建築施工管理技士は取得までに3年以上の時間がかかるケースが多く、試験の合格率は50%を切る難易度の高い資格です。
この記事では、建築施工管理技士の資格取得に興味がある方向けに
・資格取得後のキャリア などを解説します。
建築施工管理技士の資格は、取得難易度は高いものの建設業界で活躍したい人にとってはメリットの大きい資格です。資格についての理解を深めましょう。
建築施工管理技士とは?資格の基礎知識
建築施工管理技士という資格の概要と、試験制度についてまとめました。
建築施工管理技士とは
建築施工管理技士は、土木や電気、管工事など複数ある施工管理技士の国家資格のうちの1つで、建築工事分野の施工管理を行う上で役に立つ資格です。
建築施工管理技士には、2級建築施工管理技士と1級建築施工管理技士の2種類があります。1級のほうが監督できる工事の範囲が広いため、より上位の資格と考えることができます。
【級別】建築施工管理技士の役割・資格取得のメリット
建築施工管理技士の資格を取得するメリットは、法律で現場に配置することを定められている「主任技術者」や「監理技術者」として認められるという点にあります。
2級建築施工管理技士取得のメリット
2級建築施工管理技士の取得者は、現場の「主任技術者」になることができます。
建設業者は、施⼯の技術管理をする主任技術者を、工事現場ごとに必ず設置しなければならないと法律で定められています。請負⾦額の⼤⼩や元請・下請に関わらず、すべての現場で主任技術者は必要となるため、その要件を満たす2級建築施工管理技士の資格保有者は現場で必要不可欠な存在です。
1級建築施工管理技士取得のメリット
1級建築施工管理技士の取得者は、「主任技術者」の役割ができることに加え「監理技術者」としても活躍できます。
監理技術者とは、元請け工事を行う特定建設業者が4,500万円(建築⼀式⼯事の場合7,000万円)以上を下請契約して施⼯する場合、主任技術者に代えて設置しなければならない監理者です。つまり、1級取得者は2級取得者では扱うことのできない大規模な元請け工事の現場にも対応することができます。
試験制度の概要
開催回数 | 一次検定 試験形式 | 一次検定 試験時間 | 一次検定 科目 | 二次検定 試験形式 | 二次検定 試験時間 | 二次検定 科目 | |
2級建築施工管理技士 | 一次検定年2回 二次検定年1回 | マークシート形式 4択または5択 | 2時間30分 | 建築学等/施工管理法/法規 | 記述形式 | 2時間 | 施工管理法/躯体施工管理法/仕上施工管理法 |
1級建築施工管理技士 | 年1回 | マークシート形式 4択または5択 | 午前2時間30分 + 午後2時間 | 建築学等/施工管理法/法規 | 記述方式 および マークシート形式 | 3時間 | 施工管理法 |
建築施工管理技士の試験は、一次検定・二次検定の2つの試験に合格することで資格取得となります(2級・1級共通)。
一次検定は、4択または5択のマークシート形式で出題されます。二次検定は、記述形式がメインの試験です。
実施回数は、2級建築施工管理技士試験のみ前期・後期の年2回、1級建築施工管理技士試験は年に1回です。2級の前期日程では一次検定のみ受験可能です(二次検定は開催されません)。後期日程では、一次検定のみ、一次・二次検定両方受験、二次検定のみ受験の3つの受験方法を選ぶことができます。
受験資格
【2級建築施工管理技士】
一次検定 | 二次検定(2024年改正の新受験資格) | |
2級建築施工管理技士 | 試験実施年度に 満17歳以上となる者 * | 以下の①~③いずれかの条件を満たす者 ①2級建築施工管理技術検定の第一次検定合格後、実務経験3年以上 ②1級建築施工管理技術検定の第一次検定合格後、実務経験1年以上 ③一級建築士試験合格後、実務経験1年以上 |
*令和6年度に申請する場合、生年月日が平成20年4月1日以前
2級建築施工管理技士は、一次検定の受験に関しては年齢以外の制限はありません。満17歳以上であれば経験等は問われず誰でも受験が可能です。
二次検定になると、受験するには実務経験が必要となります。建築士や1級建築施工管理技術士の試験に合格していない限り、多くの人は表①の経験を積むことになります。
2級建築施工管理技士の資格を取得するのにもっともオーソドックスなステップは下記の通りとなります。
一次検定を受験→実務経験を3年以上積む→二次検定を受験→資格取得!
