【社労士監修】職務給制度とは?建設業の事例を交えて解説!

会社づくり

職能給から職務給へ?

ニュースで「職務給」という単語が聞こえてくるようになりました。

これは、岸田政権の政策である「新しい資本主義」の対策として、職務給を導入した企業に助成を行う話が浮上しているからです。職務給とはどのような働き方か、メリットとデメリットの解説、また職務給を導入するにあたって必要な手続きなどを解説していきます。

職務給とは?職能給との違い

職務給のことを知るために、まずは現在の日本企業で多く採用されている「職能給」について解説します。

職能給とは、社員の職務遂行能力で給料を決める制度のことを指し、「人」への能力評価を行います。日本では職能給による給料の決定が多く利用されており、結果勤続年数(場合によっては年齢)で給料が上がっていったり、地位の高い社員に高い給与を支払う方針の企業が多くありました。

対して職務給とは、仕事の内容で給料が決まる制度のことを指します。例えば職人は月給25万円、施工管理は月給30万円というように、「仕事」への評価を行うのが職能給で、欧米では広く導入されています。

職務給/職能給のメリット・デメリット

なぜ今、職務給の導入が推奨されているのでしょうか。職務給のメリット・デメリットについて知りましょう。また既存の職能給のメリット・デメリットについても知っておきましょう。

職能給のメリット

現在の日本の主流である職能給のメリットは、会社への定着率が高くなることです。

社員としては長く務めるほど評価が上がるため、一つの会社で腰を据えて働ける安定感にメリットを感じます。会社としても、社員が長く勤めてくれることは安定的に人材を確保できることに繋がるため、メリットであると言えます。

職能給のデメリット

職能給のメリットは、勤続年数が短い若手が高い給料をもらいにくいことにあります。また、長く勤めてさえいれば給料が上がっていくとなるとモチベーションが低下し、会社の生産性が低くなる原因となることもデメリットです。

職務給のメリット

職務給のメリットは、給与に納得感が得られやすいことにあります。例えば同じ仕事をしている若手とベテランの評価は同一になるため、若手にとっては納得感のある給与体系となるでしょう。

また、賃金をアップするときは人ごとではなく職務全体のベースアップとなるため、会社としては業績に応じた昇給を設定しやすくなります。

職務給のデメリット

職務給のデメリットは、長年勤めるだけでは賃金が上がらないため、より高い賃金を出す企業への人材の流出が危惧されることです。

また、職務によって給与体系が異なることから、低い賃金として設定されている仕事へ人事異動をさせにくいといったデメリットも指摘されています。

建設業で職務給を導入するとどうなる?

結論から言うと、建設業で職務給を導入することにはメリットとデメリット、両方の側面があり、現状では職務給に賛成する現役職人は少ないものと思われます。

職務給導入によって得られるメリットは、若手社員や新規で建設業を目指す人の流入が狙えることです。勤務年数に関係なく、職人は職人として一律の給与が定められるため、未経験から建設業への入職を考える人にとってはハードルが下がります。

一方デメリットは、ベテランの職人から不満を持たれるであろうことです。特に職人の世界は、「見習いのうちは低賃金で、手に職がつけば稼げるようになる」というまさに職能給型の給与体系が浸透しているため、長年勤めて得た技術が評価されにくくなることは不満につながりやすいです。

また、職務給を導入した企業で経験のある職人を中途採用する企業の場合、その職人が予定している職務(仕事)を完了できるかどうかで雇用するかどうかを検討します。仕事が完了できるかどうかで判断するのであれば自社での雇用する労働者と外注会社とでどのように使い分けるのか、あるいはどのような違いがあるのかなど企業内での選別も必要になるのでしょう。また、採用された社員にとっても外注として働くのと何が違うのか、疑問もあるかもしれません。

技術的に成長をしても賃金が増えない仕組みであれば、給料の多い同業他社に転職してしまうリスクもあり、「選ばれる会社」でいるためには高い賃金や、賃金以外の付加価値が求められるのでしょう。

職務給を導入するには

職能給から職務給に変更する場合には、賃金規定の見直しを行い、職務ごとに適切な給与を設定する必要があります。賃金が決まり、適切に運用されるシミュレーションができたら、賃金規程改訂の草案をまとめます。

賃金の規定は、企業が一方的に行えるものではなく、従業員の同意を得る必要があります。職務給導入の際も、従業員代表から意見を伺い、合意が取れたら意見書をもらいます。

賃金規程変更届、就業規則変更届とともに意見書を、労働基準監督署へ届け出ることで職務給を導入することができます。

監修協力

【プロフィール】 社会保険労務士法人エンチカ 波多野代表
株式会社フルキャストホールディングスに入社し、社会保険労務士資格取得後、人事領域の業務に従事。責任者として人事制度構築、労働組合対応、リストラクチャリングなど人事領域の幅広い業務を担当し、2013年に社会保険労務士として独立。4年間の個人事業主を経て、社会保険労務士法人エンチカを創業。

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