建設業の退職金共済、建退共
「建設業退職金共済」という制度をご存じでしょうか?
「建退共(ケンタイキョウ)」とも呼ばれるこの制度は、建設業で働く人のために国が作った退職金共済。
電気工事士はもちろん大工・鳶・配管工など建設業界で働く方なら、元請け・下請け・会社規模などを問わず加入することができます。
この記事では、「建退共に加入しているとどんなメリットがあるの?」「お金はいくらかかるの?」などなど、建退共に関することをわかりやすく解説していきます。
【図でわかる】建退共のしくみ

建退共に加入する場合、会社が運営団体と契約を結び、運営団体に掛け金を払います。建退共加入の会社で働く労働者たちは、建設業界で働くのを辞めた時に退職金を受け取ることができます。
退職後のお金の受け取りは、運営団体→元労働者となるので、会社は退職金の支給に関して関わることはありません。
建設業で働く限り安心!労働者のメリット
建退共に加入する会社で働くことで、労働者は建設業をやめた時にお金がもらえます。
これは、労働者にとって大きなメリットです。
24カ月以上(死亡の場合12か月以上)、建退共加入の会社で働いていれば退職金がもらえる対象となり、働いた年数が長くなるほど受け取る退職金の額も大きくなります。
また労働者の働いた年数は、建退共に加入している会社間であれば転職したとしても通算でカウントされます。
つまり、建設業で働き続けるなら建退共に加入している会社を選んだほうがメリットがあるということです。
例1:電気工事士の田中さんが、A電気工事(建退共加入)で1年働き、その後B電業(建退共加入)に転職して5年働いた
→ A電気工事1年+B電業5年の6年間、建退共に加入していたとみなされる。

例2:電気工事士の佐藤さんが、A電気工事(建退共加入)で1年働き、その後C電社(建退共加入なし)に転職して5年働いた
→ A電気工事1年間のみ、建退共に加入していたとみなされる。

