入社時の大切な契約書類
会社に社員を雇用する際、雇用契約書・労働条件通知書は渡しているでしょうか?
雇用契約書・労働条件通知書は、企業と労働者の双方が労働条件を確認しあい合意の上で雇用契約を交わす重要な書類であり、特に労働条件通知書は労働者に渡すことが法律で義務付けられています。
これらの書類は、労働者の権利を守るだけでなく会社を守るものでもあります。
この記事では雇用契約書・労働条件通知書の法的な位置づけや書類の必須記載事項の解説、また実際に電気工事会社から聞いた、雇用契約書・労働条件通知書を作成することで得られたメリットについてもご紹介していきます。
重要書類をもらわず働いている人も
このアンケートは、先日電工魂のSNSアカウントで入社時に雇用契約書または労働条件通知書をもらった(渡した)かどうかを質問したものです。
給与や労働時間など、雇用契約の具体的な内容を示す労働条件通知書の交付は法律で義務付けられていますが*、実態として書類を交付しないまま人を雇う会社もあることが分かります。
特に社労士を雇っていない企業や、法人化して間もない企業は雇用関係の契約について確認する機会が少なく、会社も労働者も気づかないうちに法律違反をしているパターンが存在します。
*労働者からの希望があれば例外的に電子メールやファックスでの交付も可。
雇用契約書・労働条件通知書ってどんなもの?
雇用契約書と労働条件通知書は、セットになって一式の書類として渡される場合が多くあります。会社によっては、労働条件通知書のみを渡すこともあります。
2つの書類を簡単に説明すると、雇用契約書は雇用契約に合意したことを示す書類で、労働条件通知書は、例えば契約期間や就業時間・休日や賃金に関する内容など労働の条件が記載された書類です(労働条件通知書のひな型はこちら)。
労働条件通知書は交付の法的義務がある
法的な扱いに関しては、雇用契約書は交付の義務はありませんが、労働条件通知書は交付の法的義務があります。
雇用契約書には捺印が必要ですが(次項目で解説)労働条件通知書は、捺印は必須ではありません。
雇用契約書の役割
雇用契約書は労働条件通知書と違い交付に法的義務はありませんが、互いに労働契約に合意したことを確認するために労働条件通知書と合わせて交付しておくとよいでしょう。雇用契約書は、労働者と雇用者が互いに捺印をしたものを2部作成し、双方で保有しておきます。
雇用契約書を作成しておくことは会社にとっても大切です。例えば正式な手続きを取ったにも関わらず、後になって労働者から「労働条件について合意していない」などと言われるトラブルがあった際、捺印入りの雇用契約書があれば合意があった証拠が残っていることになります。
雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
目的 | 契約内容の双方合意を示す | 労働条件の通知 |
交付の義務 | なし | あり |
捺印 | 必要 | 不要 |
労働条件通知書の作り方
社労士との契約がある場合や、これから社労士と契約する場合は、まずは社労士に相談するのがいいでしょう。自社で作成する場合は、厚生労働省がひな型を公開しているので様式に沿って作ると作成の難易度が下がります。
ひな型は厚生労働省のHPからダウンロードを行うことができます。このページには労働条件通知書のほかにも事務手続きに必要な書類のひな型が数多く公開されているため、ブックマークしておくと便利です。
労働条件通知書の必須記載事項5つ
労働条件通知書に必ず明示しなければならないのは以下5つの条件です。
① 労働契約の期間
② 就業の場所・従事する業務の内容
③ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④ 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)
例外的に、就業規則に上記条件を明示をしていて、契約締結時に労働者一人ひとりに対してその労働者に適用される部分を明らかにしたうえで就業規則を交付する場合に限っては、労働条件通知書から記載を除外できます。とにかく、上記5つの条件は、必ず労働条件通知書または就業規則に明示しておく必要がある重大な事項であるということは認識しておきましょう。
労働条件通知書に記載しなくてもいい事項
以下は求人票などにもよく記載する事項ですが、労働条件通知書に明示する法的な義務はありません。ただし、労働に関する重要な事項のため口頭では説明する必要があります。できる限り記載を行っておいた方が双方にとって契約内容が明確になります。
① 昇給に関する事項
② 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
③ 臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
④ 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
⑤ 安全衛生に関する事項
⑥ 職業訓練に関する事項
⑦ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑧ 表彰、制裁に関する事項
⑨ 休職に関する事項
労働条件通知書を交付しない罰則は?
労働条件通知書に必要要件を明示して交付することは労働基準法第15条第1項によって定められています。違反した場合、労働基準法第120条1号により30万円以下の罰金刑に処されることがあります。
【実録】契約書で会社の印象アップ!?
以下は、地方で電気屋を経営されている方から聞いた、「雇用契約書・労働条件通知書があることで求職者に信頼してもらえた」というエピソードです。
田舎で電気屋を営んでいるのですが、最近雇用契約の際、労働条件通知書兼雇用契約書を渡しただけで、「ちゃんと書面でもらったの初めてです!」「家族にもいい会社入ったね~と言われました!」と喜んでもらえました。法的には当然のことですが、契約書類なしに雇用を行っている会社も少なくないですよね。契約関係がきちんとしていることが社員から転職活動中の職人さんにも伝わり、リファラル採用(自社の社員に人材を紹介してもらい採用すること)にまでつながりました。法をしっかり守っていない会社が多いからこそ、守ればメリットも得られるので、雇用契約に関わる書類は一式、しっかり作成しておいた方がいいかと思います。
このエピソードのように、これまで契約がずさんな会社で働いていた労働者は、法を守って雇用契約を締結しているというだけで、その会社に対する信頼度がアップします。そのことが、難しいとされる職人の採用にもつながっています。法を順守する会社であることは、外部から信頼を得るというメリットにもなるということです。
労働条件通知書は必ず作りましょう!
雇用時の契約書類の大切さについて、伝わりましたでしょうか。
契約書類を用意していない企業様や、書類の内容に不備がありそうな企業様はぜひひな型を活用しつつ、法に沿った労働条件通知書を作成するようにしてください。
参考資料
厚生労働省:労働基準
厚生労働省-労働基準:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。
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