ミスマッチのない採用を行うために
出していた求人に面接の連絡が。応募者の情報を確認すると、どうやら電気工事の経験がある人みたい!
電気工事の経験者が自社に入ってきてくれるのはとても心強いですよね。
ただ、一口に「電気工事」といっても扱う分野が違えば素人同然になるのがこの業界。面接の際は、求職者が今までどんな仕事をしてきて、今後はどんなことをしたいのかをしっかりと理解する必要があります。さらに、自社の仕事内容や労働条件もしっかりと説明しておくことがミスマッチのない採用のため非常に大切です。
今回は面接する相手が電気工事業界の経験者だった場合に、面接で聞くといい質問集と、面接で話しておくべき情報についてお届けします!
「相手のことを知り、自社のことを知ってもらうためにはどうしたらいいの?」とお悩みの面接担当者様は、ぜひご覧ください!
※ 未経験者向けの面接対策を行いたい方は、下の記事をご覧ください!
まずは、経歴を聞く
まず知りたいのは「求職者が今までにどんな工事を行ってきたか」ということではないでしょうか?
特にチェックしたいポイントは、以下の4点です。
◆ 今まで扱ってきた工事の分野
配線工事・空調工事・LAN工事…など扱ってきた工事の種類についての確認です。また、「新築か改修か」「ビルか住宅か」でも作業内容が大きく変わりますので、建物の種類についても確認しましょう。
◆ 経験年数/職場でのポジション・職長経験の有無
工事の経験年数を聞きます。「空調工事は2年だけど計装工事は7年」など、扱ってきた年数が違う場合もありますので工事の分野ごとに確認しましょう。また、職長経験や現場管理経験の有無についても確認しておくと、自社でどのように活躍してもらえそうかイメージしやすくなります。
◆ 施工実績(必要があれば)
扱ってきた建物の規模感を把握するために、施工実績を聞くのも有効です。細かく知りたい場合は工事経歴書の準備をお願いするのもいいですが、現役の職人さんの中には書類の作成が苦手という方もいらっしゃるので、できる限り提出してもらう書類は少なめにしておきたいところです。
◆ 現場作業以外にしていたこと
電気工事の現場に出ていた人の中には、「作業をしつつCADで図面も書いていた」「施工管理の補助で見積もりを作っていた」「パソコンが得意でエクセルを使った作業を任されていた」など、工事の実作業以外に得意分野がある人もいます。特に小規模な会社であれば、こういったスキルは重宝されるのではないでしょうか。今後のポジションを考えるために、現場作業以外のスキルについても確認しておきましょう。
経歴を尋ねる際の想定問答集
「本日は来て下さってありがとうございます!早速面接を始めていきたいと思います」
―はい。よろしくお願いします。
「(履歴書を見ながら)◎◎さんは、現在は××電設工業様に在職中なんですね。現在はどんな工事をされているのでしょうか?」
―現在の会社では、新築住宅の配線工事を中心に行ってます。たまにビルやテナント、工場の改修工事の現場もあって、そこでは配線作業の他に空調工事も行っています。
「なるほど。そうすると、扱ってきたのは配線工事と空調工事ですね」
―はい。
「それぞれ何年くらい経験していますか?」
―配線は今の会社に入ってからずっとやっているので5年くらいです。空調も4年くらいやっていますが、空調工事は案件自体が少ないのでそれほどの件数はやっていないですね。家庭用のエアコンと、店舗用のマルチエアコンの取り付けくらいはできます。
「ありがとうございます。当社は空調工事が多いですが、慣れない部分は入社後に教えることができるので安心して頂ければと思います。職長経験や現場管理の経験はありますか?」
―いえ。ベテランが多かったので、僕はまだないですね。いずれは目指したいと思っているんですが…
「そうなんですね。当社は新卒で入ってくる見習いも多いので、現場に慣れたら彼らの指導役もお任せできますよ」
「現場作業以外に、任されていた作業はありますか?例えば図面を描くとか…」
―簡単な配線図ならCADで作ることができます。
「そうですか!当社でもぜひそのスキルを活かしてもらいたいですね!」
ポイント
求職者は何ができて、何ができないのかを明確にすることが大切です。できることは自社でも活かしてもらえるか、できないことは入社後に教えられる体制が整っているか?ということを考えながら話をしてください。
志望動機を聞く
次に聞きたいのは、電気工事のキャリアを積んできた求職者が、なぜ転職したいと思ったのか?という点です。
求職者に質問したいことは以下の2点です。
◆ 現職/前職の電気工事会社を辞める理由
◆ 数ある電気工事会社の中から、御社を志望した理由
