仕事を行う人の46%が「有給が全く取れない」と回答しています。
この記事では、建設業界で働く人たちがどれくらい有給休暇を取得しているのか、政府調査とSNSアンケートの2つの角度からご紹介していきます。
また、有給休暇の法制度や有給休暇の重要性と仕組みづくりについても解説します。
建設業は有給がないってホント?

インターネットで「建設業の有給休暇」について調べると、「建設業 有給 ない」「現場仕事 有給 ない」という検索候補が出てきます。
結論から言うと、建設業(現場仕事)に有給休暇がないというのは間違いです。しかし、建設業のうち特に現場仕事をしている方は、現場仕事特有の事情で有給休暇が取りにくい人がそれなりに存在するのが実情です。
データで見る建設業の有給取得日数

建設業の有給取得日数について、政府調査とSNS調査の2つのデータをご紹介します。
【政府調査】建設業の平均有給取得日数は10.8日/65.3%
厚生労働省の調査によると、建設業の平均有給取得日数は10.8日で、平均取得率は60.7%です。
平均取得日数 (建設業) | 平均取得率 (建設業) | 平均取得日数 (全産業) | 平均取得率 (全産業) | |
2023年 | 10.8日 | 60.7% | 11.0日 | 65.3% |
2022年 | 9.5日 | 53.2% | 10.3日 | 58.3% |
2021年 | 9.8日 | 53.2% | 10.1日 | 56.6% |
2020年 | 8.0日 | 44.9% | 10.1日 | 56.3% |
2018年 | 7.0日 | 38.5% | 9.3日 | 51.1% |
建設業は、有給の取得日数・取得率ともに全産業の平均をやや下回っています。
しかし、5年前と比較すると有給取得日数は3日増え、取得率は20%以上増加しているため、改善傾向がみられます。
統計上では、建設業の有給休暇の取得率は全産業と比較してやや低い傾向にはあるものの、突出して有給が取れない業界ではないといえます。
建設業の有給取得日数・取得率が向上した理由は?
2019年の労働基準法改正で、企業は最低5日間の有給休暇を労働者に付与するよう義務付けられました。働き方改革が推進されたことにより、建設業の有給休暇の取得率は上昇傾向にあります。
【SNS調査】現場仕事の46%は「全く有給が取れない」

建設魂では、よりリアルな建設業界の実態を調査するため、建設業で働く方のうち現場仕事の方に限定し、有給休暇の取得日数についてアンケートを実施しました。
結果は、39人中「有給が全く取れない」と回答した方が最も多く46%(18票)、「1日以上~5日未満」が26%(10票)、「5日以上~10日未満」が10%(4票)、「10日以上」が18%(7票)でした。
SNSアンケートでは、政府調査と比較して有給休暇が取りにくい環境下にいる方が目立ち、46%とおよそ半数の方が「全く有給が取れない」と回答しています。
しかしながら、10日以上有給休暇を取得できていると回答した方も全体の2割程度存在し、会社によって有給休暇の取得状況に格差があることがわかります。
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政府統計とSNSの声がズレる理由
政府調査では建設業の平均有給取得日数は平均10.8日という結果にも関わらず、SNSアンケートではおよそ半数もの人が「有給は全く取れない」と回答しているのはなぜでしょうか。考えられる理由は2つあります。
建設業界のうち「現場労働者」は有給が取りにくい?
政府統計の「建設業」には、現場仕事以外の建設業従事者も含まれています。一方で、建設魂のアンケートは現場仕事の方に限定しているため、データに差が生まれている可能性が考えられます。
現場仕事は、全体スケジュールや工期に沿って仕事をする必要があるため、自由に休みが取りにくい環境になってしまいがちです。
小規模企業は有給が取りにくい?
先に紹介した政府統計は、常用労働者30人以上を雇用する民営企業のみを対象にしています。
一般的な傾向として、企業規模が大きいほうが人員が適切に配置されるため、労働環境は整備しやすくなります。
30人以上雇用している建設業では有給が取りやすく、それ以下の企業では人手不足などもあり有給が取りにくいため、SNS調査と政府統計の結果に食い違いが出ている可能性があります。
人手不足でお悩みの企業様は、業界に特化した求人サイト、工事士.comへぜひご相談ください。
現場仕事の人が有給休暇を取りにくい理由は?

