【独立物語】建設業を変えたい―27歳代表 経歴から知るエネルギーの源泉

【独立物語】建設業を変えたい―27歳代表 経歴から知るエネルギーの源泉

【独立物語とは?】

電気工事業界・建設業界で独立された方に取材し、これまでの経歴や会社にかける想い、将来への展望などをお話ししていただく企画です。

今回は、神奈川県横浜市に本社を構え、空調設備・換気設備・電気設備工事などを行う株式会社雅の代表・河合様にお話を伺いました。

「若いから」では片づけられない力

「建設業界を盛り上げたい」、「地球温暖化問題に取り組みたい 」――

筆者が河合様を知ったのは、インターネットを通して様々な人のつぶやきを観覧できるサービス、Twitter(ツイッター)だった。27歳にして株式会社雅の代表を務める河合様のツイッターは、熱いことばで埋め尽くされている。

河合様ツイッター

このエネルギーは、どこから湧き上がってくるのだろうか?その源泉を突き止めるため、河合様に取材を申し込んだ。

実際にお会いし生い立ちを聞いていくと、そこには壮絶な物語があった。「若さ」の一言では決して片づけることのできない、河合様の内側から湧き出る力をぜひご覧になっていただきたい。

【プロフィール】河合 雅人様|株式会社 雅 代表取締役
17歳で夜間学校に通いながら建設業を営む親戚の会社へ入社。7年働いた後、個人事業主として独立。独立から2年後の2019年4月に雅を立ち上げる。3人の子を持つ父親でもあり、今年には4人目が誕生予定。

会社について

―現在、従業員は何人いらっしゃいますか?

5人です。うち4人は現場作業員で、1人が事務員です。2か月後にはまた新しい社員が1人入社する予定です。

―昨年4月に法人化したばかりとのことですが、ハイスピードで成長している印象を受けます。

周りからはそう言っていただけることが多いですね。個人事業主の時代は資金ゼロからのスタートでしたが、今では事務所もでき、車も6台に増えました。1台は先日納車したばかりです。

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会社経営は順調に見える河合様。だが、その背景は乗り越えてきたいくつもの困難と、悔しさを感じた日々がある。

河合様ツイッター

―河合様はツイッターでよく「建設業界を変えたい」と発信されていますね。

僕は17歳の時に建設業を営む親戚の会社に入社しました。そこがいわゆる「昔ながらの工事屋」で、たくさん理不尽な経験をしました。背中で語れというスタンスで、ろくに教えても貰えず、何も知らない状態で怒られることもしょっちゅうでした。入社して9か月の間、カッターとほうきしか持たせてもらえなかったんです。効率悪いでしょ?

こういうことって、「建設業あるある」ですよね。そのせいで、若い人たちがやめていく。でもその一方で「人手不足だ」「若手が足りない」なんて言っていて…。今の建設業界の人手不足・若手不足は、僕たちや、もっと上のベテラン世代が努力してこなかった結果だと思っています。

―ご自身がそのような状況を乗り越えることができたのはなぜですか。

「自分の子どもに誇れるような仕事がしたい」という想いがありました。僕の父親が非破壊検査の仕事をしていて、仕事のことを聞いたときは子どもながらにカッコいいと思ったんです。だから、自分の子どもに誇れる仕事をしたい。この気持ちは、僕を突き動かす大きなものです。

また、祖父の影響も大きいです。僕の祖父は戦争で右手を失いましたが、そんな状況でも懸命に生きてきた人です。それが、あるとき認知症になってしまい、僕が住み込みで介護をすることにしました。

それは17歳のときで、ちょうど親戚の工事会社に入社した歳でもあります。学生でもあったので、当時の一日を振り返ると、朝は仕事に行って、夜は夜間学校に通い、深夜は祖父の介護をする…という感じでした。

祖父の認知症は深夜に発症することが多かったのですが、その時祖父から、何度も生い立ちをききました。また、祖父が自分のことを忘れてしまった時は、僕が祖父の経歴を何度も話して聞かせました。そうして祖父の生き方を知るうちに、自分の置かれている環境の甘さを感じるようになったんです。それまでの自分は遊び惚けていて、無駄に時間を過ごしてきたと思いました。そこで、これからはどんなことも全力でやろうと決意しました。

―河合様が何事にも真剣に取り組む理由が少し理解できた気がします。

でも、会社にはやってもやっても認めてくれない人というのはいましたよ。そんな時は法律を勉強するようにしたんです。「法律ではこうだから」と言うと、相手もなにも言えないので(笑)

あとは仕事で悔しくて負けそうになったら、筋トレをしていました。仕事の前後にキツい筋トレの予定を入れておくと、相対的に仕事が楽になる。そうやって、自分なりにバランスをとっていましたね。

―仕事の楽しさを知ったのはいつですか?

