電気工事の仕事が絵本に!?
これは、2022年に出版された絵本、「電気工事士のおとうさん」。
主人公の男の子が、父親の職業である電気工事士について、とある出来事をきっかけに知っていくストーリーの絵本です。
この絵本を出版したのは、電気工事用資材の製造・販売を行う日東工業株式会社。
なぜ、資材メーカーが電気工事士の絵本を出版したのでしょうか?
出版に至った経緯や絵本に込められた思いについて、発案者の方にお話をお聞きしてきました。
絵本の制作会社・担当者プロフィール
日東工業株式会社:昭和23年設立。高圧受電設備・分電盤等の電路資材、情報通信関連資材など幅広い分野の製品を提供しているメーカー。愛知県長久手市に本社を構える。2022年に絵本「電気工事士のおとうさん」を制作・販売。
出原(いずはら)さん:日東工業株式会社の機器開発部に所属し、普段はブレーカーや端子台などの開発にかかわる技術者。あることをきっかけに絵本の出版を企画。
資材メーカーが絵本をつくったきっかけ
―(編集部)絵本を出してみようと思ったきっかけについて教えてください。
―(出原さん)2019年、関東で大きな台風が発生したときに、千葉県の房総半島に災害復旧の現場を見に行ったことがきっかけです。その台風では、大規模停電や鉄塔の倒壊など、大きな被害が起こっていました。
私は技術者で、普段はブレーカーや端子台など電気設備を作っているので、外に出る機会が多いわけではないのですが、災害復旧の現場を間近で見たときに、業界の人たちがインフラの復旧に尽力しているのを見て、すごい仕事だと実感したんです。
「電気工事士は主役でなくては」という思い
―(出原さん)もともと、自分の仕事やお客さんである電気工事士の仕事について、知名度・認知度が低いという実感がありました。周りの人に説明しても、なかなかどんな仕事をしているのかが伝わらないんです。
そんな中で災害復旧の現場を見たときに「この人たちは主役になってもいいんじゃないか」と思いました。当時、ニュースを見ても取り上げられるのは自衛隊の方や救急の方などが多く、電気工事士の仕事はなかなか取り上げられなかった。それを見て、自分が何とかしたいという気持ちが芽生えました。
絵本は多くの人が手に取る
―(編集部)絵本という媒体を選んだのは、子どもに届けたい気持ちが強かったからですか?
―(出原さん)子どもに届けたいという気持ちもありましたが、他にも理由はあります。
「絵本は一冊の生涯の中で複数の人に読んでもらえることが多い」という話を、制作に協力してもらったポプラ社の方に聞きました。たとえば、電気工事士と結婚した女性が絵本を手にして、それを子どもに読み聞かせたとします。そうすると、家族みんなが電気工事の仕事を理解してくれますよね。子ども含め多くの人に読んでもらえると思ったことも大きな理由になっています。
10名以上の電気工事関係者の話が一冊に
―(編集部)絵本を出すという構想を思いついてから出版までにはどれくらいの期間がかかりましたか?
―(出原さん)3年~4年ほどですね。ストーリーはなるべく現実的なものにしたかったので、取材に時間をかけました。
絵本のストーリーも出原さんが考えたということでしょうか?
実際にお話を聞いた人のストーリーを組み合わせて、構成を考えました。取材していたらみんなドラマを持っていたので、実話を活かしつつ1つのストーリーにまとめたフィクション作品といった感じに仕上がっています。
取材した方の中で印象的だったお話はありますか。
「親が電気工事業を営んでいて、子供のころは親のやっている仕事がよくわからなかった」という現役の電気工事士さんのお話や、「親にあこがれて電気工事の世界に入った」というお話は印象的で、絵本のストーリーにも組み込まれています。
たくさんのエピソードを聞きましたが、すべてを採用すると長くなってしまうので、絵で表現したりと工夫を凝らしました。
おもしろさより大切にしたかったこと
―(編集部)絵本を作るうえで気を付けたことはありますか?
―(出原さん)絵本としての面白さと、私たちが伝えたいことのバランスは意識しました。物語には起承転結があったほうが面白くなりますが、やりすぎると私たちが伝えたいことから遠くなってしまいます。
「電気工事業がいかに社会貢献しているかを伝えたい、できれば感動するストーリーで」という軸がぶれないように気を付けました。
全日本電気工事業工業組合連合会にも協力をお願いし、業界のイメージが損なわれないよう配慮しつつ、リアルな内容になるよう気を使いました。
端子台を作りながら絵本を作る日々
―(編集部)出原さんは機器開発部に所属されていますが、普段の業務と並行して絵本を作っていたのでしょうか?
