建設キャリアアップシステム大幅値上げ…赤字も深刻

建設キャリアアップシステム大幅値上げ…赤字も深刻

建設キャリアアップシステムのこれから

建設キャリアアップシステム(CCUS)」には登録済みでしょうか。

建設キャリアアップシステムとは、建設現場のIT化促進の一環として国交省と民間団体が一体となり進められている事業です。具体的には、技能者の建設現場における就業履歴や保有資格などを、技能者に配布するカードを通じ、業界統一のルールでシステムに蓄積することにより、技能者の処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指すシステムのことを指します。

出典:国土交通省

このシステムは2019年4月より本格的な運用が開始されましたが、「ウチの現場では導入する話が全く出てこない」「大手企業の職人しか登録しないのでは?」と思う方もいるかと思います。

実は建設キャリアアップシステムは運用に苦戦しており赤字が続く状況。2020年10月には登録にかかる費用が2倍になるなど大幅な値上げも起こりました。

今後、このシステムは現場に浸透するのでしょうか。現在の利用状況や利用者の本音について知っておきましょう。

建設キャリアアップシステムの普及率は目標を大きく下回る22%

2021年10月末に発表されたでデータによると、建設キャリアアップシステムの登録者技能者数は累計72万8,539名。登録事業者数は14万4,322社(一人親方を除くと10万3,578社)です。

建設業で働く技能者労働者は平成28年時点で326万人であると発表されています。建設キャリアアップシステムの普及率を計算してみると、登録済みなのは技能者のおよそ22%です。電工魂が2020年9月に調査した際は、普及率が技能者のおよそ9%であったことから登録者数自体は増えていますが、これは国の想定をはるかに下回る普及率です。

国交省は当初、開始初年である2019年度に100万人の技能者の登録、2023年3月に330万人すべての技能者の登録を目標としていました。現在は目標を下方修正していますが、当初思い描いていたような普及は実現できていないのが現状です。

建設キャリアアップシステムは運用赤字が深刻

出典:国土交通省

建設キャリアアップシステムの厳しい状況は登録者数だけでなく、深刻な運用費用の赤字からも見て取れます。システムの開発費や審査費用が当初の見込みよりも大幅にかかったから赤字が積み重なり、2019年度末には累積赤字が57.4億円発生しています。

項目別に、建設キャリアアップシステムの想定費用と実際の費用比較をまとめました。

◆ 建設キャリアアップシステムの想定費用と実際の費用比較

当初想定費用実際の運営費用(2020.3時点)
技能者1人当たり登録申請受付費用(WEB)2,033円5,818円
技能者1人当たり登録申請受付費用(書面)4,305円9,188円
技能者登録の累計費用2.9億円17.1億円
コールセンターのオペレーター数15名最大57名
コールセンターの累計費用0.8億円4.2億円
データ出典:国土交通省 建設キャリアアップシステム運営協議会 第6回総会議事次第

このままの運用では2020年度末に累積で100億円もの赤字が発生してしまうことから、2020年10月には利用料が見直されることとなりました。

料金大幅値上げに…建設キャリアアップシステム利用者の負担増

赤字運用を立て直すため、2020年10月に建設キャリアアップシステムの利用料金が改定されました。その負担は、利用者である建設業者が背負うことになります。改定された料金をまとめました。

◆ 事業者登録料が2倍

2020年10月の建設キャリアアップ利用料改定では、事業者登録料が従来の料金の2倍になりました。従来、資本金500万円未満の事業所の登録料は3,000円でしたが6,000円に値上げ。登録料は従業員数によって変わりますが、最大規模である資本金500億円以上の企業の場合、登録料が120万円から240万円になるという大幅な値上げとなりました。

◆ 現場利用料も3円から10円に

現場利用料とは、システムにおいて現場・契約情報を登録した事業者(元請け)が支払う、現場に入場する技能者の人日単位に対する利用料金です。建設キャリアアップシステムに登録済みの技能者は現場でカードをタッチしますが、そのタッチ数に応じて現場利用料が加算されていきます。

こちらは、1人の技能者につき1日あたり3円だったものが10円に大幅値上げ。元請けには積み重なって大きな負担となります。

◆ そのほかの値上げ

・管理者ID利用料は月額200円から950円に値上げ

・技能者登録料の一部値上げ(令和3年4月1日~)

※ 技能者登録は「簡易型登録」と「詳細型登録」にわけられ、詳細型登録の場合に2,500円から4,900円に値上げとなります。簡易型登録は、登録情報を本人情報や社会保険、建退共の加入状況などに限定する簡易的な登録で、詳細型登録では保有資格、健康診断の受診歴、表彰歴などより詳細なデータが登録されます。

※ 改定後の料金について詳細は 公式HPをご参照ください。

建設キャリアアップシステム「メリットない」が過半数…厳しい本音

登録者の伸び悩みや値上げを受け、これから登録を考えている事業者が考えるのは「支払う金額に見合ったメリットを得られるのか」ということです。

データ出典:一般社団法人全国建設業協会 令和3年度建設キャリアアップシステムモデル工事現場アンケート調査結果について

2021年10月に公開された全国建設業協会のアンケートでは、建設キャリアアップシステムを実際に活用したモデル工事現場においては、42%が「メリットがある」と回答し、58%が「メリットがない」と回答しています。実際に導入している現場でも過半数が「メリットがない」と答えている、厳しい結果です

