できれば経験者が欲しいけど…
電気工事の職人さんの求人を出すとき、「未経験歓迎!」として採用活動をするのか、「即戦力求む!」として求人を出すのか、迷ったことはありませんか?
この業界だと、求職者には「できれば電気工事の経験があった方がいい」と考える方が多いです。
しかし、経験者の採用に成功したにも関わらす、「ウチと合わなくてすぐ辞めちゃった!」「あんな人、採用しなきゃよかった!」というように、採用後にトラブルを抱える企業の話もちらほら聞きます。
この記事では、経験者を採用した結果、トラブルになってしまった事例と、トラブルから学ぶ経験者採用のルールについて解説します。
経験者採用でのトラブル体験談
「代表が歳下問題」でギクシャク(30代・社長談)
独立して2年目、31歳の時に、仕事が増えてきたので人を募集しました。当時、会社は僕と新人の若い子だけだったので教える時間もないため、実務経験3年を条件にして求人を出したんです。そしたら、応募してくるのが40代~60代がほとんどで。まあ元気に働いてくれるならいいかなと思って50代の人を雇ったんですけど、それまでワイワイ仲良くやってた会社がなんかギクシャクしちゃったんですよね…。最初は会社のこととか現場のことを僕が教えたんですけど、ちょっと注意すると不服そうなときもあって…。話も合わないし、飲み会も誘いにくいし。その人は結局すぐ辞めちゃって求人出すのに払ったお金がムダになりました。楽しく仕事ができる空気って重要ですよね。そこからは、経験よりも年齢とか、会社になじめそうかで人を判断してます。教えるのが大変でも、育てた子って長く居てくれるし、ウチはそっちの方がうまくいきますね。
【なにが問題だったか】
若い代表からちらほら聞くのが、「自分より歳上の職人さんでやりにくい人がいる」という話。もちろん、すべての職人さんが若い代表だからといって指示を聞かなかったり、会社になじめないわけではありません。ただ、事実として教える立場・雇う立場に立つと、相手は自分より歳下の方がやりやすいと感じる方は多いはず。経験はピッタリでも、会社になじめないとせっかく採用した職人さんも長続きしません。忙しい現場の状況だけを見て、経験以外の人間性を見ることができなかったのがこの話の問題でした。
給料でもめてしまった(60代・社長談)
知り合いから、「転職活動中の人がいる。面接してやってくれないか」という相談を受けました。聞くと、住宅の工事を20年以上やっていた人だそうで、ウチに来てくれたら即戦力として働いてくれると思ったんですね。すぐに面接して、採用しました。前の仕事の給料を聞いたら、ウチの会社じゃかなり高めのラインだったんですが、来てほしかったので同じ給料を出すことにしました。それから1年。毎日よく働いてくれていた彼から、いきなり退職願が届きました。理由を聞くと、「ボーナスが少なすぎるし、資格手当もつかない。自分ならもっと稼げるはず」ということでした。引き止めたかったですが、ウチじゃあれ以上の給料は出せなかったのでやむなく退職願を受け入れました。ウチみたいな小さいところだと、給料に不満を持つ人もいるんでしょうね…。
【なにが問題だったか】
経験のある職人さんは、どうしても「前の会社と比べて今の会社の待遇はどうか」と考えます。引く手あまたの業界ですから、もっと待遇のいいところがあればそっちに行くと考える人も少なくありません。このケースの場合、基本給については最初に情報を聞いていてよかったのですが、ボーナスや手当など、基本給以外の話もしておくべきでした。経験者を採用する場合は、前の会社での収入や休みの話をよく聞き、「求職者にとってランクアップの転職であるか」を考えてみるのがおすすめです。もし収入が下がる、休みが減るなどのデメリットがあれば、後々それが辞める理由につながる可能性があります。事前に、待遇が下がっても働く意思があるか確認しておくべきです。
現場に入ってみたらぜんぜん使えなかった(60代・社長談)
まず、大前提としてこれは僕が悪いんですが。ハローワークで求人を出していたら、応募が入ったんです。事務の若い子が「ベテランさんみたいですよ!」なんて言うから、僕も喜んじゃって「手厚くもてなしといて!」なんて言って。面接は僕の息子に任せました。いつもは工事部長がやっていたんですが、息子には会社を継がせる予定なんで、ウマが合う人の方がいいと思うし、これも経験かなって。それで、いい感じだっていうから採用に決めたんです。そしたら1カ月もしないうちに現場から僕にクレームが来ました。「あの人、ぜんぜん使えませんよ!」って。話を聞いてみると、元いた会社が結構特殊な現場をやってて、ウチでやってるような工事の経験ってそんなになかったんですよね。事務員さんも息子も素人だから、それが分からなかった。なのに僕が現場に「今度の人ベテランらしいから!」なんて言っちゃったから現場はカンカンですよ。その後、職人さんたちとその人の間は僕が取り持って、きちんとうちの作業を教えてあげることにしました。双方に申し訳なかったですね、反省です。しかも、ウチの工事が素人だからって今更給料も下げられないし、それも後悔!
【なにが問題だったか】
電気工事と一口に言ってもその作業内容は幅広く、扱ってきた分野が違えば素人同然と考える職人さんも多いでしょう。このケースでは、求職者の力量を判断すべき面接担当の知識が足りず、求職者のスキルを見誤ってしまった結果、現場との認識に齟齬(そご)が生まれトラブルにつながりました。職人さんの力を測れるのは、やはり職人さんです。経験者の面接の際はかならず工事経験のある人が同席し、「自社で能力を発揮できる経験なのか」を見極めましょう。また給与を決める際も、単純に実務経験の年数だけで決めると実力に対して適正でない額になってしまうことがあります。経験年数以外にも、手掛けてきた工事や建物の規模などからどれくらいの金額が妥当かを判断するべきです。
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経験者採用3つのオキテ
今回聞いた3つの体験談から、経験者採用のオキテを総括します。
① 経験だけでなく人間性も見る。自社になじめない経験者はすぐ辞める
② 前職の待遇(給与・ボーナス・手当・休日など)は細かくヒアリング。経験者は「待遇の下がる転職」だとすぐ次にいく
③ 経験者の面接には、必ず現場経験のある人を同席させる。実務経験の年数だけでなく扱ってきた工事の内容で給料を決めないと高い買い物になってしまう
以上が、この失敗談から学ぶことができる、経験者採用で失敗しないためのルールです。
会社、求職者お互いのためにも、後悔のない採用活動を!
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