ここで確認すべき最も重要なことは「求職者が現職/前職の電気工事会社で抱えた不満を、自社でなら解決することができるのか?」という点です。
求職者の不満を解決できる体制が整っていなければ、採用しても早期離職に繋がってしまいます。「辞める理由」は求職者にとっては少々話しにくいことでもありますので、言葉を選びつつ本音を聞き出しましょう。
志望動機の想定問答集
「◎◎さんは、どうして当社の求人に興味を持ってくれたのですか?」
―はい。実は現職で年功序列の評価に悩むことが多く、同世代の仲間と働きたいと思って転職先を探しています。御社の求人に「若手が沢山活躍している」ということが書いてあり、同世代と切磋琢磨しながら働きたいと思い御社を志望しました。
「そうでしたか。年功序列の評価で悩むとは、具体的にどんなことですか?」
―僕以外が50代、60代の職人さんばっかりなので、いつまでたっても下っ端扱いが多いというか。自分としては将来職長・現場管理とステップアップしていきたいのですが、どうしても先輩を越えてそういったポジションになることができそうにないんです。若いうちにいろいろ経験しないともったいないという焦りがあって、このままでいいのだろうかと悩んでいます。
「よくわかりました。◎◎さんはまだ28歳ですから、そういった環境だとなかなかステップアップしていくことは難しそうですね。当社は平均年齢が30歳なので、◎◎さんと同世代の方もたくさんいます。いい意味で実力主義なので、年齢が若いから職長になれないとか、入ったばかりだから下っ端扱いだとか、そういうこともありませんよ」
―それはとても魅力的ですね!
ポイント
“どうして今の会社を辞めたいの?”と率直に聞かれても、求職者はなかなか本音が言い出しにくいものです。「どうしてウチの会社に興味を持ってくれたの?」というように、やわらかい言葉を使って徐々に話を掘り下げていった方が相手の本音を引き出せます。また、相手が魅力に感じてくれたことにズレはないか、前の職場で抱えた不満を再度自社で与えてしまわないかということはきちんと確認しておきましょう。「前職/現職では不満だったことが、当社なら解決できます!」という結論に持っていく事ができると、求職者から好印象を持ってもらうことができます!
仕事内容のすり合わせ
求職者について知りたいことを聞き終わったら、会社から求職者へ仕事内容を説明する時間を設けるようにして下さい。電気工事の経験者は少なからず「前の会社はこうだった」という前提のもとで入社後のイメージを想像しています。
前職と同じようにできることや、できないことを面接時にきちんと理解してもらうことが、採用後のミスマッチを防ぎます。
特に説明しておきたいポイントは、以下の3点です。
◆ 仕事内容の詳細
◆ 現場のエリア・集合時間・直行直帰は可能か
◆ 現場での作業内容・現場以外の事務作業などの有無
仕事内容の説明例
「では、ここからは仕事内容について私から少し説明させていただきますね」
―お願いします。
「求人票にも書きましたが、当社は空調工事を中心に、配線工事や照明の取り付けなども依頼があれば行っています。現場は住宅、ビル、工場など色々ありますが、最近は工場の依頼が多いですね。工場の場合は、業務用のパッケージエアコンの改修がメインです。◎◎さんは、パッケージエアコンの工事のご経験はないですか?」
―そうですね。住宅と、店舗用のマルチエアコンくらいしか…
「当社としては入社後に覚えてもらえれば大丈夫だと思っていますが、空調工事がメインになるのはいかがですか?」
―はい。僕としても空調工事は覚えていきたいと思っていたので、大丈夫です。
「それならよかったです。また、工場の工事はまれに夜勤があって大体月に1度くらいは夜勤に入ってもらうこともありますが、それはいかがでしょうか?」
―問題ありません。
「わかりました。次に現場ですが、今は県南の工業地帯が多いですね。基本的には県内の現場ですが、年に数回は他県へいくこともあって、まれに泊まりになることもあります。現場が遠い時は直行直帰で、近ければ朝8時くらいに事務所に集合して社用車で現場に向かいます」
―はい。今の会社とそれほど変わらないので、問題ありません。
「現場作業がない日は、パソコンで図面を書いてもらうこともあります。繁忙期は基本的に現場に出っぱなしですが、閑散期は午前中に事務所作業で午後に現場という日もあります」
―わかりました。
「まずは現場作業に慣れてもらって、将来的には◎◎さんが希望している現場管理へのステップアップも目指せます。◎◎さんと同じくらいの歳で入社した社員も、5年勤めて今は現場管理をしていますよ」
―そうなんですね!
