赤字、大幅値上げ…建設キャリアアップシステムの今

赤字、大幅値上げ…建設キャリアアップシステムの今

建設キャリアアップシステムのこれから

自社で「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を登録したという方はいらっしゃるでしょうか。

建設キャリアアップシステムとは、建設現場のIT化促進の一環として国交省と民間団体が一体となり進められている事業。

技能者の現場における就業履歴や保有資格などを、技能者に配布するカードを通じ、業界統一のルールでシステムに蓄積することにより、技能者の処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指すシステムのことを指します。

出典:国土交通省

このシステムは平成31年4月より本格的な運用が開始されました。

しかし、「聞いたことはあるけど、ウチの現場では導入しようなんて話はまだ全くない」という方も多いかと思います。

実は建設キャリアアップシステムは現在、運用に苦戦しており赤字が続く状況

10月には大幅な値上げも起こりました。

今後、このシステムは現場に浸透するのでしょうか。

現在の利用状況や利用者の本音についても知っておきましょう。

導入率は10%以下

9月30日に発表された最新データによると、建設キャリアアップシステムの登録事業者数は6万8,566社。登録技能者数は36万6,653名です。

建設業で働く技能者労働者は330万人と言われています。そのため現時点での普及率は技能者の9%

10人に1人以下の登録者数にとどまっています。

国交省は開始初年度で100万人の技能者の登録、2023年3月に330万人すべての技能者の登録を目標としていましたが、登録状況を見る限り厳しい現状がうかがえます。

運用赤字が深刻

建設キャリアアップシステムの厳しい状況は登録者数だけでなく、深刻な運用の赤字からも見て取れます。

出典:国土交通省

システムの開発費や審査費用が当初の見込みよりも大幅にかかってしまうことから赤字が積み重なり、2020年度末には累積で100億円もの赤字が見込まれているのです。

運用すればするほど赤字という状況から、今年10月からは登録料の値上げもスタートしました。

ついに値上げ…増える事業者負担

◆ 事業者登録料は2倍に

まず、10月の建設キャリアアップ利用料改定では、事業者登録料が従来の料金の2倍になりました。

従来、資本金500万円未満の事業所の登録料は3,000円でしたが、10月からは6,000円に値上げ

登録料は従業員数によって変わりますが、最大規模である資本金500億円以上の企業の場合、登録料が120万円から240万円になるという大幅な値上げになります。

◆ 現場利用料も3円から10円に

現場利用料とは、システムにおいて現場・契約情報を登録した事業者(元請け)が支払う、現場に入場する技能者の人日単位に対する利用料金です。

現場で技能者はカードをタッチしますが、そのタッチ数に応じて加算されていくイメージです。

こちらは、1人の技能者につき1日あたり3円だったものが10円に値上げ。

元請けとしては積み重なって大きな負担となります。

◆ そのほか値上げ

・管理者ID利用料は月額200円から950円に値上げ

・技能者登録料(令和3年4月1日から)の一部値上げ

※ 技能者登録は「簡易型登録」と「詳細型登録」にわけられ、詳細型登録の場合に2,500円から4,900円に値上げとなります。

簡易型登録は、登録情報を本人情報や社会保険、建退共の加入状況などに限定する簡易的な登録で、詳細型登録では保有資格、健康診断の受診歴、表彰歴などより詳細なデータが登録されます。

※ 改定後の料金について、詳細は 公式HPをご参照ください。

「メリットない」7割超…厳しい本音

登録者の伸び悩みや値上げを受け、これから登録を考えている事業者が考えるのは「支払う金額に見合ったメリットを得られるのか」ということです。

出典:一般社団法人 全国建設業協会

10月18日に公開された全国建設業協会のアンケートでは、建設キャリアアップシステムにメリットを感じると回答したのが全体のわずか26%

74%は「メリットがない」と回答する、非常に厳しい結果となりました。

なお、「メリットがある」とされた理由としては、

・現場経験等の具体的な熟練度で把握できることにより、グレードに応じた処遇・評価等につなげることができるようになり、技能者のモチベーションアップにつながる

・現場に従事する社員の勤務状況を把握できる

・企業に所属している技能者の活動実績がわかるようになるため、新規下請先の選定などに役立つと考えられる。

・今後のICT化に伴い、データ共有及びペーパーレス化などに必須と考える。

以上の理由が挙げられています。

事業者が感じるデメリット

事業者が感じているデメリットは、

・登録に手間がかかる

・利用料がかかる

以上の2点が主な理由でしょう。

デメリット以上のメリットを示すことができなければ、普及は進みません。

二次請け以降に普及は進んでいくか

国交省は公共工事の請け負いに建設キャリアアップの登録を要請するなどして普及を促進していく方針も示していますが、元請けはまだしも二次請け以降に普及させるためには手続きの簡略化と、手間・料金以上のメリットの提示が課題となるでしょう。

まだまだ、普及には時間のかかりそうな建設キャリアアップシステム。

今後の動きにも注目していきましょう。

参考資料

国土交通省: 建設キャリアアップシステム運営協議会 第6回総会議事次第

一般財団法人建設業振興基金: 建設キャリアアップシステム

全国建設業協会:建設キャリアアップシステムモデル工事現場に関するアンケート」の結果について

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