【社労士監修】整理解雇とは?解雇の4要件についてわかりやすく解説!

会社づくり

整理解雇とは

会社の経営状況が悪くなり、現状では立ちいかないと感じたとき、社員の解雇を検討する必要も出てくるでしょう。

企業が経営の悪化などを理由に人員削減を行うことを「整理解雇」と言います。

解雇を行うには、客観的に合理的な理由があることおよび社会通念上相当であることの2つの要件を満たさなければなりません。

また、整理解雇が正当なものと認められるためには、整理解雇が適用となる要件を満たす必要があります。

今回は、初心者でもわかりやすいように整理解雇に必要な4要件について解説していきたいと思います。

簡単に整理解雇はできない

まず最初に理解していただきたいのは、「整理解雇は簡単にできるものではない」ということです。

経営悪化等の状況に対し、人員削除を行うこと自体は違法ではありませんが、解雇までの方法が強引であったり、合意のないまま解雇されてしまった場合は、不当解雇に該当する可能性があります。

社員としても生活がありますから、「解雇は不当である」として争う姿勢を見せる場合があります。そうなった場合、裁判で解雇が妥当であるかを争うことになります。

整理解雇は、会社が責任を負うべき経営上の理由による解雇である点に特徴があり、判例では解雇権濫用法理の適用においてより厳しく判断すべきものと言われています。

「整理解雇の4要件」とは?

ここからは、整理解雇が妥当であるかを判断するにあたって重要な「整理解雇の4要件」と呼ばれるルールを確認していきます。整理解雇を行う際には、原則として以下の4要件のすべてを満たす必要があります

◆ 整理解雇の4要件

1.経営上の必要性: 倒産寸前に追い込まれているなど、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められること。

2.解雇回避の努力:配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引き下げその他、整理解雇を回避するために、会社が最大限の努力を尽くしたこと。

3.人選の合理性:勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること。

4.労使間での協議:整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議をし、納得を得るための努力を尽くしていること。

*出典: 厚生労働省 静岡労働局 労働基準法の概要(解雇・退職)

整理解雇の4要件①:経営上の必要性

整理解雇の4要件の1つ目、「経営上の必要性」とはどんな場合を指すのでしょうか。

近年の裁判例では、企業が人員削減をしなければ直ちに倒産の危機に瀕するといった高度のものである必要は必ずしもなく、経営上の合理的理由が認められれば足りるとする例が多い(ゾンネボード製薬事件 東京地八王子支決平5.2.18 労判627-10、大阪暁明館事件 大阪地決平7.10.20 労判685-49など。否定例として東京自転車健康保険組合事件 東京地判平18.11.29 労判935-35)。なお、経営上の必要性の程度があまり大きくない場合には、解雇回避努力の要請が強化されるとする裁判例も見られる(前掲ゾンネボード製薬事件ヴァリグ日本支社事件 東京地判平13.12.19 労判817-5など)。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(判例リンクは編集部にて追加)

過去の判例を見ると、必ずしも「解雇をしなければ直ちに倒産する」というような高度の経営不振にまでおちいっていなくても、会社の合理的運用上やむを得ない必要に基づくものであれば、倒産を未然に防ぐために行われた整理解雇が認められた事例もあるようです。

裁判では個々の会社の状況を見て個別に判断を下すため、例えば「どのくらいの赤字が出れば当該要件が成立する」というような明確な基準は設けられていないのですが、少なくとも経営上の必要性が求められることは覚悟する必要があります。

整理解雇の4要件②:解雇回避の努力

整理解雇の4要件の2つ目、「解雇回避の努力」とはどんな場合を指すのでしょうか。

一般に、残業規制、配転・出向、新規採用の抑制・停止、非正規従業員の雇い止め、希望退職募集などが挙げられるが、何をもって十分な解雇回避努力と認めるかは、事案により異なりうる。たとえば、配転や希望退職募集を欠く場合には、一般的にいえば解雇回避努力が不十分とされやすいが、これらによることが困難もしくは不適当な事情があれば、解雇回避努力に欠けるとは評価されない(前掲東洋酸素事件など。過去の裁判でも、希望退職等について、個別具体の事案を検討した上で、その不実施を解雇回避努力に欠けると評価している)。なお、配転等による解雇回避が十分に期待できない事案などについて、再就職支援等の被解雇者への打撃を軽減する措置の存在を整理解雇の効力を判断する際に考慮する例も見られる(前掲ナショナル・ウェストミンスター銀行(第3次仮処分)事件など。当該事案の下では他の解雇回避措置をとることが困難といえず、退職金の割増をもって解雇回避努力が尽くされたとはいえないとする例として、PwCフィナンシャル・アドバイザー・サービス事件 東京地判平15.9.25 労判863-19)。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(判例リンクは編集部にて追加)

