工務店調査「工事原価かなり上がった」多数 資金繰りへの不安も大幅増

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価格高騰、小規模工務店への影響は

全建総連は8月22日、「住宅の建材・設備の価格高騰・納期遅延の影響に関する工務店アンケート調査」を公開しました。この調査は、小規模工務店を中心に原材料価格の上昇による受注や経営への影響を調査したものです。小規模工務店が価格の上昇によりどのような影響を受けているのかを確認しましょう。

アンケート情報

【回答工務店の従業員数】

従業員数(雇用者)有効回答数割合
一人親方39037.3%
1人~4人52750.4%
5人~9人989.4%
10人~19人252.4%
20人以上60.6%
合計1,046100%

【回答工務店の年間売上高】

年間売上高有効回答数割合
1,000万円未満18817.7%
1,000万~5,000万円51548.6%
5,000万円~1億円未満19618.5%
1億円~5億円未満15614.7%
5億円以上50.5%
合計1,060100%

このアンケートは36都道府県の工務店に実施されています。回答は従業員数1人~4人規模の工務店が最も多く、売り上げでは1,000万円~5,000万円未満が最大です。規模の小さい工務店にアンケートを実施しているため、大企業に平均を左右されず、小規模企業の実態を知ることができるのが特徴です。

工事原価「かなり上がった」50%超え

画像出典:全建総連

工事原価についての調査では、「かなり上がった」と回答しているのが過半数で53.2%(541票)、「上がった」は44.2%(449票)、「横ばい」が2.6%(26票)でした。

97%の工務店が工事原価の上昇を感じており、価格高騰はほぼすべての工務店共通の問題と言えます。

「値上がりを一部自社負担」47%

画像出典:全建総連

ほとんどの工務店が工事原価の上昇を感じている一方で、原価の上昇を価格に転嫁できない問題が浮上しています。

見積価格、工事費の値上がりについて、「お客様に負担してもらった」と回答する工務店が42.2%なのに対し、「一部を自社で負担」は47.4%と、多くの工務店が値上がりを価格に転嫁できていない実情がわかります。さらに、「値上がり分をすべて自社で負担」と回答している工務店も10.4%存在し、10社に1社は原価の上昇を全く値上げに反映できていない状況下にあることも判明します。

「すでに出した見積書は変えられない」という事情

画像出典:全建総連

原価の値上がりを見積価格・工価格に転嫁できなかった理由として最も多いのが「すでに見積書を提出していた」で、価格に転嫁できない理由の76%を占めています。値上がり以前に見積書を提出している場合、「今更お客さんに値上げを要求できない」といった事情から、値上がり分を自社で負担する工務店が多く存在しています。

また、「同業他社との競争があるためと」回答した工務店も3割近くいます。値上げをせず自社で負担する工務店が存在すると周囲の工務店も値上げに踏み切れず、結果工務店全体が利益を出すことが難しい状況になってしまいます。

材料別値上げ状況は木材がトップで50%以上アップも

画像出典:全建総連

工事原価上昇に影響している建材、設備の上位10品目を、昨年同月と比較した際の値上がり率です。

値上がり率が最も高いのは「木材」で、およそ40%の工務店が「木材は50%以上値上がり」と回答しています。その他材料も前年同月と比べ軒並み値上がりしています。契約の取り交わしが値上がり以前であった場合、価格に転嫁できないと大幅な値上げをすべて自社で負担することになってしまうため、経営に重大な影響を及ぼします。

受注「減少した」ほぼ半数

画像出典:全建総連

受注への影響では46.3%と、ほぼ半数の工務店が「受注が減少した」と回答しています。

受注が減少した理由については以下の回答が寄せられています。

・お客様からの問い合わせや工事の依頼そのものが減っている(60.8%)

・お客様が建材高騰の様子をみている(40.5%)

・工事金額が高くなり契約が成立しない(38.7%)

・建材・設備等の納期時期が不確かで工期を設定できず受注を断っている(25.2%)

・その他(3.2%)

建材価格の高騰により原価が上昇し、契約が成立しなくなったり、お客さんが価格の高騰を踏まえ様子を見て受注が減ったりと、厳しい状況をうかがい知ることができます。

「年末まで状況変わらないと資金繰りが心配」60%

画像出典:全建総連

今後の見通しについても危機感を抱いている工務店が多数です。「年末まで今の状況が続くと資金繰りが心配」と回答した工務店は60%以上にも上り、半年前2022年3月時の調査時に比べて19%も増加しています。さらに、国や金融機関からの貸付・融資を受けた割合や「すでに資金繰りがひっ迫している」と回答した工務店も半年前から軒並み増加しており、早急な対策が求められます。

参考資料

全建総連:全建総連 住宅の建材・設備の価格高騰・納期遅延の影響に関する工務店アンケート調査(2022年6月23日~2022年7月31日実施)の結果

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