建退共加入者は退職金をどんなとき/どうやったらもらえる?
建退共に加入し、建設業で働いていた人が退職金を請求する際は、労働者本人が建退共に対して直接申請手続きを行います。
つまり、退職した会社から労働者にお金が振り込まれるわけではないので、そのことをきちんと頭に入れておきましょう。
申請手続きの具体的な内容としては、「退職金請求書」という書類に必要事項を記入し、証明欄に請求事由に該当する必要な証明(下図参照)を受け、そのときに持っている共済手帳と住民票を添えて、都道府県ごとにある建設業退職共済事業支部*に提出します。
退職前に働いている法人の証明が必要になる場合もあるので、退職して会社に行かなくなる前に相談をしておきたいところです。
*自分の県の支部がどこにあるか確認したい方は こちら退職金をもらえる理由と必要な証明
退職金を請求する理由 | 申請手続きに必要となる証明 |
独立して仕事をはじめた | 最後の事業主又は事業主団体の証明 |
無職になって今後どこにも就職しなくなった | 最後の事業主又は事業主団体の証明 |
建設関係以外の事業主に雇われた | 新しい事業主の証明 |
建設関係の事業所の社員や職員になった | 現在の事業主の証明 |
けが又は病気のため仕事ができなくなった | 最後の事業主の証明又は医師の診断書 |
満歳以上になった | 請求するときの事業主の証明又は住民票 |
本人が死亡した | 戸籍謄(抄)本及び被共済者と請求人の順位等を証明するもの |
退職金の受け取りかた
退職金は、「口座振込み」または「支払通知書」で受けとることが可能です。
口座振込みで受け取りたい場合は金融機関の預金口座を指定すれば振り込んでもらうことができ、支払通知書で受け取るときは、機構から支払通知書が送られますので、指定金融機関に提出して現金で受け取ることができます。
加入者が死亡した場合の建退共の制度は?
建退共に加入していた人が死亡した場合、退職金は本人に代わって遺族が受け取ることができます。
受け取りには、遺族の順位によって異なった書類の提出が必要となりますので、その場合は遺族が 勤労者退職金共済機構または建設業退職金共済事業本部に問い合わせを行うことになります。家族のいる方は、もしもの時のために建退共に加入していることと、自分が死亡した場合の申請手続きの方法や問い合わせ先を家族に伝えておくと安心です。
建退共加入は法人側としてもメリットが大きい
「労働者にメリットがあることはわかった。でも、会社としてはお金を払うだけ損では…?」
法人の立場からこの記事を見ている人は、このように思うかもしれません。
しかし、建退共に加入することは会社としても大きなメリットがあります。
◆ 建退共に入ると転職者に選ばれる
労働者にとって、退職金を受け取れる会社とそうでない会社を比べれば、転職したいのは当然退職金を受け取れる会社ですよね。つまり、建退共に加入することで転職者に選ばれやすい会社になります。
特に、もともと建退共に加入していた方の場合、継続して建退共に加入した方が将来もらえる退職金が大きくなるため、次の転職でも建退共加入の会社を選んだほうがメリットがあります。
建設業で長く働いた方であればあるほど、建退共に加入している会社を選びたいと考えるでしょう。
◆ 建退共に入ると労働者が定着する
労働者が建退共からもらえる退職金の額は、長く働くほど大きくなります。
建退共に加入している会社で長く働くことが労働者のメリットになるので、会社側からすると社員の定着率の向上が見込めます。
つまり、建退共に加入することは良い人材を定着させるために有効な手段と言えます。
◆ 建退共に入ると公共工事を受注しやすい
注目なのは、建退共に入っていると公共工事の受注がしやすくなることです。これはどういうことかというと、公共工事の入札時に行われる経営事項審査の加点要素として「建退共に加入しているかどうか」が問われるのです。
将来的に公共工事にも携わりたいとお考えの事業主の方にとっては、建退共への加入は大きなメリットとなります。
建退共に入るとかかる金額
掛け金は、加入者一人あたり1日320円です(2021年10月現在。金額は変更される可能性があります)。
この掛け金は労働者が支払うのではなく、加入している法人(会社)がまとめて支払いますので、加入する社員が10人いれば、かかる金額は1日あたり3,200円になります。
建退共に加入すると加入者分、共済手帳という手帳が発行されます。共済手帳に掛け金分の共済証紙を購入して張り付けることで、掛け金を払ったことを証明します。
補足:かかる費用は損金扱いにできる
掛け金分の共済証紙の購入にかかった費用は会社が支払うことになりますが、その掛け金は損金処理を行うことができますので、全額免税となります。 ※ 個人企業の場合は必要経費扱い
建退共に入れない人はいるの?
建設業で働く人であればほとんどの人が建退共に加入できます。しかし、中には例外もあるので注意しておきましょう。
建退共に入れない人
・役員報酬を受けている方
・現場から離れた本社などに勤務する、事務を専門に行う社員の方
・中小企業退職金共済、清酒製造業退職金共済、林業退職金共済制度に加入している方
こんな方も加入できます
・外国人の方
・1人親方の方 ※ 任意組合への加入が必要
・現場で働く事務員の方
建退共に加入するにはどうしたらいいの?
建退共への加入や相談を行いたい方向けの、問い合わせ専用窓口が設けられています。
建設業退職金共済事業本部のHPからご確認下さい。また建退共の新規加入事業者には、助成制度があります。これは、加入者の50日分の掛け金が免除されるという制度です。積み重なると大きな額なので、加入の際はぜひ利用しましょう。
電子申請も可能に!
2020年10月より、建退共の掛金納付方式に従来の「証紙貼付方式」に加え、「電子申請方式」が追加されました。
詳細はこちらのページをご覧ください。
建退共についてのまとめ
今回は、建退共とはどんな制度なのかを解説しました。
社員の確保・定着のために重要な福利厚生。建退共にまだ加入していない事業主の方は、加入をご検討してみてはいかがでしょうか?
この記事が、建退共について知りたい方に少しでもお役にたてば幸いです!
◆ 会社の福利厚生についてご検討の方はこちらの記事もご覧ください!
コメント
「建退共に入るとかかる金額」掛け金は、加入者一人当たり1日350円と記載されていますが、共済証紙は、元請が購入し、貼付してくれます。共済手帳発行にお金がかかるのですか?
掛け金の項目で記載している310円は、共済証紙の金額です。
共済証紙の購入にかかる費用が一人当たり1日分310円となります。
元請け様が共済証紙の貼り付けを行われている場合、元請け様の方ですでに証紙の購入費用を支払っているのかと思いますが、個別のご事情について弊社ですべてを把握できかねますので、お手数ですが元請け様または勤労者退職金共済機構にお問い合わせいただけますと幸いです。
参考:http://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki02.html
お問い合わせ窓口:http://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/busyo/index.html
元受け会社も下請け会社も会社の退職金制度の加入者の場合は建退共証紙は必要でしょうか
大変恐れ入りますが、弊社は運営元でないため個別のご事情ついて正式な回答ができかねます。
お手数ですが、建退共の運営元である勤労者退職金共済機構にお問い合わせいただけますと幸いです。
お問い合わせ窓口:http://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/busyo/index.html
建設会社の営業職です。
基本営業職は建退共の対象にならないことは理解できましたが、仮に営業職の私が、数ヶ月の期間とか現場に出向(手伝い)に行くとなった場合、建退共の対象になるのでしょうか?
>「建設業を営む事業主に雇用されている労働者で、建設業の現場で働いている者」は全て建退共制度の被共済者となりうるものとしています。
https://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/qa/qa1-2.html
上記の内容に照らし合わせれば、建設業の現場で働いている期間は加入対象となるように読み取れますが、
期間限定等、個別のご事情がある場合弊社で正式な回答ができかねます。
お手数ですが、建退共の運営元である勤労者退職金共済機構までお問い合わせいただけますと幸いです。
お問い合わせ窓口:http://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/busyo/index.html