建設業界の離職率は平均よりも高く、「職人になったけど、すぐ辞めてしまった」という話をよく耳にします。
20代~30代の新米職人から50代のベテラン職人まで7名の方に「この会社はもうダメだ」「もう職人を辞めたい」と思った瞬間をリサーチしてきました。
この記事では、
などについてお伝えしていきます。
職人の 「もう辞めたい!」と思った瞬間7選
夢と希望を抱き、建設業界に入ったはずの職人。一体どんなことに失望し、「職人を辞めたい!」と思ってしまうのでしょうか。職人・元職人が語る、7つのインタビューをお届けします。
※ 本体験談は実際の職人の体験談をもとに、多くの方に伝わりやすいよう一部情報を編集してお届けしています。
ゼネコンの悪口ばかりの先輩職人に失望して会社を辞めた(Kさん・30代)
「最初は、ゼネコンの下請け会社に入社したんです。大きな建物を作りたいと思っていたからやる気も結構あったんですよね。でも、その会社は半年で辞めました。なんでかって言うと、先輩たちの人柄が尊敬できなくて…。
その会社の人たちって休憩中、元請けの人間や、現場監督の悪口ばっかり言うんです。もちろん自分にも不満はありましたけど、一緒に頑張っていくべき人たちなのにありえないなと思いました。悪口を言い合って、それで社内の仲は保たれてるのかもしれないけど、なんかダサいな、現場ってこんなもんかーと失望しました。
それで結局、別の建設会社に転職しました。今の会社はガンコな人も多いんですけど、仕事へのモチベーションは高くて、陰で悪口を言う人はいないです。もう7年勤めていますね。最初の会社にいたら自分もダサい人間になってたかもしれないと思うと、さっさと辞めてよかったと思います。同じ仕事でも、会社の雰囲気が合うかどうかで仕事へのモチベーションは大きく変わりますね」(Kさん・30代)
Kさんの体験談では、同じ会社で働く人の人柄が尊敬できなかったことが職人を辞めたいと感じたきっかけになっています。
Kさんは同業他社へ転職することで、よりよい働き方を実現できるようになりました。人間関係で悩んだら、思い切って同業他社へ転職するのも手です。
それ、パワハラです…先輩が怖くて職人を辞めることに(Sさん・20代)
「僕は1年経たずに電工を辞めてしまったので、根性がないって言われたらそれまでなんですけど…。
すごくよく覚えているのは、現場で先輩に質問をしに行った時に『そんなことも分からんのか!』って先輩に怒鳴られたんです。それだけならまだしも、手に持っていた工具を振りながら怒鳴ってくるから怖くて怖くて(笑)今は笑い話ですけど、しばらくはトラウマでした。
他にも、ヘルメットを被っているからって軽く殴られるとかもありました。冗談だったのかもしれないけど、今の感覚で言えばパワハラですよね。そういうのが続いて辞めちゃいました。
電工は憧れだったし、今でもものづくりは好きなんですけど、1人で気楽に仕事をしたいと思って、トラックの運転手に転職しました。新人さんには手を止めて、優しく教えてあげて欲しいなと思いますね」(Sさん・20代)
Sさんの体験談では、先輩に怒鳴られるなどのパワハラに該当しかねない行為が職人をやめたいと思ったきっかけになっています。
結果として、Sさんは、建設業界を離れてしまいました。パワハラの横行する環境で仕事をすることは大きなストレスとなります。環境の改善が望めないようであれば、転職したほうがいいでしょう。
休日の付き合いにウンザリで転職(Yさん・20代)
「もう辞めちゃった会社の話なんですけど。現場見学に行ったらみんな雰囲気がよくて、会社のホームページにも仲の良さそうな写真が沢山載ってて、『楽しそう』って思ってその会社に入りました。でも入って2ヶ月で超後悔することになりました。
なんでかって言うと、現場終わりや休みの日の付き合いが多すぎたんです。早上がりすればパチンコ、 週末は飲み会、 そのあとは行きたくもないスナックに強制連行…。休みの日、朝6時に車を出して海まで釣りに行くこともありましたね。