上記の独立行政法人労働政策研究・研修機構が示す解雇回避の努力の具体例では「残業規制、配転・出向、新規採用の抑制・停止、非正規従業員の雇い止め、希望退職募集」が挙げられています。さらに前述の厚生労働省静岡労働局の例では、賃金の引き下げも例として挙げられていました。

企業は整理解雇を行う前に、上記のような「具体的事情のもとにおいて、状況に応じて解雇回避の努力」を行ったかどうかが問われます。そのため、会社の経営状況、会社規模、従業員構成などをふまえて個別具体的に判断されます。つまり、解雇を避けるための手段をとったうえで、やむを得ず、最終手段として整理解雇という選択が浮上してくるということです。

整理解雇はあらゆる努力を尽くしたうえでの最終手段」として考えましょう。

整理解雇の4要件③:人選の合理性

整理解雇の4要件の3つ目、「人選の合理性」とはどんな場合を指すのでしょうか。

被解雇者の選定に関しては、客観的な選定基準の設定に加え、当該基準の合理性が求められる。何が合理的な基準かは、個々の事案ごとに判断されるが、一般的には、懲戒処分歴や欠勤率等の会社への貢献度に基づく基準、扶養家族の有無等の労働者の生活への打撃の程度を考慮した基準などが考えられる。比較的最近の具体例としては、53歳以上の幹部職員という基準の合理性を否定した、前掲ヴァリグ日本支社事件などがある。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(判例リンクは編集部にて追加)

企業は整理解雇を行う際、従業員の誰を解雇するか、人前にも合理性を求められます。人選を行う際の一般的な基準として上記機構が挙げているのは懲戒処分歴欠勤率等の会社への貢献度に基づく基準と、扶養家族の有無労働者の生活への打撃の程度を考慮した基準です。さらに前述の厚生労働省静岡労働局の例では、勤続年数や年齢も人選を行う際の例として挙げられていました。

会社は整理解雇の対象者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し、公正に適用して行う必要があります。

基準としては、年齢、勤続年数、勤怠、成績の優良・不良などの労働力としての評価、労働者の生活への影響などの評価があげられます。

基準をまったく設定しないで行われた整理解雇は、解雇権の濫用として無効となります。

整理解雇の4要件④:労使間での協議

整理解雇の4要件の4つ目、「労使間での協議」とはどんな場合を指すのでしょうか。

労働組合との協議は、労働協約等に解雇協議条項が存在しない場合にも信義則の観点から必要とされる(日本通信事件 東京地判平24.2.29 労判1048-45)。また、労働組合の組合員でない労働者に対しても、整理解雇の必要性、具体的実施方法等について、十分に協議・説明し、理解を求める努力が必要とされる。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(判例リンクは編集部にて追加)

この要件は、なぜ整理解雇をしなければならないのか、どのように実施するのかなど、整理解雇の必要性とその内容(時期、方法、規模および解雇に対する補償内容)を従業員の納得を得るように十分に説明し、誠意をもって協議をしたかが問われるということです。整理解雇に至るまでの背景(人員削減をせざるを得なくなった経営状況、コスト削減策などの経営改善努力、今後の経営の見通し、人員削減規模の根拠、人員削減の時期、解雇回避努力の内容、人選の基準)について従業員から質問のあった事項についても誠意をもって回答することが必要です。

「経営状況が悪化していることは従業員も理解しているはずだ」と考え、説明・協議を省略してしまう企業もあるかもしれませんが、そうすると手続きが不当であるとして解雇が認められなくなる可能性もあります。整理解雇において従業員に対する説明・協議は重要なプロセスといえます。

整理解雇についてのまとめ

整理解雇について、最後に要点をまとめます。

・企業が経営難に陥り、人員整理を行うために従業員を解雇することを「整理解雇」と呼ぶ。

・整理解雇を行うには、整理解雇の4要件を原則としてすべて満たしている必要がある。

・整理解雇の4要件は、「経営上の必要性」「解雇回避の努力」「人選の合理性」「労使間での協議」の4つである。

・整理解雇は必ず認められるわけではない。従業員が「解雇は不当である」と主張し裁判によって有効性が争われ、解雇は無効と判断される場合もある

・整理解雇は企業が事業を存続させるために最終手段として従業員を解雇するものであると捉えるべきである

監修協力

【プロフィール】 社会保険労務士法人エンチカ 波多野代表
株式会社フルキャストホールディングスに入社し、社会保険労務士資格取得後、人事領域の業務に従事。責任者として人事制度構築、労働組合対応、リストラクチャリングなど人事領域の幅広い業務を担当し、2013年に社会保険労務士として独立。4年間の個人事業主を経て、社会保険労務士法人エンチカを創業。

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関連リンク

公益社団法人全国労働基準関係団体連合会: 労働基準関係判例一覧

独立行政法人労働政策研究・研修機構: (90)【解雇】整理解雇

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