2024年の調査では、建設業の残業時間は月間平均12.7時間です。
この記事では、
などについて解説しています。
データで見る建設業の残業時間

まずは建設業の残業実態を知りましょう。
平均残業時間の推移や、他業種との比較をご紹介します。
【5年分】建設業の残業時間平均
建設業の1ヶ月当たりの残業時間平均を年度ごとにまとめました。
参考に、平均出勤日数、総労働時間についてもご紹介しています。
総実労働時間 | 所定内労働時間 | 所定外労働時間(残業時間) | 出勤日数(日) | |
2024年 | 161.5 | 148.8 | 12.7 | 19.8 |
2023年 | 164.4 | 150.7 | 13.7 | 20.1 |
2022年 | 163.5 | 149.7 | 13.7 | 20.1 |
2021年 | 165.3 | 151.5 | 13.8 | 20.0 |
2020年 | 165.4 | 151.9 | 13.5 | 20.3 |
情報出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査(令和2年~令和6年速報)
最新である2024年の調査では、建設業の平均残業時間は月12.7時間です。
平均の月間出勤日数は19.8日ですので、1日あたりの平均残業時間は40分程度ということになります。
本調査は、事業所規模5人以上の企業が対象です。大手企業が含まれ、小規模企業は除外された調査なので、データが現場の実態とややずれる可能性はありますが、建設業という大枠において労働環境がどのように推移しているのかを確認することができます。
建設業の労働時間は減少傾向
建設業の残業時間は、2020年~2023年の間ではほぼ変化がありませんでした。しかし、2024年には昨年比で月に1時間ほど残業時間が減っています。
また、残業時間だけでなく所定内労働時間、出勤日数も減少傾向がみられます。これは、働き方改革による週休2日の推奨や、残業時間の上限規制によって業務の効率化が進んだ結果であることが予測されます。
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建設業の残業時間は長い?他業種との比較
建設業の残業時間を、他の代表的な業種と比較しまとめました。
総実労働時間 | 所定内労働時間 | 所定外労働時間(残業時間) | 出勤日数(日) | |
建設業 | 161.5 | 148.8 | 12.7 | 19.8 |
調査産業計* | 136.9 | 126.9 | 10.0 | 17.7 |
製造業 | 156.4 | 143.2 | 13.2 | 18.9 |
運輸業・郵便業 | 165.8 | 144.1 | 21.7 | 19.4 |
飲食サービス業 | 88.6 | 83.4 | 5.2 | 13.5 |
医療福祉 | 129.8 | 124.8 | 5.0 | 17.5 |
情報出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査
建設業の残業時間は、平均よりも2.7時間長いです。
また、出勤日数、所定内労働時間、総実労働時間ともに平均を上回っています。
建設業の労働時間は減少傾向にありますが、他業界と比べるとまだまだ労働時間が長めであるのが実態です。
建設業の残業時間が長い理由とは?業界特有の課題

建設業の労働時間が長いのには、どのような原因があるのでしょうか。まとめて解説します。
人手不足がもたらす長時間労働
建設業は、慢性的な人手不足が続いています。
人手が足りないため、1人あたりの負担が大きくなり、長時間労働につながっています。
複数の企業と関わり合い工事を進める場合、自社のリソースに合わせて工期を決定することが難しく、結果として工期に間に合わせるために勤務日数や残業時間が伸びてしまいます。
自社のみで施工を行う場合でも、顧客の都合に合わせる必要があることや、取り扱う工事によっては繁忙期と閑散期の差が激しく、バランスの良い業務調整が難しいことなどから、長時間労働が起こりやすくなります。人手不足でお悩みの企業様は、業界に特化した求人サイト、工事士.comへぜひご相談ください。
工期内でトラブルが起こっても延長できない
建設現場には工期が設定されていますが、作業はいつでも計画通りに進むとは限りません。
施工を行う他社との調整や天候・自然災害による工事の延期など、自社の工夫だけでは解決できない問題がイレギュラーに発生します。
しかし、工期を延長するとその分人件費等の費用が発生するため、なんとかして工期に間に合わせようという圧力がかかります。
結果、作業の遅れをとり戻すために残業が発生します。
休日数確保による平日負担の増加
昭和の時代から平成初期にかけての建設業は、週休1日の企業が多くありました。昨今では週休2日推進により、建設業の休日数は増加傾向にあります。
しかし、これまでの仕事量をこなし休みを増やすには、人員の増加が必須です。
人員確保がうまくいかない場合や離職が続いた場合、平日に残業をして休日の埋め合わせを行う必要があり、残業時間の増加につながります。
残業時間の上限規制とは?

