変化する採用手法
建設業は常に人手不足の業界。せっかく求人を出しても、思うように採用につながらないという声が多くあります。
これまで縁故採用やハローワークでの採用が通例だったのが、インターネットの普及によりネットの求人サイトが普及するなど、採用活動を取り巻く環境は変わっています。
このような環境の中で、「求職者はどこにいるのかわからない!」「結局採用を成功させるには何をしたらいいの?」と悩む方もいるのではないでしょうか。
この記事では移り変わる採用活動の背景を解説し、今の時代に適切な採用活動の方針について考えます。
<求職者編>求職活動の状況
まずは、求職者がどのような手法で求職活動を行っているのか、その移り変わりをデータで確認してみましょう。
インターネットを利用する求職者が半数以上に増加
まずは、求職者のうちインターネットを利用する人の割合を見てみましょう。
求職活動時に「インターネットを利用した」と回答した求職者は、2018年で56%と半数を超えています。2008年では33%でしたので、10年間で26%と大幅な増加です。
インターネット利用者の割合は右肩上がりなので、2022年現在ではさらに多くの求職者がインターネットを利用していることが予想できます。
求職者の利用しているサイトの変化
次に、求職者がインターネットの中でどのようなサイトを使っているのかを見てみましょう。
利用したサイトの中で最も多いのは「民間等の求人広告会社のサイト」で、2018年には49.1%を占めています。10年前、2008年からの伸び率も大きく、12%ほど成長しました。
同じインターネット上のサイトでも、ハローワークインターネットサービスは利用率が減っており、10年で5%ほどの利用者減です。このことから、インターネット上でハローワークを利用していた層が民間の求人サイトやそのほかのサイトに移動していることが予想できます。
公的機関のハローワークよりも、民間企業が運営する求人サイトの方が人を集める工夫をしているため、このような傾向が出ていることが考えられます。
<企業編>採用活動の状況
次は企業視点の調査です。求職者の求職活動の変化とともに、企業の採用活動も変化しています。
どの媒体に求人を出しているか
この調査は、企業が人材を採用する際にどのような手法を取っているかを調べたものです。
最も多いのは「ハローワークなどの公的機関」で57%。時点が求人サイト・求人情報専門誌などの広告で43%。そのあとを縁故採用が27%、自社のウェブサイトが26%と続きます。
これは2020年の調査結果ですが、5年前2015年の調査結果と比較すると、また違った傾向が見て取れます。
【2015年~2020年の媒体利用推移(抜粋)】
2015年 | 2020年 | |
ハローワーク等 | 65.7% | 57.3% |
求人サイト・求人情報専門誌等 | 38.5% | 43.2% |
自社ウェブサイト | 18.6% | 26.6% |
縁故 | 30.8% | 27.6% |
厚労省の調査から、2015年の数字と2020年の数字の差に注目してほしい媒体・手法を抜粋し推移をまとめました。
ハローワークは、利用率が最多を占めるものの、5年前と比べると利用率は減っています。反対に、求人サイトや求人情報専門誌などの広告媒体と、自社のウェブサイトを利用する企業は5年間で増加しています。
社員の家族や友人などを紹介してもらう縁故採用は、5年前と比べると微減しているものの、今でも3割程度実施している企業があり、根強い採用手法となっています。
なぜハローワークを利用する企業は減ったのか
ハローワークの利用企業が減った背景には様々な理由が考えられますが、ひとつは求職者が民間企業が運営する求人サイトの情報を優先するようになったことが原因と言えます。
求職者がハローワークのサービスを利用するためには、一度ハローワークまで足を運ぶ必要があります。その点ネットの求人サイトはいつどこででも、スマートフォンで閲覧・応募ができるので、非常に手軽です。ハローワークは土日の利用が限られている場合もあり、離職済みならいいものの、在職中で転職活動をする人にとってはハローワークに行くことは難しく、これもネットの求人サイトに利用者を取られる原因になっていると考えられます。
特に20代・30代などの若手はPC・スマホを普段使いしているのでネット媒体に流れる可能性が高く、実際に求人サイトの情報を見ると、「利用者の多くが若手である」という触れ込みが多数あります。このことからも若手ほどネットの求人媒体での求職活動が主流になっていることが読み取れます。
このような求職者ニーズの移り変わりを肌で感じ、企業もハローワークからネットの採用活動にシフトしているのではないでしょうか。
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「ウェブでも採用を頑張る必要がある」時代
求職者の動向・企業の動向の2つを照らし合わせてみると、企業の採用手法は求職者の求職活動の変化に合わせて変わっていることが分かります。
求職活動にインターネットを利用する求職者は年々増加しており、それに応じて求人サイトや自社のウェブサイトを利用する企業が増えています。
つまり、「求職者のネット求職活動の増加に合わせ、企業もネットでの採用活動に力を入れる」ことが採用活動を成功させるためのトレンドと言うことができます。
どんな採用活動がベストなのか
ここまでのデータを踏まえ、現代のベストな採用活動について考えていきましょう。
ハローワークに求人を出すのはムダ?
求職者・企業ともにハローワークを利用する割合は減っています。ですが、「ハローワークに求人を出すのはムダ」というわけではありません。
なぜなら、ハローワークは掲載料がかからない無料媒体です。求人を出しておいて損をすることはありません。ただし、ハローワークに求人を出したからOKとは考えない方がいいでしょう。
ネットはどのように活用したらいい?
求職者が採用活動にネットを利用する傾向は今後も増えていくものと思われます。企業側も、求職者の変化に応じてなにかしらネットを通じたアプローチを行っていく必要があります。
ネットのアプローチは、求職者が多く利用しているものを優先して採用するのが効果的でしょう。こちらの表に沿って考えるのであれば、最優先は民間の求人サイトです。
しかし民間の求人サイトは費用がかかるという問題があります。自社の予算に応じて、ネットでのアプローチを考えましょう。ホームページを持っている企業であればホームページに求人を載せることもできます。
縁故採用も可能なら併用
縁故採用は今でも3割程度の企業が導入している手法です。こちらも基本的に費用はかからないので、社員に「周りに職を探している人がいたら自社を紹介してほしい」と声をかけておくといいでしょう。
最近では、社員からの紹介で入社に至った場合に紹介した社員にいくらかの報奨金を出す制度を設けている会社もあります。報奨金があると社員が自社を紹介するモチベーションが上がるので、広告費と考え導入してみるのもおすすめです。
ハローワーク+ネットでの採用活動を基本に、間口を広げた採用を
これからの時代の採用手法について総括します。
これまで強かったハローワークの力が弱まったため、ネットでの採用活動を導入することは必須になると言えるでしょう。ハローワークは無料で利用できるため、ハローワークとネットでの採用活動を併用するのがこれからの時代の基本と言えます。さらに採用の確率を上げるために、縁故採用を導入するなどして間口を広くしておくとより効果的です。
時代とともに移り変わる採用手法のトレンドをしっかりと意識し、採用活動を行いましょう。
参考資料
厚生労働省:労働市場における雇用仲介の現状について
厚生労働省:令和2年転職者実態調査の概況(事2.転職者の採用状況)
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