建設業(現場仕事)は有給休暇がない!?46%が「全く取れない」回答も

会社づくり

「建設業(現場仕事)は有給休暇がない」という噂

インターネットで「建設業の有給休暇」について調べると、「建設業  有給 ない」「現場仕事 有給 ない」という検索候補が出てきます。

結論から言うと、建設業(現場仕事)に有給休暇がないというのは間違いです。しかし、建設業のうち特に現場仕事をしている方は、現場仕事特有の事情で有給休暇が取りにくい人がそれなりに存在するのが事実です。

建設業界で働く人たちは実際のところどれくらい有給休暇を取得しているのか、政府調査とSNSアンケートの2つの角度からご紹介していきます。また、有給休暇の法制度についても簡単に解説します。

「建設業(現場仕事)は有給休暇がない」は半分ウソで半分ホント

有給休暇は労働者の権利です。当然、建設業者(現場仕事従事者)にも法律で有給休暇制度の付与が義務付けられていますので、「建設業(現場仕事)に有給がない」は法律的観点からはウソということになります。

しかし、100%の企業が法律を守っているわけではありません。「ウチの会社には有給休暇なんて制度はない」と言い張る建設業者があったとしたら、それは法律違反をしている企業なのですが、この後ご紹介するSNSアンケートの結果を見ると、「建設業有給休暇がない」は実情として半分ホントと言わざるを得ません

なお、有給休暇の法律上の付与条件や日数、取得義務など基本的なルールについては社労士監修の記事にまとめていますので、知りたい方は以下の記事もご覧ください。

補足:「有給取ったら給料マイナス」も違法!

知っておきたい法知識として、有給休暇を取得した場合に給料が引かれることはありません。月給制であれ日給制であれ、有給休暇で休んだ分は欠勤扱いにはならないため、給料に変動はないはずです。もし有給休暇を取得したにも関わらず休んだ分の給料が引かれているのであれば、それは違法行為です。

【政府調査】建設業の平均有給取得日数は9.5日/53.2%

平均取得日数
(建設業)
平均取得率
(建設業)
平均取得日数
(全産業)
平均取得率
(全産業)
2022年9.5日53.2%10.3日58.3%
2021年9.8日53.2%10.1日56.6%
2020年8.0日44.9%10.1日56.3%
2018年7.0日38.5%9.3日51.1%
2017年6.9日38.0%9.0日49.4%
2016年6.8日38.2%8.8日48.7%
データ出典:厚生労働省 就労条件総合調査(5年分) ※2019年は業種別データがないため除外

まず、政府が発表しているデータを見てみましょう。厚生労働省の就労条件総合調査によると、2022年度の建設業全体の有給休暇の平均取得日数は9.5日。取得率は53.2%でした

2019年には最低5日間の有給休暇を労働者に付与するよう法改正がなされたこともあり、建設業の有給休暇の取得率は上昇傾向にあります。

この統計上で判断するのであれば、建設業の有給休暇の取得率は全産業と比較してやや低い傾向にはあるもの、突出して有給休暇が取れない業界ではないと言えます。

【SNS調査】現場仕事の46%は「全く有給が取れない」

データ出典:建設魂インスタグラムアンケート

建設魂では、よりリアルな建設業界の実態を調査するため、建設業で働く方のうち現場仕事の方に限定し、有給休暇の取得日数についてアンケートを実施しました。

結果は、39人中「有給が全く取れない」と回答した方が最も多く46%(18票)、「1日以上~5日未満」が26%(10票)、「5日以上~10日未満」が10%(4票)、「10日以上」が18%(7票)でした。

SNSアンケートでは、政府調査と比較して有給休暇が取りにくい環境下にいる方が目立ち、46%とおよそ半数の方が「全く有給が取れない」と回答しています。しかしながら、10日以上有給休暇を取得できていると回答した方も全体の2割程度存在し、会社によって有給休暇の取得状況に格差があることがわかります。

なぜ政府統計とSNSの声はズレるのか?

