建設業とダイバーシティ…「LGBT」との向き合い方

会社づくり

問われる企業の対応

「LGBT」「LGBTQ」「ダイバーシティ」…。

10年前には聞かなかった新しい言葉が次々と常識になっています。

近年の社会は、労働者の多様性や個性を尊重した働き方にシフトしています。

今回の記事では、「ダイバーシティ化」に必要な考え方のうち、「LGBT(LGBTQ)」にスポットライトを当てます。

基本のキホンとして、言葉の意味の説明から企業としてどう向き合うべきかの解説、さらに建設業でこれらの人材を抱えるにあたってどのような改革が必要かを解説していきたいと思います。

「ダイバーシティ」ってなに?

ダイバーシティとは一言で言うと多様な働き方」。

人の属性に関係なく、雇用の機会を均等にし、多様な働き方ができる社会に向け、国内外の企業は変革しています。

属性とは、例えば性別人種性的指向性自認のことです。

どんな人も属性による差別や理不尽な対応を受けず、個性が尊重され働きやすい社会になっていくことが「ダイバーシティ化」です

「LGBT」「LGBTQ」ってなに?

LGBT(エルジービーティー)とは、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称です。

・L:Lesbian(レズビアン…女性同性愛者)

・G:Gay(ゲイ…男性同性愛者)

・B:Bisexual(バイセクシュアル…両性愛者)

・T:Transgender(トランスジェンダー…心とからだの性が一致しない人)

近年ではダイバーシティ化の一環として特にLGBTへの理解促進が企業への課題として取り上げられる機会が多くなっています。

◆ LGBT「Q」がスタンダードに

最近ではLGBTに「Q」を足した「LGBTQ」というくくりで語られることも多くあります。「Q」は、「クエスチョニング」「クィア」の2つから取った頭文字で、自身の性自認や性的指向が定まっていない、または意図的に定めていない人のことを指します。

LGBTの人はどれくらいいる?

2019年1月に公表された民間企業によるアンケート調査によると、LGBTに該当すると回答した人の割合は8.9%*です。

この割合を見ると、自社に該当する人がいる可能性も少なくありません。

LGBTの人の中には差別を恐れ会社で自身の性的指向を隠して過ごしている人も多いとされています。

LGBTの人と一緒に働くことは決して他人事ではありません。これから入社してくる人がLGBTである可能性や、気づかないまますでに一緒に働いている可能性も十分にあるのです。

*出典:厚生労働省 職場と性的指向・性自認をめぐる現状(p30)

会社は何をすればいい?

LGBTの人に対して会社は何をすべきなのか?何をしてはいけないのか?解説していきます。

公正な採用選考

企業は採用時、LGBTであることを理由に求職者を排除しないよう、適性・能力のみによる採用基準や採用方法に基づいた採用活動が求められます。

厚生労働省が事業主向けに作成しているパンフレット「 公正な採用選考をめざして」には、企業の取組事例として、「人権に対する考え方をまとめた方針でLGBTの差別を禁止し公表」、「性別記入欄を設けないエントリーシートを設定」などの例が記載されているほか、「LGBTという理由だけで嫌悪感を示すのではなく、『人を人としてみる』人権尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重することが重要です。」という記載があります。

セクハラ・パワハラの禁止

LGBTの人の性的指向を揶揄することはセクハラに当たります。悪意なく蔑称を使ってしまい当事者が傷つくケースもありますので注意が必要です。

「ホモ」「おかま」「オネエ」「レズ」といった表現は、当事者に対する蔑称とされており、発言者に悪意はなくても、当事者にとっては侮辱されたと感じることがあります。

出典:厚生労働省 多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて~ 性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内 ~

また、本人の同意を得ないまま性的指向や性自認などの個人情報を暴露することはアウティングと呼ばれ、パワハラに当たります。個人の尊厳を傷つける行為ですので絶対にやめましょう。

LGBTへの理解推進と差別防止

LGBTに該当する人もそうでない人もお互いを思いやり働くためには相互理解が必要です。企業は、社員へのLGBT理解推進教育を行い、差別やトラブルが起こるのを未然に防ぐことが大切です。

LGBTの理解を深めるための研修は民間団体なども行っていますが、厚労省など公的機関も資料を多数公表しているため、社内に担当者を設け、自社で教育用のパンフレットを作成し新入社員研修等の際に活用するのもおすすめです。

*厚労省資料は こちら

建設業ならではの問題も

LGBTの人を採用するにあたり、特に建設業が抱えやすい問題もあります。

更衣室・トイレ問題

現場で作業着に着替える際やトイレに行く際、更衣室やトイレについて十分にスペースが確保できず、LGBTの人に配慮が行き届かない場合があります。これらの問題はLGBTの人だけでなく、現場では少数の女性を雇用する際にも障害となっています。

◆ LGBTの人は着替え・トイレをどうしたいのか

LGBTの人のトイレや着替えをどのように配慮すべきかについては、一概にこれが正解ということはできません。一人ひとりの希望に耳を傾けることが必要となります。また、当事者と話し合うだけでなく周囲の理解も得ることが必要となります。

トランスジェンダーの方の中でも、トイレや更衣室の利用に関わる希望はさまざまです。また、同じ個人であっても、性別移行の状況によって希望が変化する場合もあるので、当事者が安心して相談できる環境を整え、まずは本人の希望を傾聴することが大切です。対応を検討・実施するにあたっては、機微な個人情報について、本人の希望を踏まえながら慎重に取り扱う必要があります。

トランスジェンダーの方にとって、自認する性別とは異なる性別のための設備を使うことが大きなストレスになる可能性があります。そのため、性別にかかわらず利用できる設備を設けたり、周囲の理解にも配慮し、理解を深めながら当事者が希望する性別の設備を利用することを認めている事例があります。

出典:厚生労働省 多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて~ 性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内 ~

現場・事務所には少なくとも2つ以上のトイレ・更衣室を

建設業、特に現場従事者は男性の多い職業のため、現場にトイレが1つしかないというシーンも未だにあります。国土交通省は2016年より建設業に女性を増やす取り組みの一環として、女性専用の仮設トイレの設置などを推奨していますが、現場状況により自社のみの意識で改善できない問題でもあります。

女性・LGBTなど建設現場でのマイノリティが活躍できる環境を整えることは建設業の人員不足の解消にもつながります。特に大企業や元請け企業が率先してマイノリティに働きやすい環境づくりに乗り出すことが建設業全体の改革に必要不可欠です。

参考:国土交通省 建設現場における仮設トイレの事例集

誰もが働きやすい世界を作ること

LGBTの割合が8.9%と知り驚いた方もいるのではないでしょうか。

LGBTは非常に身近な存在。自社でも当事者意識をもって「ダイバーシティ化」に向けた取り組みが必要です。

これからの時代、ダイバーシティ化は会社の存続のためにも必要不可欠となります。ぜひ、自社で出来るところから取り組みを始めてください。

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