資格を取得するまでに3年以上の時間がかかるということをしっかり把握しておきましょう。
【1級建築施工管理技士】
一次検定 | 二次検定(2024年改正の新受験資格) | |
1級建築施工管理技士 | 試験実施年度に 満19歳以上となる者 * | 【区分1】1級第一次検定合格者 ①1級建築第一次検定合格後、実務経験5年以上 ②1級建築第一次検定合格後、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 ③1級建築第一次検定合格後、監理技術者補佐 (※2) としての実務経験1年以上 【区分2】1級第一次検定、および2級第二次検定合格者 (※3) ①2級建築第二次検定合格後 (※3)、実務経験5年以上 ②2級建築第二次検定合格後 (※3)、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 【区分3】1級第一次検定受検予定、および2級第二次検定合格者 (※3) ①2級建築第二次検定合格後 (※3)、実務経験5年以上 ②2級建築第二次検定合格後 (※3)、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 【区分4】一級建築士試験合格者 ①一級建築士試験合格後、実務経験5年以上 ②一級建築士試験合格後、特定実務経験 (※1) 1年以上を含む実務経験3年以上 |
*令和6年度に申請する場合、生年月日が平成18年4月1日以前
※1 建設業法の適用を受ける請負金額4,500万円(建築一式工事については7,000万円)以上の建設工事であって、監理技術者・主任技術者(いずれも実務経験対象となる建設工事の種類に対応した監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下、または自ら監理技術者若しくは主任技術者として行った施工管理の実務経験を指します。
※2 建設業法第26条第3項に定める監理技術者を補佐する者のことを指します。
※3 旧2級施工管理技術検定実地試験合格者を含み、種別(建築・躯体・仕上げ)を問いません。
1級建築施工管理技士も、一次検定の受験に関しては年齢以外の制限はありません。満19歳以上であれば経験は問われず誰でも受験可能です。なお、2級よりも年齢下限が2歳引きあがっているため、その点は把握しておきましょう。
二次検定になると、受験するには実務経験が必要となります。実務経験の必要年数は工事によって異なりますが、資格を取得するまでに1年~5年以上の実務経験が必要となります。
※ 過去に一次検定を受けて合格済みの方など特定の経歴を持つ方は、旧受験資格でも受験が可能です。旧受験資格については公式サイトをご確認ください。
合格基準
一次検定 | 二次検定 | |
2級建築施工管理技士 | 60%以上 | 60%以上 |
1級建築施工管理技士 | 全体:60%以上 施工管理法(応用能力):60%以上 | 60%以上 |
※ 試験の実施状況等を踏まえ、変更する可能性があります。
建築施工管理技士の合格基準は一次検定・二次検定ともに「満点に対する得点の比率が60%以上」です(2級・1級共通)。
しかしながら、公式サイトに「試験の実施状況等を踏まえ、変更する可能性があります」との記載もあるため、合格基準が前後する可能性もあることは考慮しておきましょう。
【級別】合格率推移・1級と2級の難易度比較
建築施工管理技士の資格取得難易度について解説します。過去の試験の合格率推移から試験状況を知りましょう。
級別の合格率推移
【2級建築施工管理技士】
2級建築施工管理技士の平均合格率は、一次検定で38.1%、二次検定で40.3%です。一次検定・二次検定のどちらも合格率が50%を切っているため、ストレートで合格するには難易度の高い試験であると言えます。
2級の二次検定は、建築/躯体/仕上げの3分野から1つ選択しての受験となるため、各合格率も算出しています。例年、建築分野は比較的合格率が高い傾向です。
年ごとに合格率にばらつきがありますが、近年では合格率が上昇傾向にあります。
【1級建築施工管理技士】
1級建築施工管理技士の平均合格率は、一次検定で44.1%、二次検定で46.2%です。2級と同じく、一次検定・二次検定のどちらも合格率が50%を切っており難易度の高い試験です。
1級と2級の難易度比較
試験の合格率に関して言えば、1級と2級の合格率にそこまで差はありません。むしろ、近年では2級建築施工管理技士のほうが合格率は低めです。しかし、1級はより専門的な知識が求められることや、二次検定の受験資格に必要な実務経験が1年~5年と長い期間を要するため、資格取得の難易度は1級のほうが高いと言えるでしょう。
1級建築施工管理技士の資格取得を目標にする場合も、まずは2級の合格を途中目標にし、実務経験を積みながら1級合格への道をコツコツと進めていくことをおすすめします。
建築施工管理技士に合格するためのコツ
建築施工管理技士の資格取得を目指す方向けに勉強方法をまとめました。
合格するための勉強方法
建築施工管理技士の資格取得に向けたおすすめの勉強方法は資格テキスト+過去問演習です。
基本的な勉強プロセス:テキストで勉強→過去問演習→つまずいた問題をテキストで復習
資格のテキストには、問題の考え方や解説が載っています。まずはテキストで勉強し、各問題への理解を深めましょう。一通りテキストが理解出来たと思ったら、ひたすら過去問を解いていくのがおすすめです。過去問を解いている途中でつまずく問題があれば、テキストの解説に戻り復習しましょう。
試験が近くなったら合格ライン60%を意識!