なお、前年2020年の調査では「メリットがある」と答えたのがわずか26%であったことからメリットを感じる現場は増加傾向にはあります。

「メリットがある」とされた理由としては、

・作業員名簿や資格の有無をいつでもシステムから確認でき、帳票としても出力出来るため。

・発注者へのアピールポイントとなり、また、工事成績評定点の加点がされるため。

・工事加点対象であるため。

・書類の簡素化等に繋がるため。

等の理由が挙げられています。

建設キャリアアップシステムに対して事業者が感じているデメリット

建設キャリアアップシステムに対して事業者が感じているデメリットは、

・登録に手間がかかる

・利用料がかかる

以上の2点が主な理由でしょう。

デメリット以上のメリットを示すことができなければ普及は進まないため、登録の簡素化や中小企業の登録サポートなど、利用者の負担を減らすための対策が必要です。

建設キャリアアップシステムの登録内容・料金

建設キャリアアップシステムの登録にはどんな手続きを踏めばいいのでしょうか。法人の場合と個人事業主(一人親方)の場合で簡単に申請内容とかかる費用を解説します。

※ 内容・料金は2022年2月18日時点のものです。

法人の場合

法人としての「事業者登録」と、雇用する技能者を登録する「技能者登録」の2つの登録を行う必要があります。技能者登録は技能者自身での申請も可能ですが、情報を適切に登録するため雇用事業主や上位企業による代行申請が求められています。

技能者の社会保険等の情報を適切に登録するため、雇用事業主による代行申請を積極的にお願いしております。

建設キャリアアップシステムHP-新規登録について

申請はWEB、認定機関登録窓口の2つの方法があります。こちらのガイダンスに沿って登録を進めていきます。

登録に当たってかかる費用は以下の通りです。

<事業者登録関連の費用>

①事業者登録料(事業者が本システムを利用する際に必要な登録料)

資本金登録料(税込)
一人親方0円
500万円未満(個人事業主含む)6,000円
500万円以上1,000万円未満12,000円
1,000万円以上2,000万円未満24,000円
2,000万円以上5,000万円未満48,000円
5,000万円以上1億円未満60,000円
1億円以上3億円未満120,000円
3億円以上10億円未満240,000円
10億円以上50億円未満480,000円
50億円以上100億円未満600,000円
100億円以上500億円未満1,200,000円
500億円以上2,400,000円

②管理者ID利用料(システムにログインするためのID利用料):毎年11,400円(税込)

③現場利用料:技能者1人日・現場あたり*10円(税込)

*20人の技能者が50日就業した場合 20人×50日×10円=10,000円
同一現場で朝と昼休み後に2回入場 1人日×1現場=10円
午前と午後で同一元請の別現場に入場 1人日×2現場=20円

<技能者登録関連の費用>

①技能者登録料(技能者の建設キャリアアップカードの発行に必要となる料金)

簡略型詳細型
インターネット2,500円4,900円
認定登録機関4,900円

個人事業主(一人親方)の場合

個人事業主(一人親方)の場合、技能者登録のみでいい場合と、事業者登録・技能者登録の両方が必要となる場合があります。「請負契約を結んで施工体制に事業者として登録される立場」であれば、事業者登録と技能者登録の両方を行う必要があり、特定の事業所に所属せず、専ら技能労働者として雇用される立場であれば技能者登録のみが必要となります(他サービスと就業履歴についてのAPI連携を利用したい場合は、事業者登録が必要です)。

<事業者登録関連の費用>

①事業者登録料(事業者が本システムを利用する際に必要な登録料)

資本金登録料(税込)
一人親方0円
500万円未満(個人事業主含む)6,000円
500万円以上1,000万円未満12,000円
1,000万円以上2,000万円未満24,000円
2,000万円以上5,000万円未満48,000円
5,000万円以上1億円未満60,000円
1億円以上3億円未満120,000円
3億円以上10億円未満240,000円
10億円以上50億円未満480,000円
50億円以上100億円未満600,000円
100億円以上500億円未満1,200,000円
500億円以上2,400,000円

②管理者ID利用料(システムにログインするためのID利用料):毎年11,400円(税込)※ 一人親方は毎年2,400円(税込)

③現場利用料:技能者1人日・現場あたり*10円(税込)

*20人の技能者が50日就業した場合 20人×50日×10円=10,000円
同一現場で朝と昼休み後に2回入場 1人日×1現場=10円
午前と午後で同一元請の別現場に入場 1人日×2現場=20円

<技能者登録関連の費用>

①技能者登録料(技能者の建設キャリアアップカードの発行に必要となる料金)

簡略型詳細型
インターネット2,500円4,900円
認定登録機関4,900円

建設キャリアアップシステムは二次請け以降にも普及するか

国交省は工事成績評定点の加点対象にするなどして建設キャリアアップの登録を促していますが、元請けだけでなく二次請け以降に普及させるためには手続きの簡略化と、手間・料金以上のメリットの提示が必須となるでしょう。

まだまだ、普及には時間のかかりそうな建設キャリアアップシステム。今後の動きにも注目していきましょう。

参考資料

国土交通省: 建設キャリアアップシステム運営協議会 第8回総会(Web 会議)

一般財団法人建設業振興基金: 建設キャリアアップシステム

全国建設業協会:令和3年度建設キャリアアップシステムモデル工事現場アンケート調査結果について

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