ポイント
仕事内容について詳細を説明するのはもちろんですが、それ以外に忘れてはいけないのが「作業の時間や作業開始前の移動について」「事務作業など現場以外での仕事について」です。「思ったより拘束時間が長い」「想定していなかった事務作業を任される」など「こんなはずではなかった!」ということがあると求職者の早期離職に繋がりかねません。面接ではいいことばかりを説明してしまいがちですが、きちんと会社の実情を把握してもらうようにしましょう。
労働条件のすり合わせ
次に、労働条件についても説明していきます。求人票にきちんと書いたつもりでも、求職者が見落としていたり、内容について誤解をしている場合がありますので求人票を読み合わせるようなイメージで条件を確認していきましょう。
特に確認しておきたいポイントは、以下の2点です。
◆ お給料の額/賞与・昇給のタイミング
◆ 各種手当について(残業代は出るか、持っている資格に手当は付くかなど)
労働条件の説明例
「次は、労働条件について再確認をさせて下さい」
―はい。
「基本給は求人票の通り、25万円~35万円の間で決定します。試用期間が3ヶ月ありまして、そのあいだは手当がつきません」
―わかりました。
「賞与は基本的に年2回出ます。会社の売り上げと、個人の頑張りで金額は変わりますね。昇給は年に1回の定期昇給がある他に、現場での頑張りを見て随時上がることもあります。半年前に入社した社員も、入社5ヶ月で給料が1万円アップしていました」
―そうなんですね!
「頑張ればお給料は上がりますよ!次に、手当についてですが、試用期間の3ヶ月後から支給されます。◎◎さんは2種電工を持っているので、毎月資格手当が5千円つきます。1種をとれば、1万円つくようになるのでそれを目指しても良いかもしれませんね」
―はい!
「それから、残業代についてですが、当社はいわゆる“みなし残業制”を取っていまして、20時間までの残業代は元々の給与に込みになっています。残業は月に10時間ほどなので、20時間を超えることはあまりないですが、もし超えた場合の残業代はお支払いします」
―わかりました。
ポイント
同業他社からの転職者は、お給料にシビアです。基本給のほかに、手当や残業代でどれくらいもらえるのか?というイメージが実際の収入と離れていると求職者の不満につながります。もらえるお金、もらえないお金の認識をきちんとすり合わせておきましょう。労働条件がなかなか求職者と折り合いがつかない場合は、求人票の表記を見直す必要があります。プロのアドバイスを元に掲載できる電気設備業界専門の求人サイトの利用もご検討ください。
そのほか、疑問点の解消
ある程度求職者の情報を聞き、会社のことも話し終えたら、お互いに気になることについて確認するようにしましょう。「今まで話したことでも、他のことでも何でも質問してください!」というように、オープンな姿勢を心掛け、求職者の疑問を解消しましょう。
企業から求職者への質問例
―現職でのお給料はどれくらいでしたか?
―当社の働き方や評価制度の中で、なにか疑問に思うことはありますか?
―選考結果は1週間ほどでお出ししますが、現職は忙しいですか?もし入社してくれるとしたら何月くらいから働けそうですか?
求職者から企業への質問例
―結婚して家庭を持つことを考えているのですが、子どもの行事などの際に休みを取っている人はいますか?
―休日出勤はけっこうありますか?
―働いている社員さんたちは仲がいいですか?
まとめ:優秀な人材確保のため相互理解を
面接というと「相手のことを知る」という意識が強くなりがちですが、実際には相手のことを知り、会社のことも知ってもらうための場です。特に電気工事の経験者の場合「前の会社とどう違うのか」ということをしっかりと理解してもらうことが大切です。良い出会いにつながるよう相互理解を深めましょう!
この記事が、面接についてお悩みの方にとってお役にたてば幸いです!
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