2024年4月から建設業でも適用されるようになった、残業時間の上限規制について解説します。
【2024年4月~】残業時間の上限規制ルール
働き方改革に関する法改正により、建設業でも2024年4月1日より残業時間の上限規制が始まりました。
基本的なルールは、以下の通りです。
・残業時間は原則月45時間、年間360時間を上限とする
・特別条項付き36協定を結んでいる場合、残業時間は「複数月平均80時間、月100時間未満、年間720時間以内」といった上限が設けられる
・違反した場合、罰則が科される恐れがある
次の項目から、詳しく解説します。
法改正の流れ
労働時間は、1日8時間・1週間に40時間を上限として設定されています。
上記の労働時間を超えて労働者を働かせる場合は、「36協定(サブロク協定)」の締結が必要となります。
36協定を結んでいる場合、時間外労働(残業)が可能となり、1ヶ月45時間、1年間360時間までは残業ができます。
2024年4月以前、建設業は上記の上限規制の適用外とされていましたが、現在では建設業にも上限が定められ、時間外労働の上限が原則として月45時間・年360時間となっています。
特別条項付きの36協定の場合
特別条項付きの36協定を結んだ場合は、45時間を超える残業時間で労働をさせることが可能です。
特別条項付き36協定を結んでいる場合、残業時間は「月100時間未満(時間外労働と休日労働の合計)、年間720時間以内」が上限となります。
さらに、時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内となる必要があるほか、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までという規制も設けられています。
違反時の罰則
残業時間の上限規制は、違反時に罰則規定が設けられています。
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため、法律は遵守しましょう。
残業時間を削減するメリットと成功事例

企業向けに、残業時間を削減するメリットと具体的な方法を解説していきます。
残業時間を削減するメリット
残業時間を削減するメリットは、以下の3つです。
・労働生産性の向上
・コストの削減
・人材確保と離職率の低下
各項目について解説します。
労働生産性の向上
残業を前提として働いていると、所定労働時間内の作業効率も下がります。残業をしなくても間に合う業務計画を設計することで、社員一人ひとりの集中力が増し、生産性の高い企業へと成長できます。
コストの削減
残業時間が長いと、社員に支払う残業代のコストが増えるほか、事務所で使用する電気代等の固定費用も増加します。
また、長時間残業は離職を招くため、採用活動に余計な時間や費用を割くことにもつながります。時間通りに帰宅できる環境を整えることで、会社のコスト削減になります。
人材確保と離職率の低下
長時間残業は、社員の満足度を下げる原因になります。残業時間を減らすことは、今いる社員の離職防止につながり、人材の長期的な確保に効果的です。
十分な人材が確保できていれば、さらに1人当たりの負担を減らせるため、好循環につながります。
このように、人材確保は企業・働き手の双方にとって大きなメリットをもたらします。人手不足を感じている方は、業界に特化した求人サイト、工事士.comへぜひご相談ください。
建設業で残業時間を削減するためのアイデア
建設業で残業時間を削減するためのアイディアをご紹介します。
業務のデジタル化・ICT化
業務のデジタル化を進めると、作業効率が上がり残業の削減につながります。
具体的な例は以下の通りです。
・施工管理アプリを導入し、現場での報告・確認作業を簡略化。
・ドローンや3D測量技術を導入し、測量・進捗確認の作業を効率化。
・クラウドサービスを活用し、設計・施工のデータ共有をスムーズに。
デジタル化は、サービスの選定や導入時に操作を覚えるのに時間がかかりますが、慣れてしまえば業務を一気に効率化することができます。
工程管理の見直しと適切な業務割り振り
工期の無理な圧縮を避けるため、業務を適切に割り振ることも効果的です。
具体的な例は以下の通りです。
・作業の平準化・マニュアル化により、1人の社員に作業が集中しないようにする。
・分業体制を明確化し、1人に負担が集中しない仕組みを整える。
・工事に遅れが発生したら、都度作業計画を見直し、適切な業務割り振りを行う。
現場状況に応じて適切な人材配置、業務割り振りを行うことは、業務の効率化に欠かせません。
会議の削減・テレワークの導入
不要な会議は減らし、社員が集まる業務はオンラインサービスを利用することで現場作業の時間を確保することができます。
具体的な例は以下の通りです。
・会議の短縮/オンライン化:会議は必要以上に行わず、オンラインで参加できるようにする。
・現場への直行・直帰を推奨し、報告や日報等は電子提出へと変更。
・音声入力の活用やテンプレート整備により、報告書作成の時間を削減。
特に、現場で働く社員には会議や報告等に時間を多く使わせることなく、作業に集中できる環境を整えることが大切です。
ノー残業デーの設定や、「早く帰る文化」づくり
企業全体に「早く帰る文化」「残業をしない空気」を定着させることも大切です。
具体的な例は以下の通りです。
・「ノー残業デー」の設定で、定時退社を推奨。
・社内や現場内で、先輩社員による「残業しないで早く帰ろう」の声掛けを実施。
・業績評価を「労働時間の短縮」も考慮して実施し、長時間労働を前提としない評価基準を作る。
「長時間の労働よりも、短時間で品質の良い仕事を行うことが大事である」という文化を定着させ、評価するようにしましょう。
まとめ
建設業の残業時間平均と、残業時間が長い要因、残業時間を減らす工夫についてご紹介しました。
建設業は多くの企業と関わって働く分、残業時間を削減することが難しい業種です。
ですが、社内でできる対策を地道に実践していくことによって、少しずつでも労働環境を改善していくことが大切です。
残業時間の削減は、企業にとっても、大きなメリットをもたらします。
この記事の内容を、ぜひ自社の体制改善にお役立てください。
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