実は、建設業界に入る前なんです。16歳の時、コンビニエンスストアでアルバイトをしていました。横浜アリーナの近くの、にぎやかな店舗でした。

ある日、バイト仲間とナンパの練習を兼ねて、コンビニのレジ横に売っている唐揚げを売ってみようってことになったんですよ。お店に来る人に積極的に声をかけて売ったら、その時間帯ではありえないような個数を売ることができたんです。そしたら次の日、店長に褒められました。「仕事って本気でやると楽しいんだな」と知ったのはその時です。その後も恵方巻を一人で120本売ったり、フライヤーの新商品を売って日本一になったりして、コンビニの本部から社員にならないかとスカウトが来たこともありました(笑)

独立してからは自分で営業もしていたんですが、コンビニでの接客経験は役に立ったなと思っています。

若いというだけで反対された独立

―独立を周囲に打ち明けた時の反応はいかがでしたか。

なかなか許してもらえなかったです。「今やっても上手くいかない」って、さんざん言われました。この前正月に帰った時もまぁいろいろ言われました(笑)

でも、批判の理由が「若いから」という、それだけだったんです。実際、若い人が独立するのは難しいと思いますし、僕も自分でやってみて難しいと感じることもありました。でもいろんな人の助けがあって、事務所も大きくして、人も車も増やすことができました。

僕は独立までの7年間、誰よりも経験を積んできたつもりでいます。勤務時間が終わっても夜に自ら仕事を入れました。本当は、夜勤から日勤までぶっ通して働きたかったんです。さすがにそれは会社から止められましたが、とにかく時間が許す限り仕事をしました。だから、「まだ早い」と言ってくる人の7年と僕の7年は違う。倍以上はやったという自信がありました。

―もう無理だ、もう疲れたと思うことはなかったですか?

なかったです。もちろん人間だから眠らないといけないし、お腹も空くんですが、そんな感情すら邪魔に感じました。眠らなくてよくて、お腹も空かない。そんな体が欲しいと思いながら働いていました。それくらい、仕事に本気でした。

100均の道具、ボロアパートの事務所…周囲に助けられた日々

独立したては資金もコネもゼロ。初めての事務所は、築60年は経っているのではないかという木造アパートだったという。そのような状況の中で、出会った人に支えられながら仕事のチャンスを広げていく。

―個人事業主としての2年間はいかがでしたか。

最初は、お金がないので苦労しました。空調工事は材料代ですごくお金がかかりますし、道具もそろえないといけない。実績のない会社には売ってくれる人もいないという厳しい状況でした。

100均で道具を買うこともありましたよ。500円持って行って、「やばい!お金がない!」なんて言って。

でもそんな中でも助けてくれる人はいました。とある電気工事会社の社長さんは、「道具がないなら全部貸すよ」「お金が必要なら即日入金するよ」と言ってくれました。また、取引を始めた商社の方も支払いを1か月待ってくれたりと融通を利かせてくれました。そうやって周りの人に支えられながら、なんとか売り上げを立てていき、次第に売り上げは大きくなっていきました。

開業半年で、今度は材料置き場が必要になり、アパートを借りることにしました。マンガみたいに古いアパートを、都筑区の池辺町というところに借りました。工事に使うっていうと、最初は大家さんが嫌がったんですが、「庭の草むしりと木の手入れをする」って言ったらOKしてくれました。住んでいる人がいなかったので、駐車場も4台使わせてくれることになりラッキーでした。

―法人化は、最初から頭にありましたか?

ありました。最初から2年後に法人化を見据えてやってきました。ありがたいことに売り上げは右肩上がりで、今ではアパートを離れて新しい事務所を構え、机なんかもオシャレな家具屋さんで揃えられるようになりました。

黒を基調とした雅のオフィスはとても洗練されていた

10年先を見据える、秘密のノート

―今後、どのような会社にしていきたいか、展望はありますか?

いろいろ考えています。直近10年の計画を1枚の紙にまとめたものがあるんです。

経営に関することをまとめたノートをこの日特別に見せていただいた

まず、直近で実現したいことは、店舗やテナントの工事を自社で一括してできるようになりたいと思っています。自社ですべての工事を完成させることができたら、きっと感動が生まれると思うんです。従業員たちが、恋人や家族に「この現場、ウチが手掛けたんだよ」って自慢できるようになったらいいですね。

その後は、空調設備工事に限定せず、自社でできることはなんでもやりたいと思っています。そのほうが発注する側も楽ですよね。今の日本は、業種が細分化しすぎてまどろっこしいなと思っています。なので自社でできることを増やして、そうしたら女性が活躍できる分野もつくって…みんなが得意なことを生かせる会社になったらいいですよね。

ゆくゆくは、環境問題にも建設業の力で取り組んでいきたいと思っています。ここまで行くにはもっと知識も、仲間も必要なので、仲間を集めるために面白い空気を作っていかないと!と思っています。

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【企業情報】

会社名:株式会社 雅

住所:〒224-0042 横浜市都筑区大熊町1050-1

業務内容:各種エアコン設置/エアコン洗浄/修理・点検/換気設備工事/電気工事

HP: http://www.miyabi-ac.com/

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取材・文:電工魂 編集部(下條 真穂)

河合代表が語る、若手採用の戦略について伺った記事も公開中です!

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