2022年1月の労働安全衛生法改正により、これまで建設現場で使用が認められていた安全帯は一部使用禁止になりました。
2024年11月現在は、旧来の安全帯のうち、胴ベルト型(U字つり)に関して使用が禁止されており、フルハーネスなど新規格の安全帯(墜落制止用器具)の着用が義務付けられています。
この記事では、
などについてご紹介しています。
安全帯の新規格とは?
法改正後の安全帯(墜落制止用器具)について、法律の改正内容や旧規格との違いを解説します。
安全帯の名称変更
2022年の法改正により、これまで法令用語として使用されていた「安全帯」の名称が廃止され、「墜落制止用器具」に変更となりました。
あくまで法令用語として使用できなくなっただけであり、現場などで従来通り「安全帯」と呼ぶことは問題ありません。
また、法改正に伴いこれまで認められていた一部規格の安全帯について使用が禁止となりました。詳しくは次の項目で解説します。
使用禁止になった旧規格の安全帯と新規格
2024年11月現在は、フルハーネスなど新規格の安全帯(墜落制止用器具)の着用が義務付けられています。
現在安全帯として認められるのは、下記2つの型のみです。
・胴ベルト型(一本つり)
・ハーネス型(一本つり)
従来安全帯として認められていた胴ベルト型(U字つり)は、墜落を制止する機能がないことから、2022年1月以降使用が禁止になりました。
例外的に、フルハーネス型と併用する場合はU字つり胴ベルトを使用することができます。
U字つり胴ベルトのみを着用して現場作業を行わないようご注意ください。
新規格安全帯のルール
新規格の安全帯(墜落制止用器具)に関して、注意点や使用時のルールをまとめました。
安全帯はハーネス型が基本
2024年11月現在、使用可能な安全帯(墜落制止用器具)は、ハーネス型(一本つり)と胴ベルト型(一本つり)です。
原則として、フルハーネス型の着用が義務付けられています。
2m以上の作業床がない箇所または作業床の端、開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所の作業では、必ずフルハーネス型をご使用ください。
胴ベルト型(一本つり)は使用できる現場に条件があります。以下で解説します。
胴ベルト型(一本つり)の安全帯が使用できる現場
胴ベルト型(一本つり)の安全帯(墜落制止用器具)を使用できる現場には条件があります。
・フルハーネス型の着用者が墜落時に地面に到達するおそれのある場合(高さが6.75m以下)*
上記条件に限り、胴ベルト型(一本つり)を使用できます。
*一般的な建設作業の場合は5mを超える箇所、柱上作業等の場合は2m以上の箇所では、フルハーネス型の使用が推奨されます。
(情報出典:厚生労働省 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン)
体重ごとの規格選定
安全帯(墜落制止用器具)は、着用者の体重およびその装備品の重量の合計に耐えるものを着用する必要があります。
自身の体重+工具などの装備品の重量の合計に合わせて、85kg用または100kg用を選定してください(100kg以上の場合は特注品が必要となります)。
(情報出典:厚生労働省 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン)
安全帯の買い替え・廃棄基準
新規格の安全帯(墜落制止用器具)には、下記2つの廃棄基準が設けられています。
・墜落制止用器具の点検・保守及び保管は、責任者を定める等により確実に行い、管理台帳等にそれらの結果や管理上必要な事項を記録しておくこと。
・一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと。また、点検の結果、異常が
あったもの、摩耗・傷等の劣化が激しいものは使用しないこと。
特に「一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと」という点は覚えておき、本来の機能が失われた状態で使用を続けないよう注意してください。
(情報出典:厚生労働省 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン)
おすすめの新規格安全帯メーカー
新規格の基準に適合したおすすめの安全帯(墜落制止用器具)メーカーをご紹介します。
藤井電工
昭和26年より安全帯等の工事用安全用品の開発を続け、現在も多くの職人が利用している老舗メーカーの藤井電工。ハーネスのラインナップは非常に豊富です。
軽くて装着がしやすく、作業に支障が出にくい「ライトハーネス」や、安全性とデザイン性を両立した「スマートハーネス」、女性用の「小町ハーネス」など様々なラインナップが展開され、職人それぞれのニーズを満たすブランドです。
サンコー「EASY Harness CROSS」
昭和23年設立の老舗ブランド。2024年には「EASY Harness CROSS」がグッドデザイン賞を受賞しています。
EASY Harness CROSSはサイドがクロスする構造。作業時の立つ・かがむ・伸ばす動きをストレスなく行うことができます。
墜落制止の際は、骨盤ベルトによって従来課題であった鼠径部への負担を大きく軽減し、職人の安全を守ります。
タジマ「ハオル」
工具メーカーとしても有名な老舗メーカー。ニューコンセプトハーネスとして登場した「ハオル」は、腰道具をつけたままフルハーネスの着脱が可能です。
機能性に優れており、ハーネスを脱ぐだけで胴ベルト型にすることも可能。高所から低所の作業への切り替えもスムーズです。
安全帯Q&A
安全帯(墜落制止用器具)に関するよくある質問と回答をご紹介します。
高さが異なる作業場でのフルハーネス型使用について
Q:高さ 6.75 メートルを超える箇所での作業と、高さ 6.75 メートル以下の箇所での作業が混在するとき、常時フルハーネス型を使ってもよいか。
A:問題ありません。
フルハーネス型は高さによる使用制限はなく、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成 30 年6月 22 日付け基発 0622 第2号)「第4 墜落制止用器具の選定」の「1 基本的な考え方」においても、「墜落制止用器具は、フルハーネス型を原則とすること」とされています。さらに、取付設備の高さや作業者の体重に応じたショックアブソーバのタイプとランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)を適切に選択することも必要です。
※ 出典:厚労省 墜落制止用器具に係る質疑応答集
外国産の安全帯について
Q:外国で製造されたフルハーネス型や一本つり胴ベルト型は使用できるのか。
A:新規格に適合しているものについては使用可能です。
新規格に適合していないものについても使用できる場合がありますが、新規格に適合するものと同等以上の性能又は効力を有していることにつき、厚生労働省労働基準局長の認定を受け、新規格第 10 条に基づく適用除外に該当する必要があります。新規格のどの部分に適合せず、またその部分が新規格と同等以上の性能又は効力を有しているかを確認の上、お近くの都道府県労働局にご相談ください。
※ 出典:厚労省 墜落制止用器具に係る質疑応答集
安全帯の購入に補助金は利用できるか
Q:フルハーネスを購入するにあたって補助金が利用できるという話を聞いたことがあるが、今でも利用可能か。
A:2024年11月現在は利用できる補助金はありません。かつては「既存不適合機械等更新支援補助金」という制度がありましたが、事業が終了しています。
まとめ:新規格の安全帯をつかっているか確認を!
2024年11月現在、法改正によって胴ベルト型(U字つり)の安全帯は使用が禁止されています。
使用可能な安全帯は、ハーネス型(一本つり)と胴ベルト型(一本つり)であり、原則として、フルハーネス型の着用が義務付けられています。
旧規格の安全帯が現場で使用されていないか、適宜確認しましょう。
また、新規格に沿った安全帯を使用している方も、体重+装備品を合計した重さの規格に適したものを使用できているかどうかや、廃棄の基準に該当していないかを再確認していただき、安全性が十分に確保された状態で作業ができるようにしましょう。
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