―(出原さん)はい。端子台やブレーカー開発などの普段の業務もこなしつつ絵本を作成しました。社内で新事業を立ち上げる制度があったので、絵本は副業という形ですすめていました。
日東工業で絵本を出版するのは初めての試みですよね?
その通りです。
「絵本を出したい」と言った時の周囲の反応はいかがでしたか。
やはりすんなりとは理解してもらえなくて、「なんで絵本を出すの?」というところから始まりました。
これは日東工業をPRする絵本ではなく、日東工業からしたらお客さんである電気工事士をPRする絵本なので、そこを理解してもらうのにも時間がかかりましたね。「お客さんに報いたい、恩返ししたい」という説明をし、理解してもらってからはトントンと進みました。
他にすれちがいはありましたか?
「電気工事士のおとうさん」は日東工業の製品として私たちや、商社・代理店を通して販売しているのですが、最初はノベルティで配るものだと思われていて、そこにも温度差がありましたね。
私は絵本を販売する形をとりたいと思っていて、その理由は出版元が無料で配るものでは反応が薄く、世に広まっていかないと思ったからです。実際、無料でもらったものを他人に勧めることってあまりないですよね。自分で買って、いいと思えば他の人にも伝えたくなると思うので、販売という形にこだわりました。
自社で販売するには覚悟がいると思いますが、自信はありましたか?
正直、自信はありました。なぜかというと、絵本の取材に協力してくれた電気工事業の人たちが100%好意的だったからです。その時、みんながこの業界を盛り上げていかないといけないという使命感を持っていることに気づきました。取材時の感触から、自分がいままで関わってきた人は買って家族や地域に配ってくれるだろうと思い、ある程度の販売は見込めると感じていました。
人材不足の役に立てばという思いも
―(編集部)絵本は、電気工事業界の人手不足問題にも役立ちそうです。
―(出原さん)そうですね。人手不足問題も絵本を作ったきっかけのひとつです。当時はオリンピック前で、電気工事業界の人手不足は特に深刻でした。
私が普段の業務で取り組んでいるブレーカーや端子台の開発はお客さんの仕事を楽にするものですが、どんなに頑張っても人を増やすということには貢献できません。業界の抱える根本的な問題にアプローチするためにも、絵本の販売は効果的だと思いました。
この絵本で子どもに電気工事の仕事が伝われば、10年後20年後の電気工事業界にもいい影響がありそうですね。
そうですね。実際に娘に読ませた電気工事士の方から、「お父さんってこういう仕事をしているんだね!」という会話が生まれたとお聞きしました。通常であれば、子どもが大きくなってからでないと伝わらなかった電気工事士という仕事の大切さを、10年早めて伝えることができた。これはいい影響だと思います。
こういった出来事は、将来的な人材不足の解消はもちろん、現役で電気工事士として働く方のモチベーションにもつながると思っていて、それについてもよかったと思っています。
絵本は口コミで広がり中!
―(編集部)絵本の広まりはいかがでしょうか?
―(出原さん)おかげさまで好調です。展示会などで「絵本読んだよ!」と声をかけていただくことも多く、うれしいですね。
「電気工事士のおとうさん」は書店で販売しているのではなく、代理店や商社を通じて販売していますが、お客さんの中には何冊も買って、学校や市に寄贈してくれる方もいて、業界を超えた広がりも感じています。
もともとは電気工事業界にいる人と、その周辺の人に届けばという思いで作りましたが、身内で盛り上がっているうちにもっと外側の人にも届いていくのであれば、これ以上嬉しいことはないですね。
業界を盛り上げよう
―(編集部)これから本を手に取る方や、この記事を読んている方にメッセージをお願いします。
―(出原さん)これからもっと電気工事業界を明るくしていきたい、盛り上げたいと思っています。
ともに頑張っていきましょう!
日東工業のおすすめ製品!
本日ご紹介した日東工業さんのおすすめ商品をご紹介します!
ブレーカ用端子台 リペア端子形
破損リスクが高いネジ部の端子ユニットだけを交換できるリペア式の端子台。
ネジ部の交換時に端子台全体を取り外す手間がなくなり、業務負担が軽減されます。
ブレーカ用端子台 スプリング端子形
端子に電線を差し込むだけで接続ができるスプリング端子台。作業が効率的に!
スパーテクト
火花放電を見える化し、電気火災を防止する放電検出ユニット。
善光寺、札幌市時計台など、日本の様々な建造物を守っています!
◆ 絵本「電気工事士のおとうさん」や日東工業の製品に関するお問い合わせはこちら!
日東工業お客様相談室:TEL (0561)64-0152
受付時間 8:30~12:00、13:00~17:30(土・日・祝日は休み)
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