新電力の倒産・撤退が過去最多
帝国データバンクは3月30日、「『新電力会社』倒産動向調査」を公開しました。調査によると、新電力企業の倒産件数が過去最多となり、事業を撤退する会社も増加しています。なぜ、新電力企業が倒産に至っているのか、その背景を知りましょう。
新電力とは?
「新電力(PPS)」とは2016年4月に始まった電力自由化によって新規参入してきた電力の小売り事業者のことを指します。
電力自由化以前は、電力の購入先を選ぶことができず、東京であれば東京電力、大阪であれば関西電力と地域によって決まった電力会社が供給を独占していました。
自由化以降は消費者が供給先を自由に選ぶことができるようになりました。現在では、新電力の専門企業のほか大手ガス会社や通信事業者なども電力販売を行っています。
倒産件数14件、1年で31社が撤退
グラフの通り、新電力の倒産件数は2021年に14社と一気に増加しました。廃業・撤退も合わせると31社と2021年になって倒産・廃業・撤退が急激に増加していることが分かります。
倒産・撤退の2つの原因
2021年に倒産や撤退が急増した原因は、大きく分けて2つあります。
一つは、電力の市場価格の高騰です。2021年に倒産した新電力の多くは自前で発電所を持っていませんでした。そのため調達の多くを卸市場に依存しており、2020~21年冬に起こった市場価格高騰で電力調達のコストが大きく上昇したため、採算が悪化したことが大きな要因となっています。
二つ目は、インバランス料金の支払い負担です。
電力は需要と供給を合わせる必要があります。新電力企業は事前に作成した発電計画から大きなずれが生じてしまった場合、一般電気事業者にペナルティ料金を支払う必要があり、これをインバランス料金と呼んでいます。
電力の市場価格の高騰とインバランス料金の支払い負担の2つが、新電力の倒産が起こる原因です。
今後も続く市場価格の高騰
2021年冬の電力の市場価格高騰の原因は、火力発電に使われる燃料液化天然ガス(LNG)、原油などの化石燃料の価格が世界的に高騰したことが原因とされています。
さらに、2022年以降も市場価格は上昇しています。この背景にはウクライナ危機を受けた原油、液化天然ガス(LNG)の相場高騰があり、世界的にエネルギーのひっ迫が想定されています。2022年以降も新電力にとっては厳しい状況が続いていく見込みです。
参考資料
帝国データバンク:「新電力会社」倒産動向調査
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