政府調査では平均9.5日も有給休暇を取っているという結果にも関わらず、SNSアンケートではおよそ半数もの人が「有給は全く取れない」と回答しているのはなぜでしょうか。

考えられる理由は2つあります。まず1つ目は、政府統計の「建設業」は現場仕事以外の建設業従事者も含んだ統計という点です。もうひとつ重要なのは、この統計は常用労働者 30 人以上を雇用する民営企業のみを対象にしている*という点です。

一般的な傾向として、企業規模が大きいほうが人員が適切に配置されるため、労働環境が整備しやすいです。30人以上雇用している建設業では法令順守意識が強く、それ以下の企業では人手不足などもあり実情として法令が遵守できてないため結果に食い違いが出ているのではないでしょうか。

*令和4年就労条件総合調査 結果の概況:調査の概要 参照。

現場仕事の人が有給休暇を取りにくい理由は?

SNSで現場仕事の方が有給休暇を取れない理由を調査したところ、現場仕事ならではの事情が浮かんできました。

◆ 現場仕事の方の声(一例)

・忙しすぎて取れない

・代わりの人がいない

・予定を勝手に組まれるので有給が取りにくい

・「有給を取ってほしい」とは言われるものの、仕事と仕事の間に隙間がないため、なかなかとりにくいのが実情

・30年くらい前までは「有給はない」「有給を取ったら減給」と言われたことがあった。それから改善がされて、現在では有給が取れる環境になった。

小規模企業は休暇制度があいまい?

以下のような気になる意見もありました。

・「有給休暇」という概念はない。しかし、現場が問題なく進むのであれば連休をとっても問題ないし、給料も変わらない

「休んでも給料が保証される」という点から、これは実質上の有給休暇かと思いますが、社内で有給休暇の制度と権利が周知されておらず、休みが発生した時に管理者がその場その場で対応しているのかもしれません。

小規模企業や立ち上げたばかりの企業では、このような実態が多く存在する可能性があります。

本来であれば社員の勤怠や有給休暇の取得状況は管理するべきですが、実情としてそこまで手が回らない会社も存在しているものと思われます。

有給休暇の「計画的付与制度」に注意!

企業の中には、社員に対して「この日に有給を取得してほしい」と取得日の指定を行っている企業もあります。これは計画的付与制度といって、合法の制度です。

例えばお盆休みやお正月を公休(企業が従業員に付与する休日)ではなく有給休暇の計画的付与制度の指定日としている企業では、例えばお盆に2日、正月に3日休んだら労働者は有給休暇を5日使ったことになります。お盆・正月を公休としている企業に比べると、労働者が自由に取得できる有給休暇の日数は減ることになり、「いつのまにか有給が減っていた…」ということになってしまいます。

年末年始などに付与される会社の休みが公休なのか、それとも指定有給休暇なのかは、労働者は把握しておいた方がいいでしょう。

有給休暇の法律が守られていない場合の相談先は?

「有給休暇がない」と言い張る会社や、有給休暇を取得したにも関わらず休んだ分の給料がマイナスになっている会社は違法行為をしています。

もしも自身がそのような会社で働いている場合、相談先は最寄りの労働基準監督署です。

【結論】建設業(現場仕事)の有給取得には格差あり、有給がとりにくい人も多くいる

本記事の結論は以下の通りです。

・「建設業(現場仕事)に有給がない」は間違い

・雇用者30名以上の建設業では平均9.5日とそれなりに有給休暇が取れる環境

・しかし、雇用者30名以下の企業の実態は政府統計では明らかになっていない

・SNSアンケートでは、現場仕事の方の46%が「全く有給が取れない」と回答。現場仕事特有の事情で有給休暇が取りにくい人が多く存在するが、「10日以上取れている」という回答も存在し、格差がある

・休暇制度自体整っておらず有給休暇の概念があいまいな企業も多く存在する可能性がある

雇用側はもちろん、労働者も有給休暇の正しい知識を持っておく必要があります。自分の権利を知り、雇用環境を把握しましょう。

参考資料

厚生労働省:就労条件総合調査

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