下請かけこみ寺とは?建設業も活用事例多数ありの問題解決機関

会社づくり

下請けのトラブル解決サービス

建設現場は多数の企業が連動して動いています。

様々な会社と取引を行う中で、「もう少し待ってくれと言われたまま工事代金を払ってもらえない」「無理な単価の引き下げを要求されてしまった」など、トラブルを抱えてしまったことはないでしょうか。

下請けの立場にある中小企業や個人事業主が取引先とトラブルになった際に活用できる、「下請かけこみ寺」というサービスがあります。

建設業も多数利用しているこのサービスについて、概要と活用事例をご紹介します。

いざというときに自分の会社を守るためにも、下請かけこみ寺のことを知っておきましょう。

下請かけこみ寺の概要

下請かけこみ寺とは、中小企業の取引上の悩みを弁護士や専門の相談員に相談できる、全国中小企業振興機関協会が主催するサービスです。

中小企業の従業員・経営者および個人事業主・フリーランスの方であればだれでも、無料で利用することができ、主な役割はトラブル解決のための助言と、調停弁護士による調停手続き(裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続きのこと)です。

相談は秘密厳守で対応されるため、相談の段階で取引先に相談したことが知られてしまう心配はありません。

下請かけこみ寺はどんな時に利用されている?

下請かけこみ寺に寄せらせた相談内容を分類したグラフがこちらです。

出典:下請かけこみ寺HP-相談実績

相談内容は、「代金の未払い」が最も多く、相談のおよそ5件に1件を占めています。

そのほかには代金の減額単価の引き下げ要求取引の中止など、建設業でもトラブルとしてあがることの多い内容が多く相談されています。

下請かけこみ寺の利用は建設業がトップ!

2020年度に下請かけこみ寺を利用した業種の割合は以下のグラフから確認できます。

出典:下請かけこみ寺HP-相談実績

下請かけこみ寺に相談を寄せるのは建設業が最も多く全体のおよそ5分の1を占めています

同業者も多数利用しているサービスだと思うと、相談するハードルも下がるのではないでしょうか。

建設業の下請かけこみ寺相談事例

建設業が実際に下請かけこみ寺を利用した具体的な事例についても、内容が公開されてます。

以下で、2019年~2020年度に実際に相談があった、建設業および建設業に近い業種の事例と相談の結果を4つご紹介します。

建設業事例1:工事費増額分支払いトラブル

【概要】A社(大型給湯機器設計・設置会社)は、B社(業務用給湯機器販売会社)より大型給湯器の設置工事を請負い、工事を開始したところ、設置場所の変更等があり、A社は当初見積額より、設計変更分70万円増額の見積書を再提出した。ところが、B社は当初見積額による設置工事を主張したため、工事を中断し、70万円増額分も含めた設計・工事代金全額の請求をしたが、増額分の支払いを拒否され、当初見積額の支払いを受けたため増額分の支払いを求め調停を申立てした。

【申立人主張】設計・工事代金の残額分支払い

【相手方主張】B社は、中断後の工事を他社に依頼し完了させ、顧客に引き渡していたため、A社に対しては、工事を完了させていないので残額分の支払いは出来ないと主張

【調停結果】調停弁護士による調停を3回実施した結果、設計・工事代金の残額のうち、A社が負担した部分の工事代金を支払うことで和解した。

出典:公益財団法人全国中小企業振興機関協会-下請かけこみ寺活用事例集(2020年度)

この事例は、工事後に設備の設置場所が変わったことによる工事費増額を認められなかった設置会社による相談です。下請かけこみ寺への相談によって調停弁護士につながり、調停によって総額分の工事費を支払ってもらうことに成功しています

建設業事例2:工事費未払いトラブル

【相談内容】A社は、B社から建設工事の一部を請け負ったが、お金がないからと言って、工事が終了しても代金を払ってくれない。

【助言と解決例】「建設業法令遵守ガイドライン」をもとに、B社の支払能力を踏まえて、ねばり強く交渉してはどうかと助言した。A社は、助言を踏まえB社と交渉したところ、代金の支払いがあった。

出典:公益財団法人全国中小企業振興機関協会-下請かけこみ寺活用事例集(2019年度)

