでやれたのはいいものの、後継ぎがいない…」というお悩みは非常に多く耳にします。
この記事では中小企業の後継ぎ問題をめぐる現状と、事業継承のための手段や国の支援策についてご紹介していきます。
経営者の平均年齢と引き継ぎ率
このグラフは、日本国内の経営者の平均年齢の変化と経営者の交代率を1990年~2020年までグラフ化したものです。
経営者の平均年齢は1990年には54歳でしたが、2020年には60歳を超えています。経営者の交代率が下降傾向にあることから、多くの企業において経営者の交代が起こらず、結果経営者の平均年齢が上がっていることがわかります。
中小企業の休廃業増加とその理由
企業の休廃業数は、グラフの通り増加傾向にあります。企業が休廃業を選択する理由についても調査結果が公表されています。
廃業を予定している企業に廃業理由を聞いたところ、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」(43.2%)、「事業に将来性がない」(24.4%)に続いて、「子供がいない」「子供に継ぐ意思がない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者難を挙げる経営者が合計で 29.0%に達しています。
背景には、親族への後継ぎがあたりまえではなくなり、息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方が広がっていることのほか、自社の将来性が不透明であることなど、事業継承に伴うリスクに対する不安の増大等の事情があると指摘されています。
廃業する会社は不要な会社?
「休廃業を選択するような会社は、どうせ後継ぎを作っても時代についていけない会社だ」と言う人もいますが、実情は決してそうではありません。
この調査では、廃業予定企業であっても、約3割の経営者が、同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性についても約4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答しています。
廃業を予定している企業が必ずしも業績悪化や将来性の問題から廃業を選択しているわけではないことが分かるデータです。
政府の引継ぎ支援策
事業承継ガイドラインによると、中小企業は日本の企業数の約99%。中小企業で働く従業員は全従業員の69%を締め、雇用の受け皿として必要不可欠です。
そのため休廃業が増加傾向にあることには政府も危惧しており、様々な支援策を通じて中小企業の事業継承を支援しています。
政府資料を活用する
政府の支援策は「事業承継に関する主な支援策(一覧)」という資料にわかりやすくまとめられています。
引継ぎを実施するか検討している経営者のほか、引継ぎ先が決まっている場合の対応、また休廃業を考えている場合の相談窓口などがまとまって掲載されているため、まずはこちらの資料を見て、自社に合った支援や相談先を知っておきましょう。
助成金による支援
事業継承時に使える補助金があることをご存じでしょうか。「事業承継・引継ぎ補助金」という、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度があります。
この補助金は2022年度も予算に組み込まれ実施が予定されています。
会社を引き継ぐという選択
会社の未来を信じ他者に託す選択は、ある意味では廃業よりも重い決断になるかもしれません。
中小企業は国や地方の労働者を支える、必要不可欠な存在です。今働いている労働者のためにも、また未来の働き手のためにも、できる限りは会社の存続という道を考えたいものです。
自社の後継者問題について考えるのは早すぎるくらいでちょうどいいかもしれません。今のうちに、事業継承の様々な支援策や選択肢を知り、会社を未来に存続させる道を考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
中小企業庁:中小企業庁 事業承継ガイドライン(第3版)
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