【社労士監修】職人を雇用後、見込んだ能力が無かったら減給できる?能力を適切に評価する方法は

会社づくり

職人の給料を決めるのは難しい

職人を採用する際に、面接のみで能力を測るのは難しいことです。

入社後に、「働きぶりを確認してみると想定したよりもできることが少なかった…」という話もよく聞きます。

社員を雇用した後、給料を下げることはできるのか?また、能力に見合った給料を決定するにはどうしたらいいかを解説していきます。

給料の減額は「不利益変更」に当たる

結論から言いますと、社員との労働契約の締結後に給料を減額することは難しいです。

その理由は、法律で従業員に不利益となる一方的な変更は基本的に認められないことが定められているためです。

労働契約法第八条には、以下のような条文があります。

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

労働契約法 第八条

給料を会社が一方的に減額することは、法律用語で「労働条件の不利益変更」に当たります。労働者にとっては不利益となるため、労働条件を変更する場合は、労働者の合意が必要とされているのです。

ちなみに、労働条件の不利益変更は給料を減額だけでなく、手当の減額等も該当します。労働者の同意なく、労働者にとって不利益が生じる変更を行うことは原則としてできませんので、十分にご注意ください。

職人の能力に見合った給料を決定する方法2つ

では、職人の能力に見合った給料を決定するにはどうしたらいいのでしょうか。考えられる方法は2つあります。

試用期間を設ける

職人の能力に見合った給料を決定するためには、「試用期間を設ける」という方法があります。試用期間とは、簡単に言うと入社した人を本採用にするか判断するお試し期間のことで、試用期間中の給料は本採用後よりも安く設定することが可能です。そのため試用期間の働きぶりを見たうえで適切な給料を決定することができます。

試用期間を設ける場合は、以下の条件を求人に明記しておく必要があります。

・試用期間が存在することおよび、試用期間が何ヶ月あるか

・試用期間中の給与額

以上の決まりを前提に、試用期間を設けた求人の記載例を見てみましょう。

◆ 試用期間中の給与と、本採用後の給与の記載例

月給:230,000円~30,000円(※経験・能力を考慮し決定します。)

試用期間:3ヶ月(月給230,000円)

この例では、職人の雇用開始後3ヶ月を試用期間として、3ヶ月間は月給23万円で働いてもらいます。

試用期間中に能力を見極め、試用期間後は23万円~30万円の中で給与を決定することができます。

なお、試用期間の長さに法的な決まりはありませんが、あまりに長すぎると求職者が不安に思い、採用に支障が出る可能性もあるので、試用期間は3ヶ月以内にするのがいいでしょう。また、試用期間中の給料を極端に低くすると能力のある職人からの応募が遠ざかってしまう可能性があるため、注意が必要です。

細かい昇給制度を設ける

給料を下げることは難しいですが、上げることは可能です。そのため、細かい昇給制度を設けることで、能力に見合った給料を設定することが可能です。

昇給は1年に1回のみ行っている会社も多いですが、昇給タイミングを複数回設定することも可能です。例えば年に4回昇給タイミングを設ければ、入社後の能力や、その後の成長に応じて柔軟に給料を見直すことができます。

なお、昇給の頻度についても求人票に記載する必要があります。回数を明記せず「随時」という記載も可能ですが、採用を成功させるという観点で言えば、具体的にどの程度の昇給チャンスがあるかは数字で示す方が説得力が生まれます。

◆ 昇給頻度と金額の記載例

①昇給:年4回(5,000円~10,000円)※ 能力を考慮し決定します。

②昇給:能力に応じて随時 ※ 1年で5万円昇給した前例あり

③昇給:年1回(前年度実績 3,000円~20,000/月)

後から給料を上げようとする場合、最初の給料がほかの求人と比べて見劣りし、採用が成功しにくいというデメリットが生まれます。「細かい昇給制度によって社員の能力を評価していく」ということが求人上で伝わるよう、前例前年度の実績を記載しておくなど、工夫が必要です。

監修協力

【プロフィール】 社会保険労務士法人エンチカ 波多野代表
株式会社フルキャストホールディングスに入社し、社会保険労務士資格取得後、人事領域の業務に従事。責任者として人事制度構築、労働組合対応、リストラクチャリングなど人事領域の幅広い業務を担当し、2013年に社会保険労務士として独立。4年間の個人事業主を経て、社会保険労務士法人エンチカを創業。

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