現場仕事の方が、有給休暇を取りにくい理由をまとめました。
【SNS調査】現場仕事で有給が取りにくい理由
SNSで現場仕事の方が有給休暇を取れない理由を調査したところ、以下のような声が挙がりました。
・シンプルに忙しい
・人手不足で、自分が休んだら代わりの人がいない
・予定を勝手に組まれるので有給が取りにくい
・「有給を取ってほしい」とは言われるものの、仕事と仕事の間に隙間がないため、なかなか取りにくいのが実情
・30年くらい前までは「有給はない」「有給を取ったら減給」と言われたことがあった。それから改善がされて、現在では有給が取れる環境になった
SNS調査で目立ったのは、「とにかく現場が忙しい」という声と「人手が足りない」という声です。
特に、人手不足が進むと、少人数で現場を回さざるを得ないため、有給を取る余裕がなくなってしまうという問題があります。
小規模企業は休暇制度があいまい?
SNSアンケートでは、以下のような気になる回答もありました。
・「有給休暇」という概念はない。しかし、現場が問題なく進むのであれば連休をとっても問題ないし、給料も変わらない(原文ママ)
「休んでも給料が保証される」という点から、これは実質上の有給休暇と考えられます。
しかし、社内で有給休暇の制度と権利が周知されておらず、休みが発生した時に管理者がその場その場で対応している可能性があります。
本来であれば社員の勤怠や有給休暇の取得状況は管理するべきですが、小規模企業や立ち上げたばかりの企業ではそこまで手が回っていない可能性があります。
有給休暇の法律が守られていない場合の相談先は?
有給は労働者の権利です。以下のようなことが自社で起こった場合、その会社は違法行為をしています。
・有給休暇はないと言い張る
・年間の有給取得日数が5日未満
・有給休暇を取得したにも関わらず、休んだ分の給料がマイナスになっている
このような企業で働いている場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。
補足:有給休暇の「計画的付与制度」に注意!
企業の中には、社員に対して「この日に有給を取得してほしい」と取得日の指定を行っている企業があります。これは計画的付与制度といって、合法の行為です。
例えば、お盆休みや正月休みを公休(企業が従業員に付与する休日)ではなく、有給休暇の計画的付与制度の指定日としている企業で、お盆に2日、正月に3日休んだ場合、労働者は有給休暇を5日使ったことになります。
年末年始などに付与される会社の休みが公休なのか、それとも指定有給休暇なのか、労働者は把握しておきましょう。
【企業向け】知っておくべき有給休暇のルール

建設業者向けに、知っておきたい有給休暇のルールをまとめました。
基本の有給休暇ルール
有給休暇には、法律で定められた支給日数があります。

有給休暇は、雇い入れの日から6ヶ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日、以後継続勤務年数が1年増すごとに1日(2年6カ月を超える継続勤務1年については2日)ずつ加算した日数(最高20日)を与える必要があります。
ただし、週所定労働日数が少ないパートやアルバイトの場合は、上記日数よりも少なくなります。

詳しくは、【社労士にきく】2019年改正!有給休暇にまつわる法律のキホン(労務相談vol.4)の記事でも解説しているので、ぜひご覧ください。
2019年の法改正で有給の取得が義務化
2019年の労働基準法改正によって、企業は労働者に年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。

5日以上の有給休暇取得ができていない場合、30万円以下の罰金が科せられます。
「有給取ったら給料マイナス」は違法!
社員が有給休暇を取得した日は、「出勤」とみなして給与の計算を行う必要があります。
休んだ分の給料をマイナスにするのは違法行為です。
【企業向け】有給休暇の重要性と仕組みづくり

企業向けに有給休暇の重要性を解説します。また、有給休暇が取りやすい仕組みづくりについてもご紹介します。
有給休暇の取得率は従業員満足に直結する
SNS調査では、現場仕事を行う人の46%が有給休暇を「全く取れない」と回答しています。
有給休暇が満足に取れない状況下では、現場従事者の満足度が下がり、離職から人手不足につながります。
人手不足になると、残された従業員は更に休暇が取りにくくなり、悪循環に陥ってしまいます。
有給休暇を取得しやすい仕組みを作ることが、雇用の安定や、採用活動の成功につながり、企業にとってもメリットとなります。採用でお悩みの企業様は、業界に特化した求人サイト、工事士.comへぜひご相談ください。
社員が有給休暇を取得しやすくするための工夫
社員が有給休暇を取得しやすくするための工夫をまとめました。
適正な工期・人員配置
現場スケジュールや人員に余裕がなければ、現場従事者は有給休暇を取ることができません。
適切な工期を設け、過不足なく人員を配置することが大切です。
勤怠システムの整備
社員の勤怠や、有給休暇の取得状況を一括管理するシステムを導入しましょう。
社員一人ひとりの取得状況を把握することで、改善すべきポイントが見つかります。
人事担当者からの声掛け
有給休暇の取得が進んでいない社員には、有給休暇を取るように人事担当者から声掛けを行うことも効果的です。
他者から取得を促されることで、有給休暇を申請しやすくなります。
有給取得推奨デーの設定
閑散期や飛び石連休などを、有給休暇の取得推奨デーとして、社員に周知しましょう。
計画的に有給休暇を取得させることができます。
家族イベントへの参加を推奨する
子供の通院や学校行事等への参加を推奨すると、家族を持った社員は有給を申請しやすくなります。
私生活が充実することによって、企業への満足度も高まります。
【結論】建設業(現場仕事)の有給取得状況には格差あり
本記事の結論は以下の通りです。
・政府統計では建設業の有給休暇の取得日数は平均10.8日。それなりに有給休暇が取れる環境。
・しかし、雇用者30名以下の企業の実態は政府統計では明らかになっていない。
・SNSアンケートでは、現場仕事の方の46%が「全く有給が取れない」と回答。現場仕事特有の事情で有給休暇が取りにくい人が多く存在するが、「10日以上取れている」という回答も存在し、格差がある。
・休暇制度自体整っておらず有給休暇の概念があいまいな企業も多く存在する可能性がある。
雇用側はもちろん、労働者も有給休暇の正しい知識を持っておく必要があります。自分の権利を知り、雇用環境を把握しましょう。
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