2024年の労務単価の全職種平均は23,600円です。前年度よりも5.9%上昇しています。
この記事では、
・2024年の労務単価一覧(全職種平均、主要12職種+電工)
などについて解説していきます。
労務単価の基礎知識
まずは、労務単価についての基本的な考え方や知識を知りましょう。
労務単価とは?
・労務単価とは、建設業従事者が公共事業に従事した際の賃金単価のこと
・労務単価は、所定内労働時間8時間として算出されている
・労務単価には、事業主が負担すべき必要経費(法定福利費、安全管理費等)は含まれていない
労務単価とは、建設業従事者が公共事業に従事した際の賃金単価で、公共工事の工事費の積算に用いられます。
労働市場の実勢価格を反映し、47都道府県・51職種別に単価が設定されています。
単価は、年に1回、3月に改訂されます。
労務単価の考え方
労務単価は、労働者本人が受け取るべき賃金を基に、日額換算値(所定内労働時間8時間)として設定されています。
労務単価には、事業主が負担すべき必要経費(法定福利費、安全管理費等)は含まれていないため、事業主が支払う経費は労務単価に上乗せされます。
事業主が下請代金に必要経費分を計上しない、下請代金から必要経費を値引くなどの行為は禁止されています。
2024年の労務単価一覧と上昇率
2024年の労務単価を職種別に見ていきましょう。昨年からの上昇率もご紹介しています。
労務単価の全職種平均
2024年の労務単価の全職種平均は下表の通りです。
労務単価(全国平均値) | 上昇率(2023年比) | |
全職種 | 23,600円 | +5.9% |
1 公共工事設計労務単価は、公共工事の工事費の積算に用いるためのものである。
2 本単価は、所定労働時間内8時間当たりの単価である。
3 時間外、休日及び深夜の労働についての割増賃金、各職種の通常の作業条件または作業内容を超えた労働に対する手当等は含まれていない。
4 本単価は労働者に支払われる賃金に係わるものであり、現場管理費(法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費は含まれていない。(例えば、交通誘導警備員の単価については、警備会社に必要な諸経費は含まれていない。)
5 法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等は、積算上、現場管理費等に含まれている
2024年の建設業における公共工事の労務単価は、23,600円です。
昨年と比較して、5.9%上昇しています。
主要12職種+電工の労務単価
次に、主要12職種+電気工事士の労務単価です。
労務単価(全国平均値) | 上昇率(2023年比) | |
特殊作業員 | 25,598円 | +6.2% |
普通作業員 | 21,818円 | +5.5% |
軽作業員 | 16,929円 | +6.3% |
とび工 | 28,461円 | +6.2% |
鉄筋工 | 28,352円 | +6.6% |
運転手(特殊) | 26,856円 | +6.3% |
運転手(一般) | 23,454円 | +7.2% |
型わく工 | 28,891円 | +6.6% |
大工 | 27,721円 | +4.9% |
左官 | 27,414円 | +5.0% |
交通誘導警備員A | 16,961円 | +6.4% |
交通誘導警備員B | 14,909円 | +7.7% |
参考:電工 | 24,198円 | +5.0% |
主要12職種の労務単価は上表の通りです。当サイトは電気工事士の読者が多いため、電工の単価も追記しています。
どの職種も前年度より5%~7%程度、労務単価が上昇しています。
その他職種や都道府県別の労務単価を知りたい方は、国土交通省の労務単価表をご覧ください。
労務単価の推移と今後の予測
1997年から2024年度までの労務単価の推移をグラフにまとめました。
推移の中で、特に注目すべき点を以下で解説します。
1990年~2000年にかけての労務単価大幅下落
1999年に1.8万円台であった労務単価は、2000年に1.6万円に急落しています。
これは、建設投資の減少にともなって労働需給が緩和されたことが原因です。
2012年~2013年の労務単価急上昇
2012年に1.3万円台であった労務単価は、2013年に1.5万円に急上昇しています。
この間には、単価算出方法に大幅な変更がありました。必要な法定福利費相当額の反映が実施されたため、2013年から単価が上昇しています。
2023年~2024年の上昇傾向
2013年に1.5万円台に乗って以降、2024年現在まで労務単価は上昇し続けています。
近年の労務単価高騰の原因については、次の項目、労務単価の高騰要因で解説しています。
2024年以降の労務単価見通し
労務単価は近年上昇率が激しく、政府が積極的な賃上げを推進している関係上、今後も上昇していく見通しです。2~3年後には、過去最大の25,000円台か、それ以上に上昇することも考えられます。
労務単価の高騰要因
近年、高騰が続く労務単価。その原因をまとめました。
政府による賃上げの実施
政府は、物価上昇に負けない積極的な賃上げを推進しています。
特に公共事業では、社会全体に賃上げの姿勢を示す必要があります。近年では、公共工事の入札時に賃上げを行っている企業に加点を行うなどの取り組みも始まっています。
政府主体で国全体の賃上げが行われていることから、労務単価も上昇しています。
建設業の担い手確保
建設業界は少子高齢化により慢性的な人手不足状態が続いています。担い手確保のためにも、職人には適切な報酬を支払う必要があります。
職人の処遇改善策のひとつとして、労務単価の引き上げが行われています。
労務単価の上昇が与える影響
労務単価の上昇によって起こる影響は以下の通りです。
インフレに悩む企業の救済
近年、資材価格や人件費が高騰しているにも関わらず、価格に転嫁できず利益率が下がっている企業が多くあります。
労務単価の引き上げによって、利益率の改善が見込めます。
受注単価上昇による働き方改革の推進
労務単価の上昇に伴って、公共工事を行う建設会社の受注単価も上昇します。
受注単価が上がれば、職人一人ひとりへの還元もしやすくなり、建設業の担い手確保につながります。
しかしながら、労務単価の上昇率に比べて技能者の賃金上昇が追い付いていないという意見もあり、課題が残っている状況です。
労務単価Q&A
労務単価についてよくある疑問をまとめました。
労務単価は民間工事に関係ない?
民間工事には労務単価が存在せず、公共工事の労務単価に合わせなければならないという制約はありません。
しかし、公共工事・民間工事を問わず、労務単価の水準を踏まえた適切な請負代金による契約を行うことが、建設業界を持続させるうえで大切です。
県別の労務単価表はどこで見られる?
国土交通省の発表資料、令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価についてで、全職種の都道府県別労務単価を確認することができます。
労務単価の10年推移は?
労務単価の直近10年の推移をグラフにまとめました。
2015年に16,678円だった労務単価は2024年に23,600円まで上昇しています。
上昇金額は6,922円で、10年間でおよそ1.4倍に上昇しています。
まとめ
労務単価の基本的な知識や2024年の労務単価、また労務単価の推移について解説しました。
公共工事、民間工事問わず、適切な請負契約を行うことが業界の維持に繋がります。
この記事が労務単価について調べている方の参考になれば幸いです。
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