試験が近くなったら、過去問を試験時間内に全て解けるかと合格ラインである60%を超えているかを意識しましょう。何年分かの過去問で、安定して合格率が60%を超えるようになれば、合格は目の前です。
まずは一次試験に集中!
試験のテキストは、一次検定用と二次検定用で分かれているものも多いです。二次検定が受験できるようになるのは実務経験を積んだ後なので、特に建設業界に入職したての人であればいきなり二次検定まで対策する必要はありません。まずは一次検定用のテキストのみ購入しましょう。
勉強スケジュールの立て方
建築施工管理技士の資格取得に必要な勉強時間について調べると、かなり個人差があることがわかります。
・2級建築施工管理技士:50時間~200時間
・1級建築施工管理技士:100時間~300時間
※ 一次試験・二次試験それぞれにかかる時間
必要な勉強時間は、個々人の能力や出身学科等によって必要時間にばらつきがありますが、1日1時間勉強すると仮定した場合、2級なら試験の2ヶ月~7ヶ月前、1級では4ヶ月~10ヶ月くらい前から勉強をスタートする必要があります。
試験勉強中には思わぬ苦手分野でつまずいたり、学業や仕事が忙しく勉強時間が取れなくなることも想定されます。勉強は余裕を持ち、計画的に進めましょう。
受験に失敗しないためのポイント
建築施工管理技士の受験に失敗しないためのポイントは、大きく分けて2つあります。
① 勉強時間から逆算して試験の受験年度を決める
例年、一次検定の申し込みから試験当日までの期間は4~5ヶ月程です。前の項目でもご紹介していますが、試験合格には2級で50時間~200時間、1級では100時間~300時間ほどの勉強時間を確保する必要があると言われています。つまり、その年度の試験に申し込んでから勉強を開始した場合、十分な勉強時間が確保できない可能性があります。
試験に落ちてしまったとしても、雰囲気をつかんでまた来年にチャレンジすればいいという考え方もありますが、受験料がもったいないという方や絶対にストレート合格をしたいという方は申し込みを翌年にずらすことを検討してもいいでしょう。
② 試験までのモチベーション維持の方法を考える
建築施工管理技士は必要な勉強時間が長いため、毎日コツコツと勉強を続けることが求められます。試験まで余裕をもって勉強時間を設定した場合、逆に途中でモチベーションが維持できなくなり、勉強をサボったり、集中できなくなってしまうこともあります。
職場やSNS上で建築施工管理技士の受験仲間を見つけたり、同じく何か資格取得に向けて頑張っている友人の話を聞いてみるなど、モチベーションを維持できる方法を見つけることも受験に失敗しないためのポイントです。
【体験談】建築施工管理技士に受かった人の声
建築施工管理技士に受かった人の声を集め、受験勉強やモチベーション維持に生かせるポイントをまとめました。これから受験を考えている人は、ぜひ先輩の声を参考にしてみてください。
2級建築施工管理技士 合格体験者の声
・暗記カードをつくって勉強した。自分で作ると覚えやすい。
・朝、現場に行く前に早起きして勉強した。帰宅後もたまに勉強。
・飲み会やマージャンの誘いを断って夜は勉強。時間は作れる。
・集中してストレート合格!気持ちいい!
・毎月の資格手当が支給されるようになる。頑張ってよかった。
1級建築施工管理技士 合格体験者の声
・高卒だけどなんとかなった。勉強は大変だったけど、合格できてうれしい!
・受かるまでに何年もかかった…。
・テキストの勉強に飽きたときは、YouTubeで勉強の解説をしているチャンネルを見てた。
・受かったら会社から合格金が支給された!頑張ってよかった!
