建設作業員の派遣で業務停止
厚生労働省は8月23日、労働者派遣事業を営む事業主(以下X社)に対して2か月間の労働者派遣事業停止命令および労働者派遣事業改善命令を行いました。
原因のひとつとなったのは、建設現場への作業員の派遣。
労働者派遣法では現場作業を行う作業員(職人)の派遣が禁止されています。
知らなかったでは済まない建設業と派遣の法律について、この事案をもとにおさらいしておきましょう。
経緯
今回X社に対して行われた厚生労働省による処分の理由は下記の通りです。
建設業特有の決まりに違反しているのは2番目のB社との事案のため、特に2番目の事案に注意してご覧ください。
1. X社(※編集部注:派遣元)は、A社と事実上の労働者供給契約を締結し、少なくとも令和2年11月2日から令和3年3月31日までの間、労働者供給事業の供給元として、自らと支配従属関係を有する者70人を延べ936人日に渡りA社に供給し、同社の指揮命令の下で労働に従事させたものであり、法定の除外事由なく職業安定法(昭和22年法律第141号。以下「職業安定法」という。)第44条に違反して労働者供給事業を行ったこと。
出典:厚生労働省 プレスリリース
2. X社(※編集部注:派遣元)は、B社と事実上の労働者派遣契約を締結し、少なくとも令和2年7月1日から令和3年2月27日までの間、派遣元事業主として、自社で雇用した労働者13人を延べ352人日に渡り、B社が請け負った建設現場の作業員として同社に派遣し、同社の指揮命令の下で、同社のために労働に従事させたものであり、労働者派遣法第4条第1項の規定に違反して禁止されている建設業務への労働者派遣事業を行ったこと。
◆ 図解
※ 派遣元の社名は編集部で伏字処理を行っております。
問題点の整理
事案2のX社-B社間の取引で違反が確認された、建設業への派遣を禁止している「労働者派遣法」の条文はこちらです。
第4条 何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
一 港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)
二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
三 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節、第二十三条第二項、第四項及び第五項並びに第四十条の二第一項第一号において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
このように、建設業のうち、現場での作業・作業の準備にかかわる作業について派遣事業を行うことは禁止されています。
注意点として、法律で派遣が禁止されているのはあくまで現場作業に従事する作業員です。つまり、建設業従事者でも職人ではなく設計や事務方の場合は派遣することができますので、覚えておきましょう。
派遣された側も大きなデメリットがある
今回の事案で業務停止命令が下されているのは違法に派遣を行ったX社側ですが、このようなことがあると職人の派遣を受け入れてしまう建設業側にも大きなデメリットが発生します。
この事案のように事態が明るみになれば、派遣元は業務停止処分となります。当然、派遣によって賄うつもりであった人員は不足するため、建設現場のスケジュールは大きく狂ってしまうことになるでしょう。
「建設現場で作業に従事する人員(職人)の派遣は違法である」というルールは知らなかったでは済まされません。必ずルールを守った人員調達を行いましょう。
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