建設業界の週休2日は実施されている?
日本建設業連合会(以下、日建連)は2023年7月、「週休二日実現行動計画2022年度通期 フォローアップ報告書」を公開しました。
調査では2022年分の建設業者の作業所の閉所率や、作業員の休日数がまとめられています。
本書によると、2022年の建設業界の作業所の4週8閉所率は42.1%でした。
建設業界では週休2日の導入が目指されていますが、作業所の閉所日数と作業員の休日数はどのような推移をたどっているのでしょうか。4年分の推移をまとめました。
【全体版】建設業の過去4年分作業所閉所日数の推移
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
4週5閉所未満 | 16.8% 2,897 | 16.0% 2,544 | 14.7% 2,241 | 14.3% 2,220 |
4週5閉所 | 15.9% 2,742 | 14.0% 2,223 | 12.9% 1,960 | 12.1% 1,872 |
4週6閉所 | 22.5% 3,874 | 19.6% 3,115 | 18.2% 2,776 | 16.3% 2,526 |
4週7閉所 | 18.5% 3,186 | 17.2% 2,740 | 16.3% 2,492 | 15.2% 2,352 |
4週8閉所以上 | 26.3% 4,528 | 33.3% 5,300 | 37.9% 5,775 | 42.1% 6,512 |
上記は、直近4年間の建設業界の作業所の閉所状況をまとめた表です。
4週8閉所(4週間の内閉所が8日…平均して週に2日作業所が閉所している状態)を実施している作業所の割合は年々上昇しており、2022年度には42.1%となりました。
4年前の2019年度は4週8閉所の作業所は26.3%であったことから、4週8閉所を実施している作業所は4年間で16%ほど上昇したことになります。
※ 請負金1億円以上または工期4カ月以上の事業所(現場)が調査対象。
※ 労働基準法第33条の適用を受ける事業所(災害等の臨時の事由によるもの)は除外。
※ JV工事はスポンサー工事を対象。
【土木・建築別】過去4年分作業所閉所日数の推移
【土木】
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
4週5閉所未満 | 10.9% 890 | 10.9% 853 | 8.1% 555 | 7.1% 522 |
4週5閉所 | 13.3% 1,086 | 11.7% 911 | 8.1% 555 | 8.0% 587 |
4週6閉所 | 21.3% 1,741 | 18.8% 1,466 | 16.2% 1,111 | 14.2% 1,040 |
4週7閉所 | 20.4% 1,665 | 18.4% 1,435 | 17.6% 1,201 | 16.2% 1,188 |
4週8閉所以上 | 34.0% 2,778 | 40.3% 3,149 | 50.0% 3,420 | 54.5% 3,999 |
【建築】
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
4週5閉所未満 | 22.1% 2,007 | 20.9% 1,691 | 20.1% 1,686 | 20.8% 1,698 |
4週5閉所 | 18.3% 1,656 | 16.2% 1,312 | 16.7% 1,405 | 15.8% 1,285 |
4週6閉所 | 23.5% 2,133 | 20.3% 1,649 | 19.8% 1,665 | 18.2% 1,486 |
4週7閉所 | 16.8% 1,521 | 16.1% 1,305 | 15.4% 1,291 | 14.3% 1,164 |
4週8閉所以上 | 19.3% 1,750 | 26.5% 2,151 | 28.0% 2,355 | 30.8% 2,513 |
閉所率の推移を、土木・建築の分野別に集計した表です
土木では、2022年の4週8閉所の実施率は54.5%。4年前と比較して4週8閉所率は20%も増加しており、全体の約半分まで実施が進んでいます。
一方、建築では、4週8閉所の実施率は30.8%。4年前と比較すると11%ほど増えてはいるものの、土木と比較して4週8閉所の実施率は低いことがわかります。
作業所勤務社員の4週8休率は70%以上を確保、建築でも高い数字
【作業所勤務社員の休日取得状況】
4週8閉所 | 4週8休以上 | |
全体 | 42.1% | 77.1% |
建築 | 54.5% | 79.5% |
土木 | 30.8% | 74.7% |
作業所自体が閉まっているかどうかを指標とする閉所日数に対し、作業所に勤務している社員が休んでいるかを調査した4週8休の実施率についても調査結果が公表されています。
4週8休の実施率は、建築で79.5%、土木74.7%。全体で77.1%という結果でした。
4週8休に関しては、全体で77%と高い数字に達しており、4週8閉所を達成していない現場でも作業所勤務社員は交代で休日取得をしている状況がうかがえます。閉所率が30.8%と低い建築分野でも、4週8休の割合は79.5%と高い数値となっています。
「建設業の週休2日」は進んでいるものの、厳しい意見も
作業所勤務社員の4週8休が70%を超えているという結果から、「建設業の週休2日」化は進んでいると言うことができますが、「昨年より状況が悪化した」「官庁と民間で差がある」などの声も上がっています。
【閉所について】
① 2022年度は労務逼迫の影響を受けた現場が多く発生したために、2021年度と比べて閉所状況が悪化。特に建築は顕著である。
② 完工期が下半期偏重の為、下半期の4週8閉所以上の達成率は下がる傾向となる。
③ 4週8閉所以上を前提としない現場があるものの、建設業団体として発注者が属する団体へ建設業の4週8閉所以上への理解を求める活動もあって良いのではないか。
【休日について】
① 官庁、民間だと明らかに官庁の方が週休2日を取得しやすい
【時間外労働対策、働き方改革について】
① 天候不良、社員の交代出勤等をきちんと加味し、適正工期にて受注することをさらに強化していきたい。
② BIM等を利用したDXを推進するなど業務の効率化を進めているが、好調な受注環境などを背景に協力会社の人材の確保や流動的な人の配置などはかなり厳しい。
出典:週休二日実現行動計画 2022年度通期 フォローアップ報告書より引用
民間工事の場合、適正な工期への理解不足や人手不足等で週休2日の確保が困難であり、官庁の工事と差が出ることや、完工期が下半期に集中するため下半期に閉所率を確保することが難しくなることなど、建設業界全体の週休2日への障壁は数多く残っていることを確認し、業界全体の課題として引き続き取り組む必要があります。
参考資料
日本建設業連合会:週休二日実現行動計画 2022年度通期・下半期フォローアップ報告書
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