外国人人材の採用を考え、面接を行う際には注意すべきことや確認すべきことが複数あります。
この記事では、
などについて解説していきます。
建設業の外国人労働者は7年で3.5倍に
日本国内では、建設業の人手不足や職人の高齢化などの理由から、外国人労働者が急速に増加しています。
2023年の調査では、建設業界で働く外国人労働者は14万4,981人。7年前である2016年と比べると3.5倍にも増加しています。
今後も、建設業における外国人労働者は増加していくでしょう。日本の少子高齢化問題や人口減少問題といった背景を考えると、会社を存続していきたいのであれば外国人人材の活用を検討することは必要不可欠です。
◆ 【2024年版】建設業の外国人労働者数推移まとめの記事では、国籍別の外国人労働者数や外国人労働者増加の理由について詳しく解説しています!
【建設業版】外国人人材の面接で確認しておくべきこと
外国人人材の採用面接で確認しておいた方がいいことについてまとめました。
志望動機
国籍は関係なく、なぜ自社を志望してくれたのかは確認しておいた方がいいでしょう。日本人を採用するときと同じ、フラットな視点で自社に合いそうな人材かを確認してください。
将来像
自社で技術を磨き、数年後または10年後20年後にどこで、どのように働いていきたいかを確認することも重要です。
ひとくくりに外国人人材と言っても、日本の建設業界で仕事を探している理由は様々です。
「将来的には生まれた国に帰り、自分の国で技術を生かしたい」と考えている方もいれば、日本に永住する権利があり「定年まで同じ会社に勤めたい」と考える方もいます。
自社でどのように働いていきたいかを確認することがミスマッチの解消につながりますので、必ず確認するようにしましょう。
「外国人だから数年したら国に帰ってしまうはず」というような思い込みのまま話を進めることはNGです。
言語能力・コミュニケーション能力
外国人人材との面接では、入社後、社員同士でコミュニケーションをとり、仕事をこなすことができるかどうかを判断する必要があります。
建設業は、命の危険と隣り合わせになるような現場もあります。安全を守るために、作業手順ややってはいけないことを伝達する必要がありますが、その内容が理解できなければ命の危険に発展する恐れがあります。
日本語能力が業務上問題ないかは面接で会った際にしっかりと確認しましょう。
なお、外国人人材は日本語能力試験を受験している方も多いです。日本語能力試験は5段階の級(N1~N5)に分かれており、級によってどの程度日本語が理解できるのかが確認できるため、面接時または履歴書を提出してもらう際に日本語能力検定を受験しているかを確認することもおすすめです。
日本語能力試験の目安はこちら(公式サイトに移動します)。
自社の働き方に適合できそうか
外国人人材の中には、日本では珍しいことを習慣にしている方や、異なる価値観を持った方もいます。
例えば宗教上の理由で食べられないものがある、決まった時間に礼拝の時間を設けているなどです。
自社での働き方やスケジュールを一通り説明し、問題なく働けそうかどうかはミスマッチを解消するためにも必ず確認しておきましょう。
ここで重要なのは、国籍や人種、宗教などの理由で不採用にすることはNGということです。自社の働きかたにマッチできそうかを、会社スケジュールなどを説明しつつ問いかけ、求職者の判断を仰ぎましょう。
在留カード関係の情報確認
外国人労働者が持つ、在留カードの情報も確認しておく必要があります。以下で、チェックするポイントを解説します。
在留カードの有無
日本への中長期滞在が許可されている外国人には「在留カード」というICカードが交付されています。このカードは、外国人の身分証明書のようなものと考えるとわかりやすいです。
在留カードがない外国人は、原則的に日本での就労ができません。「在留カードをもっているか」は面接時に必ず確認するようにしましょう。実際に採用となった場合には、在留カードを提出してもらい、就労が可能であるかを確認しましょう。
在留期限の確認
在留資格には期限があり*、期限を超えて日本に滞在する場合には更新手続きを行う必要があります。期限が切れている場合、カードの情報は無効なので、面接時点で在留資格の期限が切れていないかも確認しておく必要があります。
*永住者の場合は無期限。
在留資格の確認