この事例は、「工事代金を払ってくれない元請けに代金を支払ってほしい」という下請け建設業者からの相談です。下請かけこみ寺への相談によって得られたのは、「どのように交渉すべきか」というアドバイスです。どのような法律により代金を支払わなくてはならないかを説明したうえで交渉を行うと、スムーズにことが運ぶ場合もあります。下請かけこみ寺にいる弁護士や相談員はこの手のトラブルに対する法的な知識を備えているため、交渉を進めるための助言を得ることが可能です。

建設業事例3:工事費一部未払いトラブル

【相談内容】A社は、B社から設備工事を請け負った。代金の一部は払ってくれたが、残りの代金について何度請求しても、払うと言うものの、払ってくれない。

【助言と解決例】弁護士無料相談を受け、払うと言っているのだから、支払期限を定めて「文書」で催促してはどうかと助言された。A社は、助言を踏まえB社に支払期限を定めて「文書」で催促したところ、残りの代金を払ってくれた。

出典:公益財団法人全国中小企業振興機関協会-下請かけこみ寺活用事例集(2019年度)

事例2と似た下請け建設業者による工事代金一部未払いの相談事例です。こちらは、下請かけこみ寺への相談を通して無料弁護士相談を受け、その旨も交え文書で催促を行ったころ、支払ってもらえなかった一部の工事代金を支払ってもらうことに成功しています。弁護士を付けられていると思うと、不正を働き続けることができなくなる業者も多いですので、未払い交渉に有効な手段を得たと言えるでしょう。

建設業事例4:契約書のない工事契約の支払いトラブル

【相談内容】A社は、一次下請のB社から建設工事の一部を口頭で請け負った。工事が終了し請求すると、理由を言わずに、半額しか払えないという。

【助言と解決例】減額理由がわからないから強く支払うよう交渉してはどうか。状況に応じ元請業者に間に入ってもらい、協議してはどうかと助言した。A社は、助言を踏まえ元請業者に相談し、B社と交渉したところ、代金の支払いがあった。

出典:公益財団法人全国中小企業振興機関協会-下請かけこみ寺活用事例集(2019年度)

口頭契約によるトラブルは一見解決が難しいようにも思えますが、この事例では元請業者に間に入ってもらい、協議することで代金を支払ってもらうことに成功しています。このような交渉手段のアドバイスを行ってもらえるのも下請かけこみ寺に相談するメリットと言えるでしょう。

下請かけこみ寺に相談する際の流れ

下請かけこみ寺に相談したいと思うトラブルができたら、以下のようなステップでトラブル解決が実施されます。

◆ 無料相談

まずは下請かけこみ寺に無料相談に行きましょう。無料相談は、「電話相談」「オンライン相談」「対面相談」の3つから選択が可能です。

電話番号の確認・オンライン相談予約および対面相談の予約は下請かけこみ寺のHPから可能です。

調停を起こす前に問題が解決できそうな場合、問題解決のための助言を受けることができます。

◆ 無料調停による紛争解決手続き*

下請かけこみ寺が全都道府県に配置した調停人(弁護士)が相談者の身近なところで調停の手続を行います。

調停手続の費用は無料ですが、一部例外として調停に出廷するときの交通費、調停人に提出する書類の送料、和解が成立した場合の和解契約書に貼る印紙代は当事者間での負担となります。

*「下請かけこみ寺」が行う裁判外紛争解決手続は企業間の紛争について、裁判によらず、弁護士による調停によって、当事者双方が納得いくまで話し合い、簡易迅速に解決を図るものです。

不当な扱いに泣かないために

下請という立場上、取引先を失いたくないという理由で無茶な要求でも応えようとしてしまう時があります。

そのような背景を利用して、下請に対して不当な要求をしてくる企業があるのも現実です。

下請かけこみ寺の存在を知っていれば、自社が不当な扱いを受けた際に会社を守ることができます。

今すぐ利用する必要のない方も、ぜひ下請かけこみ寺の存在を覚えておいていただき、もしもの時のトラブル解決にお役立てください。

HPに掲載されている活用事例集から他社建設業の事例から自社のトラブル解決手段を学ぶこともできますので、読んでみるのもおすすめです。

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