【社労士監修】建設業者のメンタルヘルス対策と不調時の対応法

【社労士監修】建設業者のメンタルヘルス対策と不調時の対応法

社員がメンタル不調になったら

けがや事故と同じように気を付けたい、建設業従事者のメンタルヘルス問題。業務による心理的負荷が原因で、社員がうつ病急性ストレス反応などの精神障害を発病すると、労災として扱われることもあります

精神障害による労災補償を請求される件数は増加しています。この記事では、建設業界で働く社員にメンタルの不調が見られた場合の対応方法と、不調を未然に防ぐためのメンタルヘルス対策を解説していきます。

精神障害の補償請求数と支給決定数

データ出典:厚生労働省 令和3年度「過労死等の労災補償状況」

直近5年の精神障害による労災の補償請求数と支給決定数をまとめました。精神障害の補償請求件数は近年増加傾向にあることがわかります。

建設業(総合工事業)の精神障害の請求件数は5番目に多い

令和3年度「過労死等の労災補償状況」によると、建設業のうち総合工事業は精神障害の請求件数の多い業種にランクインしており全業種のうち5番目に精神障害の請求件数が多い業種に位置付けられています。

【精神障害の請求件数(抜粋)】

順位業種(大分類)業種(中分類)請求件数
1医療,福祉社会保険・社会福祉・介護事業336
2医療,福祉医療業235
3運輸業,郵便業道路貨物運送業106
4サービス業(他に分類されないもの)その他の事業サービス業93
5建設業総合工事業72
データ出典:厚生労働省 令和3年度「過労死等の労災補償状況」

このデータから、精神障害は建設業でもけがや事故の労災同様に気を付けなければならない問題であることがわかり、メンタルヘルス対策の必要性が浮かび上がってきます。

精神障害が労災になる3要件

精神障害は、以下の3つの要件をすべて満たしている場合に労災認定されます。

1.認定基準の対象となる精神障害を発病していること

2.認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

3.業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

引用元:厚生労働省 精神障害の労災認定

1.認定基準の対象となる精神障害を発病していること

上記に分類される精神障害が「認定基準の対象となる精神障害」となります*。業務に関連して発病する精神障害の代表例は、うつ病(F3)急性ストレス反応(F4)などが挙げられます。

*認知症や頭部外傷による障害(F0)やアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。

2.認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

業務によって強い心理的負荷があったかを確認します。「業務による心理的負荷」として認められる例としては、生死にかかわるけがや、わいせつ行為を受けるなどのセクシュアルハラスメント、極度の長時間労働などが該当します。

3.業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

精神障害は、業務による要因以外にも当事者に起きた出来事(離婚や親族の死亡・金銭関係等)や個体側の要因(精神障害の既往歴やアルコール依存症等)が関連している場合があります。業務以外の要因で精神障害を発病したとは認められない場合にのみ、労災が適用されます

※ 本項目の詳細は厚労省作成の資料から確認することができます。

社員のメンタルヘルス対策と対応

自社の社員にメンタルの不調傾向がみられる場合の対応方法について解説していきます。

メンタルヘルス不調の兆候を知り受診をすすめる

メンタルの不調を起こしている社員(起こしそうな社員)がいないか、日ごろから観察しておくことが精神障害の予防・早期解決につながります。

部下や同僚のメンタル不調に気づくには、「本人の通常の行動様式からのズレ」に着目することが大切です。例として挙げられる兆候は下記のとおりです。

・以前と比べて遅刻が多い

・顔色が良くない

・口数が少ない

・身だしなみが乱れてきた

・昼休みに一緒に食事に行かなくなった

・仕事の能率低下やミスが目立つ

上記のような兆候に気づいたら、一度時間を取って該当社員からゆっくり話を聴くことが大切です。話をきき、眠れない・食欲がない・疲れやすいなどの体の不調や、飲酒・喫煙量の増加などに気づいたら病院への受診や産業医・保健師への相談を促しましょう。

参考:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

社員が精神障害と診断されたら

病院を受診した社員が精神障害と診断された場合、会社は医師の意見を聴取し、適切な措置をとる必要があります。具体的には、社員を休職させたり、必要に応じて就業場所の変更や作業を転換させるなどの配慮が必要です。

従業員に対する安全配慮義務は、労働契約法で定められた義務です。医師の意見に沿って、社員の安全を守るための対応を行いましょう。

社員の精神障害が業務由来であった場合

社員の精神障害が業務に起因して生じたものであると判断された場合、メンタルヘルス対策として、メンタルヘルス不調の防止、早期発見、休職した社員に対する再発防止、そして復帰をするための支援対策が必要です。

不調の防止と早期発見には、「ストレスチェック」を実施することが効果的です。また、ストレスチェックのほかに、ストレスや疲労の原因となる長時間労働の是正、再発防止対策となる休職からの職場復帰後のフォローアップも必要です。

社員の精神障害が業務以外の要因であった場合

社員の精神障害が業務以外の要因であった場合、職場におけるメンタルヘルス対策として、社員のメンタルヘルス不調に対していかに早期に気づくことができるかがポイントと言えます。従って、早期の気づき等を促すための教育、研修等の実施を促進すること、相談体制を整備すること、産業医等との連携を強化すること、また、職場復帰のための支援対策を図ることが重要といえます。

建設業のメンタルヘルス対策

建設業向けのメンタルヘルス対策として、ストレスチェックシートによる社員の健康状態の把握をすることができます。

建設業労働災害防止協会(建災防)のHPでは、無記名式のストレスチェックシートを使った現場のストレスの特徴を表すストレス判定図及びストレス反応指数を作成し、職場環境の改善につなげるためのプログラムが作成・販売されています。

そのほか無料で活用できるツールとしては、厚生労働省のストレスチェック実施プログラムがあります。こちらは、パソコンを使って社員にストレスチェックを実施してもらうことができます。分析機能を用いて職場のストレス傾向を把握することができるので、まずはこちらの導入もおすすめです。

建設業とメンタルヘルス対策は切り離せない

仕事の特性上、「安全への配慮」というとけがや事故を無くす方向に注力してしまいがちな建設業界。しかし実はメンタルの不調による精神障害は建設業従事者でも多く起こる問題で、メンタルヘルス対策は建設事業者必須の課題です。

社員のメンタルヘルスを守るために、今回の記事を総括すると、

・業務由来の精神障害は労災とみなされることがある。

・建設業界(総合工事業)は精神障害での労災請求が全職種中5番目に多い

・まずは社員のメンタル不調を観察し、不調の社員がいれば病院の受診を促す

・社員が精神障害を発病したら、医師の助言に従い休職など適切な措置をとる

・社員のメンタル不調を早期発見するため、ストレスチェックシートなどの導入を検討し、業務環境改善に努める

以上となります。社員の健康を守るため、メンタルヘルスにも気を配りましょう。

監修協力

【プロフィール】 社会保険労務士法人エンチカ 波多野代表
株式会社フルキャストホールディングスに入社し、社会保険労務士資格取得後、人事領域の業務に従事。責任者として人事制度構築、労働組合対応、リストラクチャリングなど人事領域の幅広い業務を担当し、2013年に社会保険労務士として独立。4年間の個人事業主を経て、社会保険労務士法人エンチカを創業。

参考資料

厚生労働省:令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

厚生労働省:精神障害の労災認定

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