同じく、在留カードの情報で重要なのは「在留資格」です。
外国人は、日本に滞在する目的別に在留資格を持っており、資格によって就労が可能かどうかや、働ける業務の範囲が決まっています(居住資格がある場合は業務の範囲は限定されません)。
外国人が、建設業で働くために必要な在留資格は以下の通りです。
・技術・人文知識・国際業務
・特定技能
・技能実習
・居住資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)
面接の際は建設業で就労可能な在留資格を持っているかどうかも必ず確認するようにしましょう。
在留資格の一覧はこちらから確認することができます。
なお、2020年には東京オリンピックによる需要増加に伴い、特定活動(告示32号、外国人建設就労者)という在留資格が設けられ、この資格でも建設業に従事することができました。しかし、この制度は2023年3月31日に完全終了しています。2023年4月1日以降は、特定活動(告示32号、外国人建設就労者)の在留資格が有効であっても、就労はできませんのでご注意ください。
内定の条件を伝える
入社後、外国人労働者はビザの申請など、日本での就労に必要な手続きを行いますが*、万が一ビザが下りないとなると、会社で雇用することはできなくなります。
「面接時に確認した在留カードの内容に虚偽の情報があったり、ビザの申請が下りなかった場合には内定が無効となる」など、万が一の場合に備えた内定の変更条件を伝えておくのがいいでしょう。
*永住者の場合ビザ申請は不要。
外国人人材との面接でやってはいけないこと
第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労働基準法 第三条
労働者の国籍を理由に差別的取扱をすることは、労働基準法で禁止されている違法行為です。
ここからは、外国人人材の面接中や、面接後にやってはいけない対応について、具体例を挙げながらご紹介していきます。外国人人材との面接前に必ず確認しておきましょう。
差別的な発言をしない
以下のような発言は、日本人でないことを理由に不当な扱いをしていることになります。絶対にやめましょう。
・うちは、日本人しか雇わないから
→国籍を理由に不採用にすることは労働基準法により禁止されている違法行為です。絶対に本人の目の前で発言しないようにしましょう。
・〇〇人は態度が悪いからなあ
→目の前にいる本人を無視して国籍や人種による決めつけを行うことは差別にあたります。
・どうせ、すぐにやめて国に帰るんでしょ?
→本人の意向を確認せず一方的に悪い印象を抱き、そのまま言葉にして投げかけるのは大変失礼な行為です。
・外国人は日本人と比べて、礼儀がなってない
→外国人であることだけを理由にできないと決めつけることは不当です。
・〇〇人だから、ガッツがありそう!
→一見ほめているようですが、これも人種や国籍を理由にした偏見で、傷つく人もいます。
・◯◯教の人はウチの会社にはいないから、馴染めないかもなあ
→信条を理由にした偏見はNGです。
人種、国籍の情報だけでどんな人かを判断せず、面接時は一人の人間として話をし、そのうえで自社に適した人材かを確認するようにしてください。
人種、国籍、信条、社会的身分を理由にして不採用にしない
前の章で紹介した通り、国籍を理由に不採用にすることは労働基準法により禁止されている違法行為です。
同じく、宗教や社会的身分を理由に不採用にすることも違法となります。これは、外国人だけでなく日本人を面接する際も同じですので、必ず覚えておきましょう。
面接では、国籍問わず求職者に宗教を聞くこと自体NGです。ですが、もしも求職者の宗教行事や慣習が自社での働きに影響し、仕事がこなせないとなるとミスマッチが発生してしまいます。
そのため、自社のスケジュールを説明し、働くのに問題はないか確認しておくことは大切です。
外国人人材の活用を検討する日は近い
いままで外国人人材と縁のなかった企業であっても、建設業の人手不足と外国人労働者の増加により、いつか外国人人材の採用を検討する日がくるかもしれません。
ぜひこの記事の内容を覚えていただき、確認するべきことは確認しつつも不当な扱いをしない、双方にとってよかったと思える面接を行ってください。
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