・資格を持っていると、50歳を過ぎても求人サイトからスカウトが来る。
※ 合格体験談はSNSの投稿から要点を抜粋し作成しています。
【2024年版】受験申し込みから試験日当日までの流れ
【2級建築施工管理技士】
受検申請区分 | 申請受付期間 | 試験日 | 合格発表 | |
前期 | 一次のみ (※) | 2月9日(金)~ 3月8日(金)まで | 6月9日(日) | 7月10日(水) |
後期 | 一次のみ 一次・二次同時 二次のみ | ネット申請 6月26日(水)~ 書面申請 7月10日(水)~ ネット・書面ともに 7月24日(水)まで | 11月24日(日) | 第一次検定 1月10日(金) 第二次検定 2月7日(金) |
※前期日程において、第二次検定の実施はありません。
【1級建築施工管理技士】
申請受付期間 | 試験日 | 合格発表 | |
第一次検定 | 2月22日(木)~ 3月8日(金) 第一次検定のみ新規受検に限り 4月5日(金)まで (※1) | 7月21日(日) | 8月23日(金) |
第二次検定 | 同上 (※2) | 10月20日(日) | 2025年1月10日 |
※1 ネット申請のみ。インターネット環境がない方は、必ず3月8日までにご相談ください。
※2 第一次検定の合格を確認してから、同年の第二次検定へ受検申請をすることはできません。
2024年の建築施工管理技士申し込みスケジュールは表の通りです。
試験の申し込みから試験日までは4~5ヶ月の期間しかありませんので、受験を決めたその年の最短日程で申し込むのか、次のタイミングで申し込むのかは確保できる勉強時間から逆算して考えましょう。
なお、試験会場は、札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄の10都道府県から選択が可能です(2級建築施工管理技士の後期試験に関しては、上記10都道府県に加え青森・金沢・鹿児島の3県+学校申請者向けに追加で8試験地が設置されます)。上記以外の地域に住んでいる方は、公共交通機関での移動時間や前日の宿泊等も検討する必要があります。
試験の申し込み手順や受験にかかる料金が知りたい方は以下の記事もご覧ください!
資格の活用方法
建築施工管理技士の資格取得後に期待できるキャリアや評価についてまとめました。資格取得が自身の望む成長につながるか、確認しておきましょう。
資格取得後に期待できるキャリア
建築施工管理技士の資格取得後のキャリアとして期待できることは、主任技術者や監理技術者(1級のみ)のポジションで活躍できることです。
主任技術者、監理技術者が行う仕事の例は、表の通りです。
元請の主任技術者及び監理技術者 | 下請の主任技術者 | |
役割 | 請け負った建設工事全体の統括的施工管理 | 請け負った範囲の建設工事の施工管理 |
施工計画の 作成 | ・請け負った建設工事全体の施工計画書 等の作成 ・下請の作成した施工要領書等の確認 ・設計変更等に応じた施工計画書等の修 正 | ・元請が作成した施工計画書等に基づき、 請け負った範囲の建設工事に関する施工 要領書等の作成 ・元請等からの指示に応じた施工要領書等 の修正 |
工程管理 | ・請け負った建設工事全体の進捗確認 ・下請間の工程調整 ・工程会議等の開催、参加、巡回 | ・請け負った範囲の建設工事の進捗確認 ・工程会議等への参加 |
品質管理 | ・請け負った建設工事全体に関する下請 からの施工報告の確認、必要に応じた立 ち会い確認、事後確認等の実地の確認 | ・請け負った範囲の建設工事に関する立ち 会い確認(原則) ・元請(上位下請)への施工報告 |
技術的指導 | ・請け負った建設工事全体における主任 技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確 認 ・現場作業に係る実地の総括的技術指導 | ・請け負った範囲の建設工事に関する作業 員の配置等法令遵守の確認 ・現場作業に係る実地の技術指導 |
建設工事の施工計画の作成や工程管理、品質管理、また施工従事者への技術上の指導監督など、いわゆる施工管理の仕事に、現場の代表として従事できるのがこの資格を保有している人です。
主任技術者から始め、ゆくゆくは1級を取得し監理技術者としてのキャリアを積んでいけば、地域を代表するような大型建築物の工事をとりまとめることも可能です。
資格取得で給与・評価はどう変わる?
資格取得者に毎月手当を支給する「資格手当」の制度を設けている会社であれば、資格の取得後から所得のアップが見込めます。施工管理技士の資格手当額は会社によってまちまちですが、3,000円~30,000円程度の規模で支給している会社が多いでしょう。
また、資格取得によって主任技術者や監理技術者としての職務が務まるようになれば、それなりの給与アップが見込めるでしょう。転職市場でも資格保有者は重宝されるため、資格を持っていない人に比べてベースの給料が高めに設定される場合が多いです。
まとめ
建築施工管理技士の資格取得難易度から勉強方法、また資格取得後のキャリアについてご紹介しました。
施工管理技士の資格は建設現場に必ず必要な主任技術者になれる資格であることから、取得して損はない資格と言えます。ですが、資格の取得には実務経験が必要なため、取得までに時間のかかる資格でもあります。
資格取得までのスケジュールをきちんと立て、合格に向けてコツコツと頑張りましょう。
◆ 関連記事をチェック!
コメント