2023年の建設業倒産件数は1,600件|昨年比40%増加の背景は

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2023年の建設業の倒産件数

帝国データバンクは今月10日、建設業の倒産発生状況について調査・分析レポートを公開しました。

調査によると、2023年度の建設業の倒産件数は1,671件。2014年以降の10年間では2番目の多さとなりました。背景には建設コストの上昇や、2024年問題が絡んでいます。

【10年分】建設業の倒産件数推移と増加率

画像出典:帝国データバンク

建設業の倒産件数推移は図の通りです。

2023年のデータは、倒産件数の多さだけでなく、増加率にも問題があります。2022年から2023年にかけて、倒産件数の増加率は38.8%と、前年から著しく増加しています。

増加率が30%を超えるのは2000年以降では初めて。2008年のリーマン・ショック期でも増加率は前年比プラス17.3%であったため、非常に高い水準です。

増加率急増の背景は「コスト上昇」「2024年問題」「揺り戻し」

画像出典:帝国データバンク

建設業の倒産率が急増した背景は複数あります。

1つは、資材の高騰と人手不足などにともなう「建設コストの上昇」です。資材価格の高騰が続く反面、施主に対しての価格交渉は難航し、元請け、下請けともに収益力が低下しています。

さらに、建設業界では残業時間の上限規制(いわゆる2024年問題)が2024年4月から適用されます。業界団体の声がけを中心に価格転嫁や工期の適正化は進められていますが、下請業者への浸透には時間がかかる可能性もあり、更なる建設コストの上昇、倒産増加が懸念されます。

また、コロナ禍で融資等の政策によって抑制されていた倒産の揺り戻しと見ることもできます。

人手不足による「黒字倒産」も発生

慢性的に続く人手不足問題と、コロナ禍の事情によって「黒字倒産」も発生しています。

黒字倒産のメカニズムを解説します。まず、人手不足が工期の延長を引き起こし、完工時期が遅れます。すると元請業者から下請業者への支払延期要請が発生し、孫請け以下の工事に関係する業者全体の資金繰りに影響が出ます。

この時、つなぎ融資を調達できればいいのですが、コロナ禍でのゼロゼロ融資の導入などによって借入の余力が小さくなっている業者が多くありました。こうして、受注は確保できているにもかかわらず、支払い先行で手元現金がショートする企業が発生したのです。このような流れで起きる「黒字倒産」も2023年調査の中に見られました。

価格転嫁と人員確保が最優先

2023年の建設業の倒産件数増加には複数の理由が絡んでいることがわかりました。

倒産を抑制するためには、高騰する建設コストを価格に反映させやすいよう、団体などを通じて呼びかけること、また2024年4月以降の法改正後も工期の遅れが発生しないよう、各社が適切な人材の確保に努めることが課題です。

参考資料

帝国データバンク:「建設業」倒産動向調査(2023年)

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