僕も付き合いが悪い方じゃないんですけど、あそこまで会社の人とベッタリなのはキツかったです。『みんな会社以外に友達いないのかな?』って感じで。でも仕事面では特に不満が無かったから、覚えることは覚えて、同業に転職しました」(Yさん・20代)
Yさんの体験談では、業務外での付き合いの多さが職人をやめたいと思ったきっかけになっています。
会社の雰囲気は、合う・合わないが人によって分かれます。人間関係で悩んだ場合は、職人そのものをやめてしまうのではなく、同業他社への転職がおすすめです。
入社して即、大赤字!?で職人を辞めたくなった(Mさん・30代)
「僕は長年フリーターをしていて、親戚の紹介で運よく今の会社に拾ってもらったんです。
『職人を目指すぞー!』って気合いを入れて入社したんですが『作業に使う工具は自分で買え』と言われて驚きました。当たり前のことなのかもしれないけど、知らなかったのでかなりキツかったです。貯金もないし、最初の給料が出るまでは親に泣きついてお金を借りました。就職しても親のスネをかじるというのは精神的にかなり辛かったです。
しばらくして『二種電工の資格を取れ!』って言われて、おそるおそる確認したらもちろん受験費用も自腹で…。試験代は会社が全額出してくれるところもあると聞くので「なんでウチは自腹なんだ!?」って不満でした。
今は稼げるようになったから良いですけど、若くてお金がない時に工具とか、試験代が自腹なのはキツいと思いますよ」(Mさん・30代)
Mさんの体験談では、仕事に必要な工具や資格試験の受験費用が自己負担であったことが職人を辞めたいと思ったきっかけになっています。
工具の貸し出しを行っている企業や、資格取得支援制度のある企業も多いので、入社前に確認しておくことがトラブル回避につながります。
作業車でアプリに夢中の先輩社員に失望(Rさん・50代)
「長いこと東京で職人をしていましたが、母親の具合が悪くなって地元に戻り、地元の工務店に入りました。
初めて行った現場で仕事をしてて、わかんないことがあったので聞こうと思って先輩社員を探したんです。でも探しても何処にもいなくって。あきらめて持ち場に戻るかーって歩いてたら、車の中でサボってたんですよ。スマホをいじってて、近づいたらアプリゲームをやってるのが見えて…何しに来てるんだ!?ってかなり腹が立ちましたね。
今はその社員はいなくなって、私はまだ働いていますが、あの時は現場のレベルが低くて失望しましたよ。サボりがまん延している会社では絶対に働きたくないですね!」(Rさん・50代)
Rさんの体験談では、先輩社員のやる気のなさに失望したことが職人を辞めたいと思ったきっかけになっています。
職人の仕事は周囲との協力が必要不可欠なため、社内の人間とモチベーションに差があると、ネガティブな気持ちになってしまいます。
資格をとったら嫉妬されて辞めたくなった(Oさん・50代)
「以前勤めていた会社の話です。そこには二種電工の資格だけ持って入社したんですけど、先輩に『二種しか持ってないなんてアホやなー 』 ってよく馬鹿にされました。
だから見返そうと思って、1年後には一種を取りました。そしたら、二種しか持ってない先輩が、僕のことを目の上のたんこぶみたいに扱い始めて…。後輩が自分より上の資格を取ったから気にいらなかったんでしょうね。
でも気にせず、興味があった別の資格にも挑戦しました。コツコツ勉強して、やっと合格したんですが、今度は社長まで『アイツはウチを踏み台にしてデカい会社に行こうとしてる』って僕のことを目の敵にしだしたんです。僕はただ電気の知識を増やしたかっただけだし、転職するどころかずっとこの会社でやってこうと思ったんですけど、悲しくて。『そんなに言うならもう辞めてやろう』って本当に辞めました。地元ではそれなりの会社でしたが、人間が最悪でしたね。今は別の会社で職人をしていますが、思い出すと腹が立ちます」(Oさん・50代)
Oさんの体験談では、自分の頑張りを正当に評価してもらえず、逆に悪い扱いを受けたことが職人を辞めたいと思ったきっかけになっています。
職人として頑張っていきたい気持ちがあるのであれば、努力を正当に評価してくれない会社に留まる必要はありません。別の会社への転職をおすすめします。
憧れの親方だったけどついていったら後悔…(Yさん・30代)
よく現場に応援に来てくれた一人親方がいたんです。仕事が早くて、明るいし、新人だった自分に教えてくれることもあって、正直会社の先輩よりも憧れていました。その後僕は別の会社で働いていたんですが、その一人親方が会社を立ち上げたってフェイスブックで知ったんです。お祝いのコメントをしたら飲みにいくことになって、そこで「自分の会社で働かないか」と誘われました。
その時の会社の給与に不満があったこともあって、すぐにOKしました。でも立ちあげたばかりの会社に入って即後悔して、辞めたいと思いました。
事務所には誰もいないから転送された電話で僕の携帯は鳴りっぱなしだし、現場の後に事務作業を手伝ったりもしないといけなくて…。その人は現場仕事は出来たけど会社経営は素人なんで、いろいろ不満が出てきました。給与が遅れたりすることもあって、耐えきれず辞めてしまいました。(Yさん・30代)
Yさんの体験談では、立ち上げたての会社に入社してことで作業負担が増えたことが職人を辞めたいと思ったきっかけになっています。
一緒に働く人の人柄が好きでも、会社の運営方針に不満があると続けられないことがあるのが、組織選びの難しさです。
職人を辞めるべきか迷ったときの対処法
「職人仕事が向いていないかもしれない」「職人を辞めたい」と考えるようになったときは、なぜそう思うのか原因を洗い出し、その原因に沿った対処を行っていきましょう。
ステップ①:辞めたい原因の洗い出し
まずは、「なぜ自分が職人を辞めたいと思っているのか」原因の洗い出しを行いましょう。
以下は辞めたい理由の例です。
・先輩社員からパワハラまがいの指導を受けるのが嫌で、辞めたい
・数年勤めても給料が低く、満足な生活ができないので、辞めたい
・資格を取得しても手当等で還元されず、適切な評価が受けられていないので、辞めたい
・毎日の作業にやりがいが持てず、他の仕事をしてみたいので、辞めたい
メモやノートに書きだし、マイナスの感情がどういった理由から湧いてきているのかを適切に把握することが問題解決につながります。
ステップ②:今の職場に勤めたまま原因を解決可能か考える
辞めたい原因を洗い出したら、次は今の職場に勤務したまま、その問題が解決できそうかどうかを考えます。
解決できそうな場合は、解決方法を実践します。
解決が難しいと判断した場合は、同業他社への転職か、異業種への転職のどちらで解決可能かを考えます。
・先輩社員からパワハラまがいの指導を受けるのが嫌で、辞めたい
→社長に相談することはできるが、小規模の企業なので配置転換が難しく解決が難しそう。人間関係の良い同業他社への転職で解決できる。
・数年勤めても給料が低く、満足な生活ができないので、辞めたい
→会社と交渉すれば、解決できる可能性がある。交渉が成功すれば会社に留まり、決裂すれば同業他社への転職で解決できる。
・資格を取得しても手当等で還元されず、適切な評価が受けられていないので、辞めたい
→会社に資格手当等の制度を提案することはできるが、時間がかかり短期解決は難しい。同業他社への転職で解決できる。
・毎日の作業にやりがいが持てず、他の仕事をしてみたいので、辞めたい
→建設業界に興味を失ったのであれば、解決は難しい。異業種への転職が必要。
「職人を辞めたい」と思っても、意外と今勤めている会社への交渉や、同業他社への転職で解決できることが多くあります。
職人というキャリアは、一生使える武器になります。異業種への転職を考える前に、自社への交渉や、同業他社への転職を検討し、職人を継続することをおすすめします。
ステップ③:これからの行動を計画し、実行する
ステップ①および②の作業で、「今の会社に残る」「同業他社へ転職する」「異業種へ転職する」のいずれかの結論が出せたら、これからの行動方針を計画し、実行に移します。
・今の会社に残る場合:辞めたいと思った原因を解消するため、会社への交渉を行う
・同業他社へ転職する場合:転職活動を開始する。その際、今の会社で職人を辞めたいと思った原因を強く意識し、同じ問題が起こらない企業選びをする
・異業種へ転職する場合:自分にあった業界を探し、転職活動を行う
どのような選択をした場合も、「職人を辞めたい」と思った原因を意識し、同じことが起こらないように行動していくことが大切です。
退職を伝える前に準備しておきたいこと
勤めている会社に退職を申し出る前に、準備しておくべきことをまとめました。
辞める理由や時期の伝え方を考えておく
退職を決めたら、会社への退職理由や、退職時期の伝え方を考えましょう。
多くの場合、退職の理由を聞かれるので、はっきりと答えられるよう準備しておくことが大切です。
退職理由は、言いにくいことであっても必要以上に気を遣って嘘をつく必要はありません。ですが、心象を悪くしないよう伝え方には気を付けましょう。
また、退職の申し出は、希望の退職時期の1ヶ月以上前に伝えるのが一般的です。業務の引継ぎ期間等も考慮し、余裕をもって伝えましょう。
転職先を見つけておく
退職よりも前に転職先から内定をもらっておくと、その後の生活も安心です。
引継ぎ期間や有休消化期間等を活用して、在職中に転職活動をスタートしておくのが理想的です。
失業期間が開いてしまう場合も、貯蓄や失業保険を利用しながら転職活動をすれば問題ありません。
最低2ヶ月分の生活費を貯めておく
次の転職先がスムーズに見つからない場合は、貯蓄や失業手当を活用しながら転職活動をすることになります。
自己都合退職の場合、失業手当を受け取れるのは、申し込み後、7日の待期期間と2ヶ月の給付制限期間を経た後となります。
そのため、最低でも2ヶ月間の生活費を自分の貯金から賄える状態にしておく必要があります。
また、失業手当を受給できる期間は、およそ3~4ヶ月間です(雇用保険の被保険者期間と年齢によって異なります)。
それまでには、次の転職先を見つけられるように行動しましょう。
職人を辞めたい人向けQ&A
職人を辞めたい人におすすめの情報をQ&A形式でまとめました。
職人を辞めたいときは誰に伝える?
退職を決断した際は、まずは直属の上司に伝えましょう。
その後、会社の人事や代表等と退職理由や時期を話すことになります。
上司に伝える際は、他に人がいない状態で話をすることが望ましいです。事前に時間を決め、話し合いの約束をしておきましょう。
退職は家族にどう伝える?
以下4点について、どう考えているかをまとめてから家族に伝えましょう。
・退職する理由
・退職時期
・次の転職についてのプラン
・転職するまでの生活プラン
特に家計を支える立場の場合、退職に伴って一時的に収入がなくなることや、転職先の給与事情についてきちんとした説明が必要になります。
家族の同意・協力を得て、転職をより良いものにしましょう。
辞める前に試すべき方法は?
辞めたい原因が、今勤務している会社への交渉によって解決できるかもしれない場合には、退職を申し出る前に会社に交渉を申し出ましょう。
給与交渉や配置転換等、会社によっては前向きに検討してくれる場合もあります。
まとめ
職人さんたちが「辞めたい!」と思ったエピソードや、辞めるか悩んだ際の対処方法をお届けしました。
職人を辞めたいと思った際には、自分の中で辞めたい理由の分析を行い、同じことを繰り返さないよう次の行動プランを計画することが大切です。
この記事が職人を辞めたいと感じている方にとってお役に立てば幸いです。
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