社労士へのお悩み相談
会社を運営していると、様々な悩みに直面することがあります。そこで、中小企業、特に建設業で働く経営者様、労務担当者様向けに、気になるギモンを解決するための社労士さんへの相談コーナーを開設しました。
今回は第五回目。テーマは雇用契約の条件「試用期間」です。
そもそも試用期間とはどのような制度で何ができるのかなど、いまいち掴みにくい「試用期間」という制度について解説します。
【お悩み】試用期間中にできることとは
近々法人化し社員採用を考えているのですが、試用期間という制度についてイマイチ理解ができません。職人の場合、一人前になるまでは試用期間にしていいのでしょうか。試用期間中は給料も低めに抑えておきたいです。また、試用期間だと会社に合わないと感じたときに解雇しやすいと聞きましたが本当でしょうか。試用期間だからできることについて教えていただきたいです(20代・一人親方)
試用期間とはなにか
―(波多野)まずは試用期間という制度がなんのために設けられているのかについてご説明します。
試用期間とは、簡単に言ってしまえば「見習い期間」や「テスト期間」というイメージでよいと思います。
多くの企業では、本採用前に人物や能力を評価するための期間として設定しています。
この期間に採用前の面接や履歴書、職務経歴書ではわからない資質や能力、勤務態度を把握し、会社で本採用できる人物かどうか判断することとなります。
編集部補足(電工の試用期間は何ヶ月にするべき?)
試用期間を設ける場合、あらかじめ求人票や雇用契約書に試用期間の有無と期間を記載しておく必要があります。
弊社姉妹サイト 工事士.comにて電気工事士募集の求人を調べたところ、試用期間の長さでもっとも多くの会社が採用しているのは「3ヶ月」です。試用期間の長さに法的な決まりはありませんが、あまり長すぎると求職者が不安に思い、採用に支障が出る可能性もあるので、もしもこれから人材募集をお考えなら試用期間は3ヶ月以内にするのがいいでしょう。
「職人として一人前になるまでは試用期間」という考え方ではなく、試用期間はあくまで素質の判断期間で、試用期間が終わり本採用になった後も一人前になるまで力をつけていってもらうというようなイメージです。
試用期間中の社員と正社員の違い
―(編集部)試用期間の社員と本採用となった社員の法的なあつかいに違いがあれば教えてください。
―(波多野)大きな違いは、試用期間中、本採用に適さないと判断された場合には解雇することができるといった要素をもつ期間であるということです。
本採用されないということは、つまり、解雇されてしまうことを意味するので、通常の解雇よりも試用期間中に基づく解雇のほうが広い範囲で解雇の自由が認められていると考えられます。
したがって、試用期間中の社員よりも本採用後の社員の方が解雇するのはより難しいと言えるでしょう。
試用期間内なら簡単に解雇できる?
―(編集部)試用期間満了までに会社に合わない部分が見つかった場合、簡単に解雇ができるということでしょうか。
―(波多野)試用期間満了までだからといって、簡単に解雇はできません。
あくまでも解雇であるため、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められないと解雇ができないとされています。
合理的な根拠を示し、誰もが本採用できないと言えるだけの理由が必要になるかと思います。
個別のケースによって司法判断が必要なため「こういう場合なら解雇してよい」と一概に言うことはできないのですが、見習いだからといって安易に解雇することはできないということは覚えておいてください。
―(編集部)「なんとなく合わない」ではなく、誰が見ても「本採用に値しない」という明確な理由が必要なのですね。
はい。また、少なくても採用時、試用期間中に労働者に望むことや本採用するための基準を明確に伝えておくことは必要だと考えます。
試用期間中の待遇変更
―(編集部)質問にあった「試用期間中給与を低めに抑えておきたい」というのは可能でしょうか。
―(波多野)可能です。試用期間中、給与や休日数を本採用後の待遇とは別に設定することができます。ただし、試用期間中の労働条件が本採用時の労働条件と異なる場合には、必ず事前に伝えておく必要があります。
監修協力
【プロフィール】 社会保険労務士法人エンチカ 波多野代表
株式会社フルキャストホールディングスに入社し、社会保険労務士資格取得後、人事領域の業務に従事。責任者として人事制度構築、労働組合対応、リストラクチャリングなど人事領域の幅広い業務を担当し、2013年に社会保険労務士として独立。4年間の個人事業主を経て、社会保険労務